〜12話€道場の秘話~
これはシンジがspoonに来る前
まだ能力という概念が存在しない頃の話
人々は平和に暮らしていた
仕事をしたり、学校へ行ったり、遊んだり…
そんな中、ある道場では厳しい修行がいつものように行われていた
ソウヒ『ユウ兄さん!俺と勝負だ!』
ユウ『おい今日もやるのか?昨日やったばっかだろ?それに俺の事は兄貴と呼べ!』
ソウヒ『昨日より今日の俺の方が強い!!やろう!兄貴!!』
この道場には親に捨てられた子や酷い家庭に生まれた子など様々な理由で1人になってしまった子供を引き取り、育て、鍛えていたのだ
その中でも師範も認める武の素質が突出した逸材が3人いた
このユウとソウヒはそのうちの2人だった
そしてもう1人が・・・
???『おいおい!この道場はいつからお前ら2人だけのもんになったんだ!?』
ユウ『ズカ、そんな言い方することないだろ!みんなだって俺達の試合を参考にしたいと言ってくれているんだ!』
ズカ『お前が言うその"みんな"に俺は入ってねぇし、実際そこにいる全員が本当にそう思ってるかなんて分からねぇだろうが!』
ソウヒ『まぁズカさんの言ってることも分かります。では、みんなで修行しましょう!』
ズカ『おい、ソウヒまさか…』
ソウヒ『もちろんこの"みんな"にはズカさんも入ってますよ?』
ズカ『いや俺は…』
ソウヒ『ズカさん?やりますよね?』
ソウヒは不敵な笑みを浮かべながらズカを誘った
ズカ『わ、分かったよ…』
ユウとズカは同い年な上に力量も同等、ソウヒは歳が2つ下で力量は2人に比べて多少劣っている程度だった
そして、この3人の仲はソウヒが成り立たせていたのだ
そんなある日のことだった
師範『ユウ、ズカ、ソウヒ、ちとワシに着いてこい』
ユウ『師範、どうなされたのですか?』
ズカ『着いていきゃ分かるだろ』
ユウ『なんだお前』
ズカ『やるかぁ?』
ソウヒ『はいはい、うるさくしたらまた師範に手首折られますよ?』
ユウ『あぁ…それはまずいな…』
ズカ『やめとくわ…』
師範『ほっほっほっソウヒはどんな悪い状況でも良い方向にできるのぉ、それは今後も武器になるじゃろう』
ソウヒ『ありがとうございます!師範!』
そして、3人は師範に連れられて道場から少し離れた所にある蔵に案内された
ズカ『ここは師範以外の出入りは禁止なんじゃ…』
師範『まぁ入れ…』
蔵の中には鍛冶屋に作らせたと思われる刀や防具がいくつも置かれていた
ユウ『師範、これはいったい…』
師範『ワシも昔は防衛軍の1人じゃった』
ズカ『まさか!師範が防衛軍!?』
師範『これはもしもの時のためにワシの行きつけの鍛冶屋に頼んで作ってもらったものじゃ』
ユウ『師範の行きつけの鍛冶屋か…』
師範『今日お前らを呼んだのは、渡したい物があるからじゃ』
ソウヒ『渡したい物?』
師範『直にこの世界で戦いが起こるじゃろう…』
ユウ『なっ!?』
ズカ『戦いだと!?』
ソウヒ『この平和な世界で戦いが…』
師範『そうじゃ、ワシはもう前線で戦える体力は無い』
ズカ『いや、そんなことは…』
師範『人の話を最後まで聞けい!!』
師範がズカの肩を軽く叩くと簡単にズカの肩が外れてしまった
ズカ『いっってー!!!!!』
師範『つまり、お主ら3人にはその戦いで前線に立って戦ってもらいたい』
師範はそう言いながら慣れた手つきでズカの外れた肩を元に戻した
ユウ『戦いに俺らが?』
ズカ『いくら修行してきたとは言え、防衛軍でも無い俺らがですか?』
ソウヒ『もしかして、渡したいものって…』
師範『そうじゃ、鍛冶屋が最高級の素材で鍛え上げた刀じゃ』
ユウ『マジかよ…』
ズカ『本物の刀を俺らが…』
師範『刀はここにある中から好きな物を選ぶか良い』
ユウ『分かりました…』
ズカ『好きにったってどれか良いか何て俺には…』
ソウヒ『ん~俺は二刀流だからなぁ』
そう言いながらも3人は蔵の中を歩き、武具を見ていった
ユウ『あ…』
ズカ『お…』
ソウヒ『じゃあ…』
3人『これで!』
3人はほとんど同時に1本ずつの刀をそれぞれ指さした
師範『ほっほっほっ…やはりお主らで正解だったようじゃな』
3人『え?』
師範『ユウが虚無、ズカが塵月、ソウヒは赤魏だな』
ユウ『虚無…』
ズカ『塵月か!!』
ソウヒ『赤魏…どうゆう意味でしょうか…』
師範『刀が決まったのなら道場に戻ってくれて構わんぞ』
ズカ『なんだよ、刀は選んだだけでまだお預けか?』
師範『この3本の刀には、ちと因縁があってな…』
ユウ『因縁…』
師範『その因縁を無力化するために、今から鍛冶屋に鞘を作ってもらいに行ってくる』
ユウ『あ、じゃあ俺もその鍛冶屋に行ってみたいです!』
師範『良かろう』
ズカ『俺は修行に戻るぞ』
ソウヒ『じゃあ俺も!今度兄貴に勝つために修行だ!!』
こうして、ユウは師範に連れられ鍛冶屋に向かった
その道中で気になっていた因縁についてユウは師範に尋ねた
ユウ『師範、あの3本の刀にはいったい何が?』
師範『鞘が完成したら他の2人にも説明をするが、ユウには先に教えてやろう…』
師範の表情はいつもより強ばり、険しくなった
それを感じ取ったユウは真剣に師範の言葉に耳を傾けた
師範『ワシには昔、共に戦いをくぐり抜けた戦友達がおったんじゃ』
ユウ『師範と共に戦える人がいたんですか…』
師範『あぁ…別々に戦いをくぐり抜けたワシらは帰国し、互いの刀を重ね合わせ、共に祝杯をあげようとした…』
ユウ『まさか…』
師範『あぁ…何が起きたかワシには分からなかった・・・体が急に動き、ワシらは互いを斬り殺し始めたんじゃ…』
ユウ『なっ!どうしてそんなことに!!』
師範『それが刀の因縁じゃ…周りにも止められない勢いでワシらは同士討ちをしていった…』
ユウ『つまり俺らが選んだあの刀が…』
師範『あぁ…その同士討ちの残り刀じゃ…』
ユウ『!!!』
師範『鍛冶屋に聞いても刀に宿るその何かは分からずじまいで、似たような刀を作って試してみても何も起きなかった・・・』
ユウ『解けない因縁…なんですね』
師範『そうじゃ、じゃが試してわかったこともある・・・』
因縁についての話が終わる頃、2人はちょうど1軒の鍛冶屋に到着した
師範『失礼するぞ』
鍛冶屋『お!!サザマのじいちゃんじゃん!!また刃こぼれ直しかい?』
そこにはユウと同じ歳ぐらいの若い女がカウンターにいた
ユウ『なっなんだその口の効き方は!!師範に無礼だぞ!』
サザマ『ユウ…この子はワシの刀をずっと見てくれていた友人の孫じゃ、ちと生意気じゃが腕は確かじゃ』
ユウ『こんな子が…』
鍛冶屋『なんだよじいちゃん、今日は連れがいるのかい!』
サザマ『あぁ、今後の常連になるかもしれんぞ?仲良くしておけ』
鍛冶屋『おぉ!未来のお客さんか!それは仲良くしとかなくちゃだな!よろしくな!えっと?』
ユウ『ユウだ、名を聞くならまず自分から名乗るのが常識だろ…』
鍛冶屋『何だか物騒な男だねぇ~アタシはリリス!よろしくな!未来のお客様!』
サザマ『リリスよ、今日は鞘を3つ頼みに来たんじゃ、封力の鞘じゃ』
リリス『・・・じいちゃんまさかあの3本を出すのかい?』
サザマ『そうじゃ、ワシが持っている鞘ではすぐに壊れてしまいそうじゃからな』
リリス『分かったよ!1週間待ってくれれば用意してみせるよ!』
サザマ『十分じゃ、では1週間後にまた来る』
リリス『毎度あり!!』
こうして鍛冶屋を出た2人は道場に戻る道中で、サザマの昔の話や、鍛冶屋のリリスの話など、たくさんの話をしてもらえたユウはとても上機嫌で道場に戻っていった
それを寂しそうに見るサザマ
まるで近いうちに別れが来ることを悟っていたかのように・・・
そして・・・
デノールによる襲撃はこの1日後に起こった
ズカとソウヒは師範の昔の話や刀の因縁の話を聞くことも出来ずに襲撃の被害に巻き込まれた
ソウヒはデノールに連れていかれる時に
ズカはデノールに復讐することを誓い、道場を去る時に
そしてユウは師範の意志を継ぐために・・・
それぞれ因縁に縛られた刀を手に、違う道を歩み始めたのだった・・・




