第102話 次から次へと
レカンタの街に戻って調査員の人たちと別れたアルト達は、ギルマスの元へと向かった。
いつもの別室で、今回の件について一通り報告をした。
謎の魔物の正体が一角黒豹で、テナの母親でもあったこと。
一角黒豹の脚に闇の魔法のマジックアイテムがついていたために、様子がおかしかったこと。
どうにかマジックアイテムを壊したが、その直後に一角黒豹は力尽きてしまったこと。
そして――テナが急成長したこと。
これに関しては“親から子への魔力の譲渡”というレシェンタの仮説も併せて伝えた。
それから、成体になったテナが自分の意志で子猫の姿に変身できるようになったことも。
実際に目の前で小さなテナが大きな一角黒豹の姿になって見せると、ギルマスはこれでもかというほど目を見開いていた。
そうして報告を全て聞いたギルマスは…長い、それはそれは長い溜息を吐いた。
「ッハーーーーー…よし。俺は何も聞かなかったことに…」
「できるわけないでしょう。」
すかさずキースが突っ込みを入れる。
「わかってるよ、言ってみただけだ。それにしても次から次へと、普通じゃない話ばっかりよく持ってくるもんだな。」
「狙ってやってるわけじゃないんですがね。で、どうしますか。」
「謎のマジックアイテムに関しては、宮廷魔導士でありその道の専門家でもあるレシェンタに、調査を任せよう。」
そう言われてレシェンタは、ピシッと背筋を伸ばしてコクリと頷いた。
「その、テナの母親だったっていう一角黒豹の身体については、調査は必要そうか?」
「それが…」
ギルマスの問いに対し、少し言い淀みつつ切り出したレシェンタ。その話は、にわかには信じがたいものだった。
「一角黒豹の遺体をここまで運んでくるつもりだったのですが…来る途中で、灰になってしまったんです。」
「は?」
レシェンタの話はこうだった。
調査隊の人たちに一角黒豹の遺体を見せた後、キースがもう一度遺体に布をかけようとした。するとその時、一角黒豹の遺体はサラサラと灰になって崩れた。
そして後には、ひと山の灰と鉛色のひび割れた角だけが残ったのだという。
そのような現象はレシェンタも聞いたことがなく、原因は今のところ誰にもわからない。マジックアイテムのせいなのか、魔力の譲渡による変化のせいなのか、あるいは他に別の原因があるのか…とにかく、わからないことだらけなのだ。
「そうか。そのことを知っているのはお前たちだけか。」
「その場に居合わせた調査員数名も目撃していました。妙な騒ぎを起こさないためにも、ギルマスの許可があるまでは他言無用と伝えてあります。」
「わかった。魔獣の奇病だ何だと憶測が流れても面倒だからな…俺からも重ねて箝口令を敷いておこう。」
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