第105話 村の異常
「うわぁ…」
「これは…酷いわね。」
レカンタの町を出て数日後、アルト達は小さな村に来ていた。その村の様子が明らかにおかしかったのだ。
畑の作物はそのほとんどが枯れ、土はひび割れ、水路や川も干上がってしまっていた。
「ねえキース、これって…」
「ああ、明らかに異常だ。普通はこんなになる前に、村長なりが何か手を打つはずだ。そもそも、この付近で日照りが続いているなんて、聞いた覚えはないぞ。」
「…土が乾ききっている。それに、養分もほとんど空。まるで何かに吸い上げられたよう。」
土の様子を調べていたコハクの言葉に、ハッとした表情を見せるキース。
「もしかして…」
「何か心当たりがあるの?」
「まぁな。個人的には、予想が外れてくれるといいんだが…」
エメラの問いに、遠慮がちに答えるキース。
「ねえキース、僕たちに何かできないかな?雨を降らせるとかだったら、僕できるよ。」
アルトの“雨を降らせる”発言に一瞬は驚いた表情を見せたレシェンタだったが、まぁアルトだしね、と少し肩をすくめて息を吐いた。
「そうだな。とりあえず、村長に話を聞いてみよう。もうギルドに何かしら依頼を出した後だったら、部外者が勝手に手を出すのはよくないからな。」
キースの言葉に従い、村の人に聞いて村長の家を訪ねることにしたアルト達。
◇
「ほう、旅の冒険者殿ですか。」
「ええ。通りすがりとはいえ、この村の様子が気になったので…わかることだけでも、話してもらえますか。」
「ええ。それが――」
村長は気の良いおじいちゃん然とした人で、色々と話してくれた。
数日前から川や水路の水が徐々に減っている様子はあったこと。
いずれ雨が降るだろうと思いつつ、水を節約するようにはしていたこと。
ところが、この2日ほどで急に全ての水が干上がり、作物もほとんどが枯れてしまったこと。
今日の午後、村人を集めて川の上流や周辺の様子を見に行く予定であること。
「なるほど。もしよければ、俺たちもその調査に同行しても?」
「え、ええ、それは構いませんが…冒険者殿がわざわざ出向くほどのことでは…」
予想外の申し出に戸惑う村長。そこへキースが真剣な面持ちで話しを続ける。
「これはあくまでも俺の予想ですが…この件、魔獣が原因である可能性があります。」
「ええっ!?」
驚いて椅子から転げ落ちそうになる村長。
「たった2日で川や水路が干上がり、作物まで枯れてしまうというのは明らかに異常事態です。恐らく……樹の魔獣がこの村近辺のどこかに棲みついた可能性があります。」
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