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第99話 慣れた方がいいぞ

「さて、そろそろ戻りましょう。結構時間がかかっちゃったし、調査隊の人たちもきっと心配してるわ。」


「ああ!そういえば待たせたままだったね。」


レシェンタの一言で帰り支度をする雰囲気になったのだが、それをキースが制した。


「ちょっと待てよ。テナはどうするんだ?これまでの黒猫の姿ならまだしも、この外見じゃもう完全に成体…大人の一角黒豹ホーンパンサーだぞ。」


「「「「あ。」」」」


キースの言葉に、ピタリと固まる一同。


「このまま一緒に行っちゃだめなの?」


「テナにはテイムの印がある。なら一緒に行っても問題ないはず。」


アルトとコハクの提案に、レシェンタが難色を示す。


「ん-、アルトがテイマーだってことを調査隊の人たちが知ってるとは限らないし…行くときにいなかったはずの魔獣が増えてたら、みんな驚いちゃうでしょう。」


「じゃあいっそ、ここに棲みついてた一角黒豹ホーンパンサーを、アルトがテイムしちゃったことにするとか?」


エメラの提案に、今度はキースが首を振る。


「いや、嘘はまずい。冒険者としての今後の信用に関わる。」


そんなキースを、エメラがジト目で見ながらぽつりと言葉を零す。


「…隠し事はいいの?」


「それは……まぁ、嘘よりはマシだろう。ギルマスに報告するつもりはあるわけだし、何より調査隊の連中を怯えさせないための隠し事なんだからな。悪意のある隠し事じゃない。」


「ふぅん。ま、アルトが怒られないのなら別にいいわ。」


しどろもどろに弁明するキースの言葉に一応は納得したのか、パッと笑顔になるエメラ。



「なぁアルト、お前の魔法でどうにかできないか。」


「ううん…前に使った【変身】(メタモル)は、角や爪を隠すとか、毛の色を変えるとか、ちょっとした変化へんげができるくらいなんだ。身体の大きさまでは変えられないよ。」


「そうなのか。じゃあ他に何か手は…」


皆が頭を悩ませていると、テナが短く鳴いた。


「がうっ!」


「どうしたの、テナ?」


皆がテナに視線を向けると、テナは目を閉じて深呼吸をした。


そして―――

しゅるる、とテナの身体が縮んで、以前のような子猫の姿になった。額も滑らかで、外見は普通の子猫と何ら変わらない。


「にゃあ。」


「「「「「!?」」」」」


突然の出来事に、一同は目を白黒させている。普段は表情をほとんど変えないコハクまでもが、目を見開いて固まっている。


「え…テナ?」


「にゃあ?」


アルトの呼びかけに、小首を傾げて返事をするテナ。


「もしかして今、自分の意志で小さくなったの?」


「にゃあ!」


躊躇いがちなレシェンタの質問に、テナは元気よく返事を返す。


「噓でしょ……信じられないわ。」


次々に起こる不可思議な現象の連続でキャパオーバーになったのか、ふらりとよろめくレシェンタ。その背中を支えながら、苦笑交じりに言葉をかけるキース。


「気持ちはわかるがな。目の前の現実を受け入れる素直さも、時には大事だぜ。」


「簡単に言わないでよ。魔法に疎いキースにはわからないでしょうけど、さっきからありえないことばかり起こってるのよ。」


あっけらかんとした物言いに食って掛かるレシェンタだったが、それをどうどうと手で制するキース。


「確かに俺は魔法のことはからっきしだがな。驚くようなことが起こってることは、俺でもわかるさ。でもな、アルトと一緒に居たら、そんなことは日常茶飯事なんだ。短期間とはいえ、一緒に旅をするならお前も慣れた方がいいぞ。」


キースの言葉に、何か言いたげに口をパクパクさせたレシェンタ。


「………それもそうね。努力するわ。」


それでも数秒ほど考えて納得したのか、力なくそう零すのだった。

読んで下さってありがとうございます。


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