第11話 本当に器用
「そうそう、上手よアルト!」
「わっとと…でもまだ気を抜くとバランス崩しちゃうなぁ。」
アルトは最近考案した【飛行】の魔法で、エメラと共に森の中を飛んでいた。
彼女と一緒に旅をする中で、アルトは思いついた魔法を色々と試し、実現させていった。
例えば、魔法石の巾着にかけた魔力遮断の魔法。
何度も試行錯誤した末に、ようやく完全に魔力を遮断できるようになったのだ。これは多用しなさそうなので、とりあえず“魔力遮断の魔法”と呼んでいる。
他にも、休憩したり寝たりするときに使う【安全地帯】の魔法。
これは【障壁】と【無音】、【目隠し】の三つの魔法をひとつにまとめた、複合魔法とでも呼ぶべきものだ。エメラが「毎回三つも唱えるの、面倒じゃない?ひとつの魔法ですませられたらいいのに!」という発言が発端になった魔法だ。
また、エメラに力を借りて、より強力な魔法に挑戦することもあった。エメラと魔力を同調させ、より強い魔法や、複雑な魔法を試してみた。威力の大きすぎる魔法は森の中では目立ってしまうため、今は威力をほどほどに抑えつつ試す。
一緒に色々な魔法を考えるのは、二人にとってとても楽しい時間だった。いつか森を出て思い切り魔法を使えるようになったら、こんなことがしたい、あんな魔法も使ってみたいと、楽しみは膨らんでいく。
旅をしていると、時折魔獣と戦闘になることもあった。
基本的に不必要な戦闘は避けるのだが、場合によっては交戦することもある。避けていても見つかって追いかけられた時や、食料として狩る必要があった時などだ。
腕試しになり、毛皮や食料も手に入り、一石二鳥である。
魔法での攻撃手段は【水弾】や【風刃】が主だ。森に棲む魔獣相手ならば炎属性の【炎弾】が効果的なのだが、森が火事になっては大変なので、開けた場所でしか使わないようにしている。
もちろん、持っていたナイフに炎や雷を纏わせて振るうこともあった。
離れたところから魔法で戦った方が安全だし楽なのに、とエメラは不思議そうにしていた。それにはアルトも同感だが、遠距離攻撃に頼ってばかりもよくないとも思ったのだ。
遠距離攻撃に頼りきりだと、万が一魔獣に捕まってしまったり、懐に入られてしまったりしたときに対処できない。近接戦闘の練習や、魔力が尽きたときの攻撃手段として、ナイフの練習も怠らない。
できることを増やす――アルトの中で、この方針は村に居た頃から変わっていないのだ。
アルトはふと、魔法で武器を創れないかと考えた。カバンからナイフを出すのは少々手間だし、かといってずっと腰に下げていると重くて邪魔だ。魔法で武器を創れるようになっておけば、戦闘の幅も広がるだろう。
そう思ったアルトは、早速試してみることにした。
◇
「よし、できたぞ。」
「それ、なぁに?」
アルトが炎の剣や水の弓矢を出している様子を、エメラが興味深げにまじまじと見ている。
「えっとね、【土造形】を応用して、炎や水で武器を作ってみようと思ったんだ。とりあえず【炎造形】と【水造形】ってとこかな。」
「アルトって本当に器用なのね。」
出来上がった武器の上にふわふわと浮かびながら、感心するエメラ。
「ありがとう、エメラ。」
「でも、魔力が尽きちゃったら、その武器も創れないんじゃない?魔力切れのときのために、武器で戦う訓練をしていたんでしょう?」
「あ……そういえばそうだね。どうしよう。」
しばらく、うんうんと唸りながら考える二人。
「あ、そうだわ!魔法石をいくつか、手元に持っていればいいんじゃないかしら?こう…指輪とかブレスレットとかにして!」
エメラが嬉々として、地面に絵を描いて見せながら説明する。それを見たアルトは、なるほどと感心した。
「それ、いいね!さすがエメラだよ。えっと、それは何で作ればいいかな?」
「金とか銀…かしら。金属は鉱山や地中にあるはずだから、土の魔法の応用でできるかも。」
「そっか!じゃあ試してみるよ!」
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