第7話 爆誕! エロ魔術士!
3時間にも及ぶ土下座の中で、無意識に現実を前向きに捉えようとし始めていた。
つまり、徐々に美少女に土下座し続けることに、快感を見出し始めたのだ。
金髪のロングヘアにどこかメルヘンチックな青色のエプロンドレスは、謎のフェロモンを発している。
やばい癖になり始めた。
そんなことを俺が考えていると、アリサが突然ぼやいた。
「私、もうハヤトの土下座見るの飽きちゃった。先、帰ってていい?」
こいつ、何しに来たのか完全に忘れてしまっているのか……。
俺が謝罪の気持ち一杯で、心からの土下座をしているというのに……。
すると、白魔術士が口を開いた。
「まだ、自己紹介もしてないのに帰っちゃうんですか? せっかくあなた達とお友達になれると思ったのに……」
今までのやり取りで、既に友達にはなれないと思うのは俺だけだろうか?
「あっそうだったね! 私の名前は、アリサ・ルールロード、アリサって呼んでね! 職業はバーサーカーだよ!」
「私の名前は、エル・マーリン、エリと呼んでください。変態さんも、もう土下座はいいですから、名を教えてください」
俺は頭をあげると名乗った
「俺の名前は黒山ハヤト、ハヤトでいいですよ。職業は黒魔術士です」
「クロではなくて、エロなのではないですか? なんなら、今からでも、エロ魔術師に転職したらどうですか?」
エリさんは、やはりまだ怒ってらっしゃるらしかった……。
「結論から言わせてもらうと、私はあなた達のパーティに入るつもりはありません」
「えっ! どうして!」
アリサが素っ頓狂な声をあげた。
確かに、俺も急な展開に驚いた。
「それは、やっぱりさっきの俺の行動のせいですか?」
「いえ、そうではありません」
「じゃあ、どうして……?」
すると、エリさんは改まったように真剣な顔をして言った。
「パーティに魔術師が2人いると、キャラが被るからです! 私はオンリーワンでいたいんです!」
「は?」
俺は思わず声がもれた。
賢者さんの言っていた意味が、ここから少しわかり始めた。
「でも、白魔術士と黒魔術士じゃ、役割りが全然違いますよ!」
俺が急いで反論する。
このままでは、俺の誠心誠意の3時間土下座が全て無に帰す。
「あなたは、何も分かっていません! 役割でなく、名称のバランスです! 物語のメインパーティがあったとして、同じような名前の役職の人が2人いると思いますか!?」
エリさんは大分やばい人らしい。
自分の入るパーティをナチュラルに物語のメインパーティとか言ってしまうあたり、中二病かもしくは、ナルシストが入っている可能性が高い。
と、俺が冷静に分析していると、アリサが大きな声で語り始めた。
「確かに、パーティに格好良さを求める私は、あなたの言うことが分からなくもない!」
分かっちゃうのかよ!
と、心の中でつっこむ俺を置いてアリサは続ける。
「しかーし! これが、ただの魔術師なら確かに私も気持ち悪いと思うけど、ハヤトとエリは違う! 白と黒! コントラスト! 正反対! しかも、白と黒! 混沌のカオス! ああ! 格好良すぎる!」
混沌とカオスは一緒だろ……。
アリサのアホな語りに対し、エリさんは真剣な面持ちのまま答えた。
「分かりました! やっぱり、入ります!」
どうやら、この2人にはどこか通じるものがあるらしい……。
俺は完全に置いてけぼりだった……。
カンカンカンカンカン
その時だった。
街の緊急の鐘が鳴り出したのだ。
それは緊急モンスター討伐の鐘の音だった……。
俺たちはとりあえず急いでエリさんの家を出て、ギルドへ向かった。