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狂気と共に異世界転移  作者: 二式山
二章 学院
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第四十二部 回想のあれこれ


 アドリーヌは目をつむった。

 ジャンとの婚約がなった時のことを思い出している。


 (もう一年も経つのね)


 初めてジャンに会った日。

 夏の入り始め。

 あの日は少し暑かった。


 正直、結婚式でのことはほとんど憶えていない。

 あまり公の舞台に出たことがなく、相手は王族であり、失礼があってはならない、と緊張していたのだ。


 なので、この時の記憶といえば、少し暑かったことともう一つ。


 (あんな……)

 アドリーヌは、はじめてジャンの顔を見た時、絶句してしまった。


 (まるでお話に出てくるような)

 美しい。

 そう思った。


 彼女が知っているのは、年中泥だらけで芋みたいな顔をしている農民の子供達や人並みな顔立ちの兄弟である。

 こんな秀麗な顔は見たことがない。


 (それにしても、あの人はなんで私なんかを……)

 アドリーヌは夫となる男を、それとはなしに見やった。


 今回の縁談は、ジャンの希望であると父から聞いた。


 ジャンの家とアドリーヌの家は家格がかなり違う。

 同じ貴族であることは変わらないが、ジャンは王族、アドリーヌは男爵家である。

 普通なら二人が結びつくことはない。


 だが、ジャンは男爵家の、しかもアドリーヌを指名したのだ。

 当時の彼女は野山で遊ぶ腕白小僧そのもので、結婚ましてや縁談など考えられなかった。

 実際、何度か公の舞台に出たことがあるが、礼儀作法が未熟で、周りの貴族連中からよく嘲笑を受けたものだ。


 ただ、ジャンは、流永との話を見ればわかる通り、権威や階級など屁とも思っていない。

 彼はアドリーヌの噂を聞いた時、この人が良い、と即座に思った。


 元々、気風の良い女が好きなのだ。


 そして、縁談を申し込んだ所、彼女の一家では突然王族から話がきたことに大混乱してしまい、アドリーヌの意見も聞かぬまま「了承」の返事を送ってしまった。

 アドリーヌは、後でこの話を聞いて怒ったものの、一度受けたものを反故になどできない。


 それから、結婚式までの間様々なことがあったが。

 とまれ。

 アドリーヌは、結婚式では、慣例通りの作法を行なっているうちに終わってしまい、ジャンとはあまり話せなかった。


 ただ、終わった後、

「これから、よろしく」

 と、ジャンが優しい笑みをして、そう言ってくれたことは鮮烈に印象に残っている。


 

「ともかく、あなたがイアエラに行くまで私も学院に通いますわ。わかったッ?」

 アドリーヌは目をきっ、と鋭くした。


「えー……」

「そんなに嫌なんですか?」

「そりゃあ、恥ずかしいだろ。それに、リュウエイが絶対からかうしな」


 ジャンの言葉に、流永は強く頷いた。

「当然。とりあえず毎朝、昨夜はお楽しみだったかどうかは聞いてやろう」

「やめてくれ……」

 ジャンが困ったように首を振ると、流永は大きく笑った。


「な、わかったろ」

 ジャンが、そうアドリーヌの方を向いた。

「ちっともわかりません」

 彼女は、絶対一緒に行きます、と言って聞かない。


「そんなに行きたいの」

 と、ジャンが訊くと、

「そりゃあ、私だって授業というものを受けてみたいですわ。それに……」


 ここまでいうと、アドリーヌは、ぷいっとそっぽを向いてしまった。


 少し顔を赤らめている。

 流永には彼女とジャンの機微が全くわからなかったが、ジャンや横から見ているレイは気づいている様子である。


 ——夫と一緒に学院に通いたい

 彼女がそう思っていることは確かだが、まさか口に出してはいえない。

 ジャンは一つ、息を吐いた。


「わかった。行くか」

 アドリーヌの顔が、パァッ、と明るくなった。

 事情を察せない流永はそれを聞き、

「宣言通り揶揄おう!」

 と、子供みたいに笑った。

「いいぜ、あまんじて受けてやる」

 ジャンも只者ではない。

 胸を張って開き直った。

 

 明日から、アドリーヌがAクラスの一員になることになった。


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