第135話 そんなに強いのに?
「ガヤルド達は…根はいい子たちなんだけど、どうも聞かん坊で向こう見ずなところがあってね。僕も手を焼いていたんだよ。ギルマスがこんなだから、舐められちゃってるのかなぁ。」
「ギルマスさん、魔力がそんなに強いのに?」
ギルマスの言葉に違和感を覚えたアルトは、思わず口を挟んでしまった。
「「「え?」」」
それに驚いたのはギルマスだけではなかった。キースもレシェンタも、目をパチクリとさせている。
「だってギルマスさん、トレモロのギルマスさんに追いつきそうなくらい魔力が強いよ。なのに舐められちゃってるって…変じゃない?」
「え、それ本当なの?」
驚いてギルマスとアルトを交互に見るレシェンタ。
「うん。多分、魔力はレシェンタさんよりも強いと思うよ?」
「そう…さすがはギルドマスターね。」
アルトの言葉に、レシェンタは思わず舌を巻く。
「君は……アルト、君もマギアなんだよね。確かに僕もマギアだけれど…どうしてそんなことがわかるんだい?」
驚いた様子のギルマスの問いかけに、しまったという顔をするアルト。ここまで話してしまってはごまかしきれないと諦め、しどろもどろに話し始める。
「えっと…僕は、その…魔獣やマギアのもつ魔力の大きさがわかるんです。僕は【魔力感知】って呼んでるんですけど。」
「へぇ…ガヤルド達から“見たこともない魔法を使う”とは聞いていたけれど、想像以上だね。」
椅子から立ち上がり、興味津々でアルトをまじまじと見つめるギルマス。ひとしきり観察した後、ニコッとアルトに笑いかけて、あっさりと席へ戻っていった。
「僕は魔法使いで、冒険者をやっていた頃はAランクだったんだ。色々あって引退して…成り行きでギルドマスターになったんだよね。でもこの見た目と年齢のせいか、一部の冒険者たちからは軽んじられているみたいでね。」
そう言ってへらりと笑うギルマス。
軽んじられていると口にしながらも怒る様子などなく、掴み所のない笑みを浮かべている。
「トレモロのギルマスというと“迅雷の賢者”だよね。物凄い雷魔法の使い手だって、この辺りじゃ有名だもの。」
ギルマスの言葉を聞いて、白髪の老ギルマスの姿を思い浮かべるキース。
(あのギルマスは老いてはいたものの、老練というのか、凄みがあったよな。
それに比べてこのコーダってギルマスは、どうも飄々としていて迫力に欠けるというか…冒険者たちに舐められるってのもわかる気がする。
隙のない立ち居振る舞いと余裕ある態度。実力者なのは間違いないんだが、どうも調子狂うな……)
「彼と比べられるとは思わなかったなぁ…僕なんてまだまだ若輩だよ。もっと頑張らなきゃね。」
「ガヤルド達も、今回の件で多少は学んだでしょう。あなたも、たまにはガツンと言った方がいいですよ。」
「それもそうだね。考えておくよ。」
そう答えたギルマスは、やはりどこか掴み所のない笑みを浮かべているのだった。
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