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第106話 十中八九

「ト、トレントですと!?」


今度はガタッと椅子から立ち上がり、目を見開く村長。それに対し、遠慮がちにゆっくりと頷くキース。


「まだ予想の域を出ませんが…可能性は高いかと。この件に関して、ギルドへの調査依頼はまだ出していないんですよね?」


「え、ええ。まさかそのような事態だとは思いませんでしたので…」


ソワソワと狼狽える村長に、レシェンタが優しく声をかける。


「村長さん、お気を悪くしたならすみません。ですが、彼はあなたを責めているわけではないんですよ。ただ、既に依頼を受けた冒険者や調査員がいるのなら、私たちが勝手に出しゃばるわけにはいかないので…そのための確認です。」


「ああ!そうでしたか。」


レシェンタのフォローで、パッと顔色を良くした村長。


「では、周辺の調査には俺たちが同行します。状況によっては、その場で討伐できるかもしれませんし。」


「そうしていただけるとありがたいですが…そちらの彼も一緒に行かれるのですか?」


村長が“彼”と示したのは、アルトだった。


「ええ、勿論です。ここにいるアルトはこう見えて、俺と同じBランクの冒険者ですから。」


そう言ってチャリ、と冒険者タグを見せるキース。それに倣い、慌ててタグを出すアルト。それを見た村長はまたもや大きく目を見開いた。


「なんと、お二方はBランク!?これはお見それしました…では、村の衆には私から伝えておきます。何卒、よろしくお願いいたします。」


「まだ魔獣の仕業と決まったわけではないので、そんなにかしこまらないでくださいな。何もなければ、私たちはただの野次馬なんですから。個人的には、彼の杞憂であってくれることを祈っています。」


冗談めかして言うレシェンタの言葉に、少し表情が和らいだ様子の村長。


「おっしゃる通りですな。では、よろしくお願いしますよ。」


「ええ、任せてくださいな。」



村長の家を出た後、時間までアルト達は話しながら村の中を見て回ることにした。


「ねえキース、トレントって本当なの?」


「ああ。十中八九、な。」


眉間に皺を寄せたレシェンタの質問に、はっきりと答えるキース。


「たった二日でこの有様って話が本当なら、自然現象ってのはありえない。魔獣の仕業だとすると、思い当たるのはトレント一択だ。」


「魔獣に関しては、私よりも冒険者のあなたの方が詳しいものね。怯えさせないように村長にはああ言ったけど、キースがそこまで言うのなら間違いないわね。久々に腕が鳴るわ。」


「久々?」


レシェンタの言葉に疑問符を浮かべるキース。つい先日も、盗賊や一角黒豹ホーンパンサーと戦ったばかりのはずだ。


「討伐ってことは、加減しなくていいんでしょ?」


「あー、そういうことか。」


ニヤリと笑うレシェンタに、納得したようにこちらもニヤリと笑みを返すキース。


「ねえキース、トレントって木の姿をした魔獣なんだよね?」


子猫の姿のテナをカバンから出しながら、アルトが問いかける。


「ああその通りだ。そのほかの特徴は頭に入ってるか?」


「もちろん!」


樹の魔獣(トレント)――樹木に擬態するBランクの魔獣。

周囲の水や土中の養分を吸い尽くし、周辺の植物を軒並み枯らすことがある。

それに留まらず、小動物や弱い魔獣、果ては人間までをも捕食対象としており、近づけば枝や根で攻撃してくる。

根や枝を切断しても次々に生えてくるため、炎や雷の魔法攻撃、あるいは火薬や爆薬などを用いた攻撃が有効とされている。


「枝だけじゃなくて、根っこでの攻撃にも要注意なんだよね。あとは…」


しっかりと魔獣のことを勉強しているアルトの様子に、キースは顔を綻ばせる。


岩蜥蜴ロックリザードの時といい、よく覚えてるな。」


「うん!僕もキースみたいになりたくて、いっぱい勉強したから!」


「そ…っか。」


キースみたいになりたくて――まさかそんなことを言われるとは思わず、こっそりと照れるキースだった。

読んで下さってありがとうございます。


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