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第111話 トレモロ

「乗せてくれてありがとうございました。」


「お礼を言うのはこっちの方だよ。次に村に来たときは村のみんな総出で歓迎するから、また来ておくれよ!」


そう言って手を振るのは、アルト達を送り届けた気の良い農夫。

荷物を運ぶついでにと、ここまでアルト達を荷車に乗せてきた彼は、そのまま町の中の喧騒に混じっていった。


「さて、まずはこの町――トレモロの冒険者ギルドに色々と報告をしないとな。」


「そうね。さっさと済ませて、宿で休みたいわ。」


そう言って腰をさするレシェンタ。

馬車での旅が苦手な彼女にとっては、短距離でも荷車に乗っての移動は堪えたようだ。


「うん。行くよ、テナ!」


「にゃあ!」


町にいる間は、テナには子猫の姿でいてもらうことになった。

さすがに大人の一角黒豹ホーンパンサーの姿では目立ちすぎるのだ。


戦闘時など、必要な時以外は子猫の姿でいた方が、余計なトラブルにならない――そういうわけで、子猫の姿になったテナはアルトの肩にぴょんと飛び乗った。特に不満な様子はなさそうだ。



「…というわけで、トレントを討伐しました。査定をお願いします。」


ギルドの受付で冒険者タグを見せて一通り説明したあと、キースは一抱えの木片を取り出した。大小様々なそれらは、トレントの枝や根を切ったものだ。


「お預かりします。少々お待ちください。」


少し驚いた表情を見せた受付の女性だったが、スッと奥の扉へと引っ込んでいった。

ほどなくして戻ってきた彼女に案内され、キース達はここでも別室へと案内されてしまった。



そこには、真っ白な髭を生やした、白髪の老人が待っていた。

杖を携えた彼は、只者ではない雰囲気を纏っている。


「よう来てくれた。わしはこのトレモロの町のギルドマスターをしておる。お主らのことは、レカンタのアー坊から聞いておる。」


(((アー坊…?)))


「む、どうしたんじゃ?」


「ええと、アー坊…とは一体どなたのことで…?」


遠慮がちに手を挙げつつ、老人…もといトレモロのギルマスに尋ねるキース。


「お前さんたち、先日までレカンタの街におったんじゃろう?ならば、ギルドで会ったこともあるじゃろうて。アー坊の寄越した手紙から察するに、よく知った仲のようじゃが。」


「レカンタのギルド…よく知った仲…アー坊………あ、もしかしてギルマスさんのことですか?初めて会ったとき、確か“アレグロ”って名前…」


アルトの言葉に、にっこりと笑って頷く老人。

一方で呆気にとられているキースとレシェンタ。


((あのギルマスが、アー坊…))


「ええと、お二人はどういったご関係で?」


放心から立ち直ったキースは、最初に浮かんだ疑問を口にした。


「アー坊がまだ駆け出しの冒険者じゃった頃、色々と教えてやる機会があっての。短期間じゃが、パーティーも組んでおったよ…ちょうど、今のお前さんたちのようなものじゃな。」


(駆け出しの頃に世話をした…それで“アー坊”なのか。)


「なるほど、よくわかりました。それでレカンタのギルマスから、我々のことで何か報告があったということですか。」


「報告というほどでもないが…“また何かやらかすだろう”とは聞いておる。腕は確かというのは本当のようじゃな。たった三人でトレントを倒すとはのぅ。」


白い髭を撫でながら笑うギルマスに、遠慮がちにアルトが異を唱える。


「あの…トレントを倒したのは、僕たち三人だけじゃありません。」


「ほう?」


ピクリと片眉を上げ、興味深げにアルトを見つめるギルマス。


「僕たち三人と一緒に、僕の従魔と契約精霊たちも戦ってくれました。」


「ほほう、従魔に契約精霊とな?どれ、見せてくれるか。」


躊躇いがなかったかというと嘘になるが、アルトはこの老ギルマスが悪い人だとは思わなかった。


「僕は構いません。ただ、姿を見せるかどうかは本人たちに決めて貰いますね。」


そう言ってアルトは、テナたちが入ったカバンの蓋をゆっくりと開けた。

読んで下さってありがとうございます。


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