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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第6話 ラッキースケベは犯罪か?


「これは、やばいな」

「これは、やばいね」


 アリサと同棲を始め、パーティを組んだはいいものの、深刻な問題が発生した。


 すなわち回復手段の欠如である。

 回復魔法を使える人間がいないパーティというものは、基本存在しない。

 薬草は持って行くのにも限度があるし、効率はあまり良くない。

 やはり、回復に特化した人間がパーティに1人いるだけで、安定感グッと増す。

 しかし、俺達のパーティは基本魔法の使えないバーサーカーのアリサと、デバフ魔法がメインの黒魔術士である俺しかいないのである。



 最初はこれでもなんとかなるだろう、なんて甘いことを考えていたのだが、実際上手くいかない状況が最近続いていた。

 高額の報酬が付くクエストを一切クリアできないのである。

 後一歩のところで、毎回薬草が尽き、リタイアせざる得なくなってしまうのである。


 そこで、俺達は簡単なクエストをこなした帰り、ギルドで話し合うことにした。


「賢者とか、僧侶とか、勧誘してみる?」

「まあ、普通はそうなんだが、俺もお前もギルドでの評判はあまりよろしくないからなぁ……」


悲しいことに、俺は引きこもりの例のあの人状態、アリサは仲間殺しとして悪名を轟かせてしまっているのである。


「というか、できれば賢者は勧誘したくない」


 ワガママを言っている場合ではないのだが、賢者という単語を聞くだけで、あの人のことを思い出し悶え死にそうになるのだ。


「賢者? 私の話かな?」



 後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。

 というか忘れたくても、忘れられない声が聞こえた。

 そう、俺が異世界でいきなり恋に落ちたあの賢者さんである。


「違うよ。回復する人の話だよ!」


 アリサが応対したが、俺は緊張して声が出ない。


「へえ、そうなの! あなたはハヤトくんの仲間かな?」

「うん! そうだよ!」


 賢者さんが、こちらの顔を覗き込む。

 やめてほしい、不用意に童貞を刺激するのは。


「よかったー! 心配してたんだ、私達のパーティを抜けてから、ずっと引きこもってるって聞いて心配で心配で。3人であなたの新しい仲間を探したりもしたんだよー」


 あのパーティを抜けた日のことが、頭の中でぐるぐると駆け巡る。

 羞恥で俺は手を握りしめ、黙っていることしか出来ない。

 代わりにアリサが会話を続ける。


「私達、今、回復専門の仕事の人を探してるんだ!」


 すると、賢者さんが少し困った顔をした後、ためらいながら喋り出した。


「私の先輩にね、1人ヒーラーでパーティ募集してる人がいるんだけど……。ただ、性格に少し問題のある人で……」


_______________________________



 結果的に、俺達はその人に会いに行くことになった。

 俺達自体そもそも、割と性格に問題があるので、多少は目をつむろうということになったのだ。

 俺個人としては、聖人のような賢者さんを持ってしても、性格に問題があると言わしめる、その先輩とやらに純粋に興味が湧いていた。



 賢者さんに教えて貰った通り、街を行くとその先輩の家はあった。

 俺達の家ほどではないにしても中々大きな家だった。


 コンコン。


 恐る恐る俺がノックをすると、扉が開かれた。

 すると中から、中学生いや、小学生くらいの可愛らしい女の子が出てきたのだ。

 どうやら、家族で暮らしているらしい。


「お姉さんは今いらっしゃる?」


 と俺がたずねると、少女はにっこり笑って


「姉はいませんよ」


 と返してきた。

 参ったな。

 家に居てもらうように、賢者さんに連絡して貰ったのに……。


「いつ頃、帰ってくるか、わかる?」

「だから、姉はいませんってば!」


 話が通じていないみたいだ。

 困ったな。


「ねえ、もしかしてこの人が賢者さんの紹介してくれた人なんじゃない?」


 突然、アリサがバカみたいなことを言い出した。

 前々からバカだとは思っていたが、まさかここまでとは……。

 明日、病院にでも連れていってやろう……。


「何言ってんだ、お前! こんな小さい子が賢者さんの先輩なわけないだろ!」


 すると女の子が怒りながら、アリサを指差し、


「その子のいう通りなんですけど!」


 と叫んだ。


「いやいや、お嬢ちゃん! 大人をからかっちゃいけないよ」


 俺が呆れたようになだめると、突然女の子が服の胸元を開いたのだ。


「駄目だよ! 嘘がバレたからって、自暴自棄になったら! ここ大通りの目の前だからね!」

「違います! これをよく見てください! この紋章を!」


 目を背けた俺が、再び顔を真っ赤にした女の子の方を見る。

 彼女の胸元には、白魔術士のみに刻印される白の紋章があったのだ。

 どうやら、異世界にはロリの姿をしたお姉さんがいるらしい。


_______________________________



「本当に申し訳ございませんでした!」


 俺は誠心誠意の土下座をしていた。


「もっと、謝ってください! 私に公衆の面前で醜態を晒させたことを、もっと謝ってください!」


 どうやら、大分お怒りのご様子らしい。

 でも、よく考えたら、服を勝手に脱ぎ始めたのはあなたですよね。

 なんて、言いたいのを俺はグッとこらえた。

 ここで、それを言ったら、パーティに入ってくれなくなる可能性が高い。

 というか、俺は年齢を勘違いしたことを怒っているのか、と思ったが……。

 

 

 すると突然アリサが口を開いた。


「でも、突然服を脱ぎ始めたのってあなただよね! 家の中で脱ぐことも可能だったのに……。」


 バカ! お前は本物のバカなのか! なんのために、俺が土下座していると思ってんだ!


「まあ、確かにそれは一理ありますね。もう、頭をあげていいですよ。変態」


 どうやら、許してくれるらしい。

 アリサのおかげなのか……!? いや、違うな……。


 頭をあげると、何かふんわりしたものが頭にかかった。


 なんだこれ? 布か? なんでこんなところに?


 俺が頭を動かすと、突然視界が開けた。

 真上にはなんと、赤面した白魔術士さんが……!

 どうやら白魔術士さんのミニスカートに俺は頭を突っ込んでいたらしい。

 




 そして、俺は再び3時間ほど土下座をした。

 まだ名前すら聞いてないなーなんて考えながら。



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