第132話 ゲイリー
それから、キース達七人はゴブリンの討伐報酬を回収に向かった。
するとその途中で、大きな声に呼び止められた。
「お前たち、そこで何をしている!そっちは危険だぞ!」
「!?」
驚いたアルト達が声のする方へと視線を向けると、背の高い男性と数人の人影が見えた。
アルト達の方へと近づいて来た男性は、驚いたような表情を見せる。
「ん?お前は…ガヤルドじゃないか!」
「ゲイリー!お前たちだったか。」
「久々だな。セイにアリア、それにメネットも!…ん?知らない顔もいるな。」
どうやら彼はガヤルドたちと面識がある人物だったらしい。
「ああ、彼らは俺たちの恩人だ。キース、こいつはゲイリー。」
ゲイリーと呼ばれた男性はペコリと会釈をする。
「ゲイリーはペザンテを拠点とする別の冒険者パーティーのリーダーで、顔馴染みなんだ。キース達のこともちゃんと紹介したいんだが、後にしよう。」
「ああそうしてくれ。俺はキースだ。それで、あっちは危険ってどういうことなんだ?」
キースの言葉に、ハッとするゲイリー。
「そうだった!俺たちは依頼でゴブリンの群れを討伐に来たんだが…あとちょっとで到着ってところで、いきなり目の前の空から氷の雨みたいなのが降ってきてな。」
ゲイリーの言葉にヒヤリとするアルト。【魔力感知】でゴブリンに狙いを定めてはいたものの、危うく彼らまで巻き添えにしてしまうところだったのだ。
次からは攻撃対象の周辺にも注意を払おうと肝に銘じるアルトだった。
「それで、ゴブリンの討伐よりもそっちの調査をすべきだって話になって、今から現場に向かうところだ。何の仕業かわからないから、お前たちは離れていた方がいいぞ。」
「あー、それは……」
苦笑いを浮かべるキースに、ぴくんと眉を上げるゲイリー。
「ん?お前たち、何か知ってるのか?」
キースはため息交じりに、自分とアルトがBランクの冒険者であることと、ゴブリンを倒したのがアルトの魔法であることをゲイリーたちに説明した。
「ええぇっ!?ほ、本当に?」
「ああ。お前たちも実際にその目で見たんだろう?“氷の雨”を。」
ゲイリーやその仲間たちの反応が概ね予想通りだったため、冷静に言葉を返すキース。
「確かに。このあたりにあんな高度な魔法が使える魔獣なんていないし、自然現象にしてはあり得ないわ。」
「Bランクならそれくらいできる…のか?」
ゲイリーも仲間たちも素直な性分らしく、驚きはしたもののキースの話をすんなりと受け入れようとしている。
実際にBランクの冒険者タグを見せて説明したおかげかもしれないが。
「さあさあ、もう疑うだけ時間の無駄だ。それよりも、討伐証明の回収を手伝ってくれるとありがたいんだが…何せ、あの数だ。な、アルト。」
「お、お願いします。」
ペコリと頭を下げるアルトに、思わず庇護欲をくすぐられるゲイリーの仲間たち。
「もちろんよ!」
「俺たちに任せろ。」
「あー、わかったわかった!俺たちも手伝うよ。ったく、リーダーは俺だってのに好き勝手言いやがって…」
勝手に返事をする仲間たちの様子に何やらブツブツ言いながらも、手伝いを了承するゲイリー。
「助かるよ。んじゃ、回収に行くか!ゲイリーとパーティーメンバーの諸君、それからガヤルドたちも…ゴブリンの生き残りがいないとも限らないから、くれぐれも油断はするなよ。」
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