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狂気と共に異世界転移  作者: 二式山
三章 王都イアエラ
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第四十九部 食事


 二人はしばらく剣を合わせたのち、昼休憩となった。

 そこここの兵士達が訓練を止め、一息つく音が彼方此方より聞こえる。


 木刀を置いたシャリアは、流永に声をかけた。


「よかったら、お昼ご一緒しませんか?」

「……うんッ」


 流永はにっこり、嬉しそうに頷いた。


 クロード含め三人は移動し、煉瓦造の一つに入った。


 エードは遠慮して先に帰った。


「ここが食堂です」


 副長さんに案内され、たどり着いたのは、建物の中の大広間。

 長テーブルが整然と列を為し、奥行きは五十メートルはあるだろうか。


 昼どきということもあって、騎士団員が長テーブルを埋め尽くし、熱気がある。


 正直、少し汗臭い。


 ただ、流永は若干、口を歪めるに止めた。


「ご飯はどこで?」


 と、流永は代わりに、腹が減った、と手でお腹をさすった。


「炊事の方がいますので、お盆を持って並んでください」


 副長さんが指さした方向には行列が蛇のようにできていた。

 流永は一足先に行列へ。


「私たちも一緒に並びましょう」

「はい」

 

 副長さんも、クロードと並んだ。


 そして、三人は炊事係から食事を受け取ると、長テーブルに座った。


 食事は、意外と豪勢で、野菜のスープに肉、魚、パンが供せられた。


 クロードが片方一人、流永と副長さんは並んで座った。


「それじゃあ、いただきまーす」


 と、流永は手を合わせ、食べようとしたところを、副長さんが止めた。


「ま、まだです」


 副長さんは胸の前で両手を互いに握りしめた。


「お祈りしてからです」

「はーい」


 流永は、素直に聞き入れ、副長さんと同じく手を組んだ。


 クロードも手を組んでいる。


 やがて、炊事係の前の列も無くなり、全員が席についた。


 祈りの言葉は副長さんが代表して言った。


 そして、副長さんが祈りの言葉を言い終わると、一同揃って「主の御心のままに」と唱えた。


「もう、大丈夫ですよ」

「うん」


 流永は組んでいた手を解き、スプーンを持った。


 スープは、少し塩胡椒が加えられているが、そこまで美味しくない。

 パンはパンだ。

 肉も塩胡椒が加えられ、これは美味しい。

 魚は、煮魚。

 これは、そこそこ味が付いている。


 ——おい、今日は俺の勝ちだ。その肉よこしなッ

 ——チッ、あれは石に転んだんだ、ノーカウントだッ

 ——なっ、卑怯だぞお前ッ


 わいわい、がやがや。


 ——おいッ、酒持って来い!

 ——こっちにも酒だッ


 食事中だが、食堂は破れるように騒がしい。


 騎士団というからには、もっと行儀のいいものと思っていたが、食堂に満ちるのは、厳粛な雰囲気ではなく、怒鳴り声と笑い声。


 ただ、クロードは黙々と食事を口に運んでいる。


 副長さんも、行儀よく背筋を伸ばし、小さな顎を一所懸命に動かしている。


 流永も特に話すことがなく、口に入れた食事を、ひたすらに咀嚼していた。


 食事の途中、酔った団員に絡まれたりしたが、そこは割愛。


 食後、クロードは仕事がある、と四番隊の屯所へ帰っていった。


 副長さんも書類などのチェックがあるそう。


 流永は何を思ったか、


「なら、僕は副長さんの仕事を見てる」


 と言った。


 人に見られて仕事などできるものか。


 流永は、そのあたり、配慮というか、他人に対して斟酌する心が欠落している。

 

 とかく、副長さんは、というと。


 普通は嫌だろうが、副長さんは「ええ、良いですよ」と、にこやかな笑顔を見せて承諾した。


 人に見られても気にならないのか、それとも人に対して底抜けに優しいのか。

 彼女の場合、きっと後者だろう。


 流永は「わーい」と腑抜けた声を上げた。

 

 そんな流永に、副長さんは柔らかな笑顔を向けた。

 

 

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