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第5話 ローマ

 古代ローマの元老院による会議場を模して作られたその建物の中で、背広を着た男たちが深刻そうな顔をして向き合っている。


 その装飾意匠はまるでここが古代ローマであるかのように錯覚するほど精巧かつ正確である。


 ここは防衛省マグロ対策係の本拠地、通称”ドイツ村”。


 制服を着た高官、柘植善治はモニターに映された国会の様子を見てこうつぶやいた。


「……やはり総理の辞任は免れんか」


 傍らにいた同僚の松伏光一が当然だとばかりに同意する。


「そりゃ反対を押し切って海外派兵、そして貴重な艦隊の壊滅。海自隊員の死者もいったいいくらになることか……」


「ただの辞任では済みそうにもないだろうな。トリプルルッツからの4回転半辞任でもキメないことには国民は納得しないだろう」


「お前、スケート好きだよな……だがこれからどうする。ハワイ沖の巣をなんとかしなければ奴らは再び日本に到達するぞ。そうなれば被害は青森での比ではないだろう。しかしこれ以上艦隊を動かすのはマスコミが許さない。総理ならばまだしも与党がすげ替わることにまでなればマグロにやれられる前に国が滅ぶぞ」


「……」


「何か良い手はあるのか、柘植統合幕僚会議議長殿」


「マグロハンターに任せる他あるまい」


「マグロハンター? 雇った奴らは揃って海の藻屑じゃないか。青森の英雄だって……」


「彼女は生きている」


「そう断言する理由は」


「さあな。ただ、お父上によく似ている」


「やれやれ、女の子に父親似だと言うと嫌われるぜ」


「……頼む、松伏。同期の頼みだ」


 松伏はそう言われて顔をしかめたが、「珍しいこともあるもんだ」と言って柘植から目をそらした。


 そして目をそらしたまま言った。


「世論工作は俺に任せろ。あらゆるインフルエンサーは俺の熱心な”ファン”だからな」


「……助かる」


 柘植統幕議長は立ち上がると、場の行く末を息を呑んで見守っていた部下たちにこう命じた。


「青森の英雄を探し出せ。どこかで必ず生きているはずだ。そしてここへ連れてくるんだ」


「承知!」


「ご随意のままに!」


「一族の誇りにかけてえ!」


 部下のどうでもいい奴らはそういうことを言いながらはけていった。





「よーし、パパ釣りしちゃうぞ」


 パパは本当に釣りが好きだね。


「そりゃあ、パパの前世はイワシだからな」


 なにそれ、それじゃ釣られるのパパじゃない。


「イワシは色んな魚の餌にもなるんだ。まさに食べられるために生まれてきた魚がイワシなんだよ」


 ……パパ?


「イワシは生まれてすぐに食べられて、また生まれて、食べられて、また生まれる。そうして無限に食べられ続ける」


 ……どうしたの、怖いよ……。


「だからパパが食べられたのも、きっとそういうことなんだ」


 パパ……聞いて、お願い、私は……。


「またここで話そう。明日来てくれるかな?」


「──いいとも! はっ」


 私は跳ね起きるように身体を起こした。そして痛みに顔を歪める。


「……夢、か……痛っ」


 脇腹に手をあてる。この感じ、あばらが5,60本はやられている。


「はやく手当しないと……」


 辺りを見回すと、そこは常夏の楽園だった。


 白い砂浜とビーチ。そして青い海のすすす、スープ。


 く、クラムチャウダー7世は熱いのがお好きのようですか? でもモンハンでは上手に焼けましたあの素晴らしい愛とプロジェクトをもう一度大泉洋、太平洋に浮かぶ。ぷかぷかぷかp


 ──マグロ酔いだ!


 私はイキかけた意識の中でようやくそのワードを認識した。


 戦術級だけじゃない、戦略級の本マグロによる闇のダークパワーの直射を受けたんだ、精神が侵食されかけている。


 これ緩和するには薬を投与するか、あるいは帰宅して寝るしかない。


「一度家に帰らないと……」


 家に帰らないとんとんとととん武勇伝とんとととん帰宅後家のソファに外人がいてとんとんととん一緒に真顔でくねらせたたんt


「おい、ムサカこっち来てみろ。人間が倒れているぞ」


 私の脳裏にんんいにんニンニンwwwww者でござるに聞こえたのは誰かの声だっ……

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