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第138話 パストーラ

翌日――アルト達はギルマスと一緒に町はずれの道を歩いていた。


「そう…そんなことがあったんだね。」


「いくら自分の従魔だからって、そんな扱いあんまりじゃない?」


道中、アルトとキースは昨日見たテイマーと従魔の話をした。

ギルマスは静かに聞いていたが、レシェンタはアルトやエメラと同様に憤慨していた。


「それはきっと、ドウルという名のテイマーだね。従魔の方は大地狐アースフォックスだろう。」


「知っているんですか。」


キースの問いかけに、肩をすくめつつ答えるギルマス。


「これでもこの町のギルドマスターだからね。ギルドに登録されている冒険者やテイマーのことは、全て頭に入っているよ。」


ギルマスの言葉に感心したように、ヒュウッと口笛を吹くキース。


「それで、ドウルってテイマーはどんな人なのかしら?」


おどけるキースをギロリとひと睨みし、ギルマスに続きを促すレシェンタ。


「そうだね…ドウルは冒険者としての腕は悪くはないんだが、少々粗暴なところがある。特に、彼の従魔に対する素行は…君たちが見た通り、褒められたものではないね。」


「ギルドから注意することはできないんですか?」


アルトの質問に、緩く首を振るギルマス。


「従魔の扱いに関しては“犯罪に利用しない”という以外、明確な規定はないんだよ。」


テイマーの登録をしたときに受けたものと同様の説明に、やっぱりだめかと項垂れるアルト。


「例えば“従魔を傷つける行為”を禁止してしまうと、戦闘に参加させることもできなくなってしまう。そもそも…おっと、もう着いちゃったね。まぁ、この続きは僕よりも、プロから聞くといいよ。」



パストーラという人物は、片目に眼帯を着けた、いかにも気難しそうな男だった。


「それで、トナンティールの紹介でここへ来たと?」


「「「トナンティール?」」」


聞き覚えのない名前に、疑問符を浮かべるアルト達。


「なんだ、名前も知らんのか。迅雷の賢者――トレモロのギルドマスターだ。」


「あ、はい。そうです!」


そう言えば名前は聞いてなかったと思いつつ、アルトは慌てて紹介状を取り出す。

封筒を受け取り内容に目を通すと、フンと鼻を鳴らすパストーラ。


「あいつも息災なようだな。それで、貴様がテイマーのアルトか。」


「はい。」


パストーラは片方だけとはいえ鋭い眼光を宿す瞳で、アルトをじっと見つめる。


「旧友の紹介状があろうとも、実際に話を聞くかどうかは俺が決める。アルト…俺の質問に、嘘偽りなく答えろ。」


「は、はい。」


威圧感のある声に緊張し、ごくりと息を呑んで答えるアルト。


「お前にとって、従魔とはなんだ?」


想像していたよりも簡潔な質問に一瞬面食らうも、気を取り直して少し考え込むアルト。


一瞬、昨日見かけたドウルという男と狐の従魔の姿が頭を過ったが、ぶんぶんと頭を振る。


(違う。僕とテナはそんなんじゃない。絶対違う!

テナは、僕の…友達?ちょっと違うかな。じゃあ…仲間?

それはそうだけど、キースやレシェンタさん、エメラたちもそうだよね。

僕にとってキースとテナは、どちらも大切な存在。

だけど、テナやエメラは同じじゃなくて……ああ、そうか。)


ようやく、しっくりくる言葉が見つかったアルト。


「僕にとって、従魔は――テナは、家族です。テイマーと従魔として“契約”していても、どちらが上でも下でもない。危ない時や苦しい時は支え合って、嬉しい時や楽しい時は一緒に笑う――そんな存在です。」


(もちろん、エメラとコハクも。)


アルトがはっきりそう告げると、パストーラはふっとその鋭い眼光を緩めた。


「そうか………合格だ。改めて、俺はテイマーのパストーラ。目がこんなんで最前線の冒険者は引退した身だが、俺に教えられることなら何でも答えよう。」


どうやらアルトは彼の眼鏡に適ったようだ。

ほっとしたのはアルトだけではなく、見守っていたキースとレシェンタも同様だった。三人はふーっと安堵の息を吐き、二人と目が合ったアルトはニコッと笑顔を返した。

読んで下さってありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] …う~ん… “「従魔の扱いに関しては“犯罪に利用しない”という以外、明確な規定はないんだよ~例えば“従魔を傷つける行為”を禁止してしまうと、戦闘に参加させることもできなくなってしまう…
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