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第123話 噂話

「そういや、俺たちはまだちゃんと名乗ってなかったな。俺はキース、君らと同じ冒険者だ。こっちはパーティーメンバーのアルト。」


「よろしくお願いします。」


ペコリと頭を下げるアルトに、驚いた表情を見せる四人。まさかこんな年端も行かない少年が冒険者だとは思わなかったようだ。


「今更だが、俺たちに敬語は不要だ。こっちもそうするからお互い様な。アルトもだぞ。」


「…はーい。」


この中で一番年下のアルトとしては、初対面の人には何となく敬語で話していた。それをキースに指摘されて驚いたアルトだったが、少し考えてすぐに納得した。

キースやレシェンタとも一緒に会話をするなら、話し方を分けるのは面倒だと気づいたのだ。


「えっと、私はレシェンタ。冒険者ではないけれど、行き先が同じだから彼らと行動を共にしているの。」


「あなたは冒険者じゃないの?あの実力で?」


驚いて大きな声を上げたのはセイだった。


「ええ、私は――」


「宮廷魔導士なんだ。俺の自慢の幼馴染さ。」


「ちょっと、キース?」


話に割り込んで勝手にぺらぺらとしゃべるキースを、ギロリと睨みつけるレシェンタ。その瞳には「勝手に言わないで」「心にもないことを」という不満がありありと表れている。


キースはそっぽを向いて口笛を吹いているが、アルトはあまりのわざとらしさに吹き出してしまった。


「なるほど。それならCランクの十字蜘蛛クロススパイダーが瞬殺だったのも頷けますね。」


「それは――」


「それでいて光魔法も使えるなんて、本当に凄いぜ!」


「違う違――」


「本当にありがとうございました。」


「ねえねえ、姐さんって呼んでもいい?」


うんうんと頷いたり目を輝かせたりしながら、口を挟む余地をレシェンタに与えない冒険者たち。


(だから違うのに~!)


彼らに悪気は全くないのだが、レシェンタは非常に居心地の悪い思いをし、すっかり参ってしまっていた。



「ところでお前たち、何だって十字蜘蛛クロススパイダーに追われてたんだ?討伐依頼だとしたら、いくらなんでも無謀だぞ。」


キースの問いかけに、ガヤルドが大きく頷きながら話し始める。


「いや、十字蜘蛛クロススパイダーに出くわしたのは単なる偶然だ。実は…森の奥で見つかる“ニシャの実”って木の実が、随分と高く売れるって話を聞いてな。」


「ねえキース、ニシャの実って…」


アルトの小声での問いかけに、キースはこっそり人差し指を立てて「しーっ」と返す。黙って話を聞こうという意味なのだと思ったアルトは、慌てて自分の口をふさぐ。


「高く売れるといっても、所詮木の実だろう?」


キースの言葉に、緩く首を振る冒険者の四人。


「それが、そうでもないんだよ。」


「ええ。なんでも…どこかの貴族が、死の淵にある我が子を救うために、私財を投げ打ってその実を手に入れたのだとか。」


「それでアタシらも、一攫千金を狙ってニシャの実を探しに森に入ったってワケ!木の実の収穫なら、魔獣の討伐やダンジョン探索よりも簡単そうだからね。」


ニカッと得意げな笑みを見せるメネットの言葉に、思わず手で口元を覆うキース。

アルトはキョトンとしており、レシェンタは何かを察したようにフイと目を反らしている。



実はこの噂――ありえないくらい尾ひれがついているのでアルトは気づいていないのだが、もとはバラット商会のラルゴ氏の話であった。


難病が死の淵に、大金が私財を投げ打つに、そしてやり手の商人が貴族に…と、人から人へと伝わるごとに話がどんどん飛躍していってしまったようだ。

読んで下さってありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] …今回のキース…さぞ楽しいやろうな~!…幼馴染をからかい、ニシャの実の尾ひれのついた噂!…うん!私がキースの立場なら、楽しいと思う!!! [気になる点] …コイツらのうち誰かがアルトを馬鹿…
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