第128話 謝罪とそれから
「「「「すみませんでした!!」」」」
アルト達に追いついた四人は開口一番、揃って謝罪を口にし、頭を下げた。
キースは怒るでも喜ぶでもなく、感情の読めない表情で彼らをじっと見つめる。
おもむろに口を開いたキースの声は、とても静かだった。
「それで、何の用なんだ。」
肩をびくりと震わせて頭を上げた彼らは、おずおずと話し始めた。
「あれから四人で話したんだ。それで、その…俺たちが間違ってたって気づいた。」
「あなたに指摘されたこと…油断も、慢心も、全部図星で…でも僕らはそれを認めたくなくて、失礼な態度を取ってしまった。」
全面的に自分たちの非を認めるガヤルドとセイ。
「アタシも言いすぎたよ。その………悪かった。」
躊躇いながらも、改めて謝罪の言葉を口にするメネット。
「セイから聞いたよ。解毒の指示とか、拘束を解くとか、あんたも一緒になってアタシらを助けてくれたって。」
「私たちがどれだけ甘かったのか、キースさんの言葉で痛感しました。思えば、キースさんの指摘はどれも的確で…突き放す言葉さえも、私たちの身を案じてくれていました。」
アリアの言葉に同意するように、黙って頷く他の三人。
「レシェンタだけでなく、キース、あんたも俺たちの恩人だ。だから、さっきの非礼を詫びさせてほしい。この通りだ。」
パーティーを代表して、再び深々と頭を下げるガヤルド。
その様子に、キースは小さく息を吐いてフッと表情を緩める。
「わかったならそれでいい。それで、お前たちはこれからどうするんだ。」
キースの問いかけに、探るように互いの顔を見合わせる四人。
何か言いたげなのだが、その視線は“誰が言い出すか”を譲り合い…もとい、押し付け合っているようだった。
「ほらほら、お互いさっきのことはもう水に流しましょう。わざわざ謝るためだけに、私たちを追いかけてきたわけじゃないんでしょ?」
見かねたレシェンタが、間に入って空気を和ませようとする。
その気遣いに後押しされ、リーダーのガヤルドが遠慮がちに口を開いた。
それは、キース達の進む先にある次の村まで、同行させてほしいという申し出だった。
虫のいい話なのは重々承知の上だが、他に頼れる相手がいない。
自分たちの手元にポーションはもう一本も残っておらず、四人とも病み上がり。
このままでは無事に拠点の町まで戻れるかも怪しい。
――ということだった。
「この通りだ、頼む!」
説明を終えて頭を下げるガヤルドと、それに倣う三人。
キースとしては返事はもう決まっているのだが…如何せん、言葉がうまくまとまらない。
その間をどう受け取ったのか、先にアルトが口を開いた。
「えっと、四人の拠点の町ってどこなの?」
「3つ先の、ペザンテという町だよ。街道沿いに歩けば、ここからなら7日ほどで着くかな。」
セイの返事を聞いて、アルトはパアッと笑顔になる。
「それなら、僕たちも行くところだよ。ねえキース、レシェンタ、みんなで一緒に行こうよ!」
「私はいいわよ。」
アルトの問いかけに、間髪入れず即答するレシェンタ。
そして、返事をしていないキースに六人の視線が集中する。
「わかったわかった、そんな目で見るなよ。行き先は同じなんだ、俺も構わない。」
承諾の返事を得て、四人の冒険者たちはほっと胸を撫で下ろす。
「ただし、その前にいくつか言っておくことがある。」
キースの言葉に、思わずピシッと背筋を伸ばして身構える四人。
「まず、勝手な行動をしないこと。それから、万が一ポーションが必要になった場合は俺たちのを使っても構わない。が、使った分は必ず後で支払うこと。」
キースが話したのは、拍子抜けするほど当たり前のことだ。しかし、どこか抜けている彼らには先にきちんと説明しておかねばならない。何かあってからでは遅いのだ。
「もちろんだ。勝手な行動も、あんたたちの邪魔もしない。ポーション代もペザンテに着いたらキッチリ払う。他には?」
キースの言葉に大きく頷き、続きはないかと促すガヤルド。
「そうだな…ああ、次からこういう時は“邪魔しない”じゃなくて“役に立つ”くらい言ってみせろ。」
ニヤリと笑って付け足されたキースの言葉に、面食らって顔を見合わせる四人だった。
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