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第113話 魔獣学者

翌日、アルト達はギルマスに書いてもらった紹介状を持って魔獣学者のもとを訪ねた。


「トレモロのギルドマスターからの紹介で来ました。旅の冒険者のキースといいます。」


「これはこれはご丁寧に。僕にお客さんとは珍しいね。」


そう言ってキースから紹介状を受け取るのは、眼鏡をかけた壮年の男性だった。

服はややくたびれているが清潔で、手入れも行き届いている。


「うん、間違いなくギルマスの紹介状だね。」


紹介状を確認した男性は、一行を家の中へと招き入れた。


「散らかっていて悪いけれど、どうぞ上がって。」


「「「お邪魔します。」」」



「ああ、適当に座ってくれるかな。」


通された部屋を見渡すと――本はもちろん、魔獣の爪や角、骨などがあちこちに置いてあった。

散らかっているという彼の言葉の割には、単純に物が多いというだけで、きちんと整頓されている様子だ。


男性に促されて、空いている長椅子やソファに各々腰かけるアルト達。


「僕は魔獣学者のモデスト。学者といっても、そんな大層なものではないけれどね。君たちは?」


「旅の冒険者でキースといいます。」


「宮廷魔導士のレシェンタです。」


「冒険者でテイマーのアルトです。この子は僕の従魔のテナといいます。」


「にゃあ!」


アルトの紹介に合わせて、元気よく挨拶をする子猫の姿のテナ。


「ふふ、元気いっぱいだね。」


そんなテナを見て顔を綻ばせるモデスト。


「テイマーに会うのは久々だよ。それもこんなにお若い冒険者さんだとはね。ええと、この子は…え、もしかして……一角黒豹ホーンパンサー?」


まじまじとテナを見つめていたモデストは、半信半疑といった様子でアルトに問いかける。


「っ!そうです。」


アルトはというと、完全に子猫の姿をしているテナの正体に彼が気づいたことに、驚きの表情を見せていた。


「まさかとは思ったけれど、本当にそうなのか…それにしても、額の角が見当たらないな。ここまで小さな個体を観察した例はないから、文献には載っていない…?」


何やらブツブツと言っていた彼は、ハッとしてアルトに向き直った。


「おっと失礼、つい癖でね。僕に用事っていうのは、この子のことかな?」


「はい。実はこの姿は、テナの本来の姿ではなくて…」


「うん?どういうことだい?」


アルトの言葉の意味が分からず、キョトンとするモデスト。


「見てもらった方が早いと思いますよ。モデストさん、少し場所を空けても構いませんか。」


彼の想像通りのリアクションに苦笑しつつ、キースが口を挟む。


「ああ、別に構わないよ。」


机やソファなどを動かすと、部屋の中央にぽっかりと空間ができた。


「テナ、いいよ。」


「にゃ!」


アルトの合図で、あっという間に大人の姿になるテナ。その様子に、モデストは目を真ん丸にして驚いている。


「テナは、本来はこの姿なんです。騒ぎになるといけないので、町の中では子猫の姿になってもらっています。」


「な、なるほど…」


それだけ言うと、ソファに掛けて目を閉じ、数回深呼吸を繰り返して落ち着こうとするモデスト。再び開いた彼の瞳は、魔獣学者としての興味と知識欲でらんらんと輝いていた。


「詳しく聞かせてくれるかな。」

読んで下さってありがとうございます。


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