表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/188

第108話 樹の魔物(トレント)

それから少し歩くと、川沿いにぽつんと一本の樹木が立っているのが見えた。キースの予想通り――トレントだ。

その太い根は川を横断してせき止めるような形になっている。不思議なことに、根よりも下流にはひとすじたりとも水が流れていない。


レシェンタが村人たちに“魔獣はBランクのトレントだった”と伝えると、村人たちは一気にざわめいた。

「村の異変は魔獣の仕業だったのか」「なんと恐ろしい」「はやく倒さないと」などと、様々な感情や言葉が飛び交う。


「皆さん落ち着いてください。大丈夫、きっと冒険者の方々が対処してくれます。素人の我々は下手に動くべきじゃない、そうでしょう?」


村長の息子の問いかけにレシェンタとキースは力強く頷く。彼の言葉で、混乱していた村人たちはいくらか落ち着きを取り戻したようだ。


事前に立てていた作戦通り、レシェンタとキース、それから姿を消したままのエメラとコハクは、村人たちと共にその場に残る。

攻撃のメインはアルト。テナはその援護だ。


まずはトレントから数メートル離れた場所で、アルトが炎魔法の大技を放つ――


「【爆炎】!」


それは冒険者ギルドの地下試験場にある例の的に、風穴を開けた大技だった。


ドオォォォン!


と轟音を立て、トレントの地上部分のほとんどが消し飛んだ。


「わぁお。」


「予想はしてたが…さすがだな。」


ぽつりと独り言を漏らすレシェンタとキース。

あまりの威力の魔法に、呆気にとられる村人たち。彼らは数秒後にハッと我に返り、脅威は去ったと喜んだ。


しかし――


「皆さん気を抜かないでください!むしろ危険なのはここからです!」


レシェンタの言葉に疑問符を浮かべる村人たち。


(トレントはもう倒したのに、一体何の危険が…?)


「がうっ!」


テナが一声吠えた次の瞬間、アルトの足元から鋭い木の根が何本も飛び出してきた。


「っ!?!?!?」


驚く村人たちだったが、アルトは【身体強化】をしたジャンプで難なく避ける。


【氷造形】(アイスクリエイト)


着地すると同時に氷の剣を造り、根を次々と切り捨てていくアルト。この剣は氷でできているだけでなく、氷の魔力も纏っている。そのため、切り口は凍りつき、そこから根が再び伸びることはない。


テナは次々に飛び出してくる根にすぐさま雷を落としたり、爪や牙で攻撃したりする。そうして動きが鈍ったところをアルトが氷の剣で切り、あるいは【炎弾】を飛ばして炭にしてしまう。

村人たちはその鮮やかな連携に目を奪われていた。


しかし、そんな彼らにも危機が迫っていた。


そもそも、トレントは他の生物を攻撃し、捕食する魔獣だ。その対象には人間も入っている。どうやって生物を感知しているのかはわからないが、トレントの根の一部は村人たちの方を狙っていた。


「っ危ない!」


村人たちのすぐ近くの地面から飛び出した根を、キースが切り捨てる。アルトのように切り口を凍らせることはできないが、これだけ距離が離れていればさほど問題はない。


本体から離れれば離れるほど、切り口から次の根が生えてくるのには時間がかかる。そうでなくとも、トレント本体の地上部分はほぼ吹き飛んでしまっているのだから、それほどの生命力は残っていないのだ。


【火球】(ファイアボール)!」


詠唱時間をキースが稼ぎ、レシェンタの魔法で一層する。こちらも見事な連携だった。


「すっげぇ…」


「彼らはどうして根が生えてくる場所がわかるんだ?土の中が透けて見えてるのか?」


村人たちの疑問はもっともだ。彼らには知る由もないことだが、それは【魔力感知】によるものだった。


アルトは自分で、レシェンタとキースは、それぞれ姿を消して肩に乗ったエメラとコハクから【魔力感知】で感知したトレントの根の場所を教えてもらっていた。それにより、根が地面から出てきたところを即座に攻撃できていたのだ。

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

ブックマークや評価、いいね等で応援していただけると執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ