第十五部 老人の家5
その日の晩。寝床。
老人にあの黒いのは一体何だ、と訊いた。
老人が前に飲ませた龍の血の効果とは聞いたが、それだけではこれが龍の血由来ということが分かるだけだ。
「で、これは何なのさ」
流永は腕を黒くしている。この一日で、黒くする、戻す、は完璧に身につけた。
「それはあれじゃ、身体を龍の様にできるものじゃ」
老人は面倒くさそうに答えた。早く寝たいのだろう。
ただ、そんな老人のことなぞ、流永にとっては一切興味がない。
「どういうこと?」
流永はさらに質問した。彼の好奇心が満たされるまではその質問は尽きることがないだろう。
「ハァ……。つまりは己の身体を龍の身体の構造へ変えられるということじゃ。黒くしたらその部分が硬くなるじゃろう?それは龍の鱗に変わっているからじゃ」
老人は体の向きを変えた。老人の乗るベッドがギシギシときしむ。
「なるほど」
大体は分かった。自分の身体を龍の様に変化させることができるということらしい。流永は老人の回答に満足して横になった。
翌日。
この日は体力づくりと黒いやつを半々で練習した。ちなみに黒いやつでは呼びにくいので、単純に龍化と呼ぶ。
この日からは特に起伏はない。
魔術は龍化などの鍛錬や時々街に下りるぐらいだ。
まあ、鍛錬については流永は黙々と行ったので老人にとって苦ではなかった。
それよりも日常生活の方が老人にとっては苦難であった。
家事の手伝いはせず、鍋ばっかりは嫌だとごねて老人を街まで行かせたりなど、その日常生活では流永はわがままばっかりいっていた。
一応身体は子供(九歳)だが、内側は十七歳である。
あまりにも年相応過ぎる。
老人も流永が本当は青年であることを知っているため、流永の行動を見て目眩がする思いをした。
ちなみに龍化の鍛錬というのは、腕を黒くする、戻すを繰り返したり、全身を龍化させてみたり、その状態で魔力を込めるなどの行為を行っている。
年が明けた。
今年で流永は十歳になる。
初日の出を見ようとしたが、残念ながら山が邪魔で見えなかった。
初日の出を見ようとした時、老人に意味はあるのかと訊かれた。
この国に初日の出の習慣は無いのだろう。
流永も日の出を拝む理由は分からなかったが、一年で初めのお天道様が見れるのはいいじゃないか、と曖昧な答えを返した。
老人はさらに混乱した。
この年も老人指導の下、流永に魔術やら剣術、龍化などを鍛えた。
だるい、疲れたとは言うものの、流永は老人の言うことにはきちんと従っている。
そして、この年の終わり頃、流永は老人と試合を行うことになった。




