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狂気と共に異世界転移  作者: 二式山
二章 学院
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第二十二部 Aクラス


 

 朝日がてらてらと光っている。

 流永は寝ぼけた顔つきで家を出た。

 通学途中、流永よりも年上の制服を着た人たちを見かけた。上級生は今日から通学のようだ。


「おい、待て!」

 校門に差し掛かった時、呼び止められた。

 流永は目を細めて、声のぬしをみた。

 女子生徒が厳しい目つきで流永を睨みつけていた。


「風紀委員だっ」

 と、そういって腕につけられた腕章をぐいっと引っ張ってみせた。


 彼女は桃色の髪を後ろでぎゅっと結び、きらりと眼を光らせ、背が高く、華奢な身体つきをしている。


 流永は思わず見上げる格好になった。

 ぼんやりとした眼で彼女を眺めた。

 春も中頃、朝でも身体を包み込むような暖かさがあった。


 流永は、

 (きれいだなあ)

 と、思った。


 だが、これは彼女の顔かたちというより、その服装の方である。

 彼女の服装は一糸の乱れもなく、引き締まっている。真っ白な高そうな服を着ている限り、いいとこのお嬢様だろうか。


 彼女は流永を品定めするように睨みつけた。

 彼女の服装とは反対に、流永は髪は寝癖が残っており、上着は着崩れをおこし、また、上下とも、ぶかぶかでサイズが合っていない。


 もっとも、サイズが一回り大きいのは流永の好みによるものだが。


 呼び止められるのも当然の服装だが、

「……?」

 流永は何のことか、と首を傾げた。


「お・ま・え、のその服装だ!王国の学園生ならば、その誇りを持ち、恥じぬ服装をしろ!」


 高等学院に入るには金がかかる。つまり入学するものは、それなりに裕福な家であることだ。

 彼女も流永がそれなりの家だと思っており、流永もそれなりに金は持っている。が、元来服装にあまり頓着しない性格である。


 彼女(風紀委員)は彼のシャツのボタンを全てしめた。

「ぐぅっ……」

 締められる感覚が嫌いな流永は苦悶の表情をした。


 流永は今のところ反抗せず、なされるがままになっている。


 まだ寝ぼけていた。

 ズボンも腰に付いている紐で、ぐいっときつく縛り上げた。


「お前は自分の身だしなみすらできないのか?自分のことは自分でしろ」

 彼女は呆れた目を向けた。

「だって、やだもん」

「はあ⁉︎」

「ぼく、パツパツなの嫌い」


 流永は子供みたいに口をへの字に曲げた。

 ちなみに流永の一人称は、僕だったり俺だったり、気分によって変わる。


「嫌いだろうが、身だしなみはきちんとする。常識だろう⁉︎」

 と、彼女は吠えるが、流永はぽけー、とアホ面をみせている。


 彼女はさらに顔を赤くして怒声を浴びせたが、流永は馬に念仏といった態度で、彼女の顔を見上げていた。

「おい、訊いているのか⁉︎」

「もうすぐ時間じゃない?」

 と流永が校舎の方へ顔を向けた時、

 キーンコーン

 と、予鈴の鐘がなった。


 彼女(風紀委員)は剣呑な表情をした。

「ちっ。お前、学年、組、氏名を言え」

「一年A組、伊……じゃないリュウエイ・イバだよ」

 彼女はにがい顔をした。

「一年……。とにかく、今日の放課後、生徒指導室に来い!分かったな」

「覚えてたらね」

 流永は微笑った。

 

 

 教室に入った流永はすぐに第一ボタンを外し、ズボンの紐をほどいた。

(解放、かいほう〜)


 流永は一息はいた。

 前の世界でもそうであった。

 学校では大体いつも、だらしない服装で通っていた。


 初めは教師に怒られていたが、何度言っても服装を改めないので、呆れられ、最後には諦められた。


 流永が服装を緩めていると、既に教室にいたレイが駆け寄ってきた。

「リュウエイくん、おはよう!」

「おうッ」

 流永は返事をして、すぐにあくびをかいた。


「服装だらしないよ」

 レイは流永の服を指さした。

 風紀委員長に注意された時のだらしない服装に戻っている。


 流永は、へらへら笑ってとりあわず、白い髪の少女——サメラの隣に座った。

 流永は基本他人に無関心だが、気になる人物がいると、子供のように擦り寄っていく。


 ちなみに、気になる、とは好意の意味ではなく、好奇心が反応した、という意味である。

 流永がサメラの隣に座ると、隣の彼女は露骨に嫌な顔をした。が、流永は気にもとめない。

 にこにこ笑っていた。


 

 本鈴直前、ドンッとドアを蹴破る勢いで入ってきた者がいた。

「間に合ったァ!」

 その者は喜ぶように叫んだ。


 よくみると額に汗が浮き出ている。

 男である。金髪翠眼、髪を額の真中で分けている。疲労で顔を歪めているが、一目見て端正な顔立ちだとわかる。ただ、前の世界のチャラ男のようにも見えなくはない。


「ねえ、昨日あんなのいたっけ?」

 流永は隣のサメラに訊いた。あんな騒がしい好青年、昨日教室にいれば気づくはずである。


「………」

 サメラは一度、眉間にシワを寄せて流永を見たあと、

「……いなかったな」

 といった。


 面倒くさいが、答えておけば、金髪の彼に集中するだろうと思ったのだ。

「なるほど」

 サメラの思惑は当たり、流永は彼女の答えを聞いた後、金髪の彼に視線を向けた。


 他の生徒たちも流永同様その彼へ不思議そうな目線を向けている。

 彼は周囲から向けられる視線に気づいたのであろう。


 席に座る彼らに向かって、ぐいっと胸を張ると、

「クル・ライザーッ。どうも、よろしく!」

 と、教室中に響く大声でいった。


 彼が自己紹介を終えたところで、丁度担任が入ってきた。

「はい、始めまーす」

 先生は金髪の彼にちょっと目線を向けただけで、すぐにホームルームを始めた。

 フェス先生、全く動じない。


 ホームルームが終わった後、レイはクルに、

「なんで、昨日来なかったの?」

 と、訊いた。


 クルの周りには他に影の薄い五人組もいる。好奇心で集まってきたのだろう。

「ちょっと家の用事でね。学校に言ったら休んでもいいって言われたから休んだ」

 と、彼は笑顔でこたえた。


「そういえば、クルって試験の時いたっけ?」

 と、五人組の中の一人が、ふと思い出したようにいった。

 流永は他人の試験には興味がなかったから、誰が出ていたかなぞしらない。


「ちゃんといたよ!そんなに存在感なかったかな?」

 クルは、あははと頬をかいた。


 流永は教室最奥で白髪の女子生徒の隣に座っている。

「ねぇねぇ」


 流永はその白髪の彼女に声をかけた。

 彼女は涼しげな眉を流永に向けた。


「名前なんだっけ?」

 流永はとぼけた顔をした。自己紹介で彼女も名前を言ったはずだが、流永はもう忘れていた。

 が、彼女はすぐそっぽを向いてしまった。


 しかし、これしきで引き下がる流永ではない。

「ねぇねぇねぇ」


 と、何度か袖を引っ張ると、彼女はため息を吐いて、煩わしそうに、サメラ……、とこたえた。

「サメラちゃん」

 と、流永が喜色をうかべて言うと、彼女は、ぎろりと流永を睨みつけた。


 彼女の眼光はともすれば、あとずさりしたくなるほどの鋭さだが、流永には一向に効き目はなく、かれは子供のような笑みをうかべた。

 


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