第9話 四天王は三番目くらいが一番強い
「……の……てください……」
誰かに呼ばれている。
もう少し寝ていたい……。
「……起きてください」
誰だろう? 聞き覚えのない声が聞こえる。
「……あと……五分……」
俺は気づくと、呟いていた。
「お願いですから、起きてください!」
激しく揺さぶられた。
「……うーん」
俺は眠い目をこすり、起き上がろうと―――
ゴンッ
思いっきり、誰かと頭をぶつけた。
「……痛っ」
俺は今度はぶつけて痛む頭をさすりながら、ぶつけた相手を探した。
「す、すみません! 大丈夫ですか?」
そこには紫色の髪のとんでもない美少女がいた。
紫色の髪は透き通るように綺麗で見ているものを魅了し、顔は利発さを感じさせる一方で、どこか幼さを残していた。
力を込めたら、折れてしまいそうな身体は儚さを醸し出している。
黒のミニスカートに白シャツその上に、髪の色と同じ紫色のマントを羽織っていた。
おそらく、他のパーティの訓練生だろう。
「……どうしました?」
少女が困った顔をしてこちらにたずねてきた。
あまりの可愛さに見惚れいて、俺はぼーっとしていた。
「……あっ! いや、なんでもない! 俺の方こそ突然、立ち上がって、すまん。そっちは大丈夫か?」
俺の心配の言葉に、少女はゆっくりと微笑んだ。
「はい! 大丈夫です!」
元気の良い返事が返ってきたので、俺は安心した。
「それでなんで、俺を起こそうとしてたんだ? 自分のパーティはどうしたんだ?」
この少女と接点なんてなかった気がする。
そもそも、この少女は今まで見た記憶がない。
「……パーティ?」
少女は首を首をかしげる。
というか、俺はなんでこんなところで寝ていたんだっけ?
俺が寝ていたのは山を下りてすぐの運動場の木陰だった。
ああ、思い出した。
うさぎ跳びさせられたんだった。
朝になってやっと着いて、それで――――――――
「今、何時だ!?」
まずいまずいまずいまずいまずい。
講義はとっくに始まっているはずだ。
また、走らされる。
俺は焦って周囲を見た。
が、アリサもエリもルナも起きていた。
三人ともまだ眠いのかぼーっとしている。
というか、アリサに至っては、立ったまま寝ている。
「何、やってんだ!? 急いで、講義行かないと……」
「ハヤトこそ、なに言ってるんだい? もう講義はないよ」
「へ?」
ルナの言葉が理解できない。
ついに退学か……。
俺は絶望した。
これからどうなるんだ……。
おそらく、冒険者は続けられないだろう。
こんな形で退学になったら、ギルドからは追放だ。
とりあえず、アルワークには帰れないな。
期待の新人として送り出されたのに退学になったりして、帰れるわけないだろう。
とりあえず、他の街に行って、畑でも耕そうかな。
前にやってたバイトである程度、農業のことを教えてもらったし。
晴れの日は外で畑を耕し、雨の日は読書でもして平穏に過ごそう。
そしたら、危険なモンスターとも戦わず、理不尽な理由で走らされることもなく――――
「あれっ。冒険者、やめたほうが幸せになれるのか……」
「退学になったわけじゃないからな」
エリが俺の考えていることを察したようだ。
思わず、現実逃避してしまった。
「じゃあ、何なんだ?」
「今日から個別訓練ですよ。パーティごとに教官を一人ついて個別で訓練するんです」
俺の質問に少女が答えてくれた。
というか、この少女は自分のパーティに戻らなくて大丈夫なのだろうか?
少女の言う通りなら、尚更、ここにいてはいけない気がする。
「起こしてくれて、凄い助かったんだけど……あんたも自分のパーティに戻ったほうがいいんじゃないか? 厳しい教官とかだったら走らされるよ」
俺の言葉を聞いた少女は不意に立ち上がった。
自分のパーティに戻るようだ。
と、思ったが、少女はこの場を動かず、高らかに宣言した。
「挨拶が遅れました。初めまして! 私はレオナ・ヴァイオレットカード。あなた達のパーティを任された教官です! レオナと呼んでください!」
そう言うと、少女は頭を下げた。
本当だろか? どう見ても俺と同じくらいの年齢か、もしくはそれ以下にしか見えない。
こんな年端もいかない子が俺達の教官ということがあるのだろうか。
いや、ありえるか……。
思えば、エリと初めて出会った時もそんなことを思って、失敗した気がする。
前の世界での常識はこの世界では通じない。
俺がそんなことを考えていると、エリが言った。
「ねえ。お前、さっきから舐めてんの? どう見ても、お前、私より年下じゃん。なのに教官とか……舐めてんじゃねーぞ!」
いや、俺の目にはどう見ても、エリの方が年下に見えるのだが……。
「あの……この人、説得してもらえませんか? さっきから、全然、私のこと信じてくれないんです。教官である証を見せても、全然、信用してくれなくて……」
レオナが困った顔をしている。
エリは恥ずかしくないのだろうか?
自分より年下の少女を困らせて。
「エリ。お前、証明書まで見せてもらったんだろ。なにが納得いかないんだ?」
「いや、だってさ、意味わかんないじゃん。こいつ、どう見ても、私より年下じゃん。そんなやつに教えを乞うとか、マジ勘弁じゃん」
じゃんじゃん、うるせーな、こいつ。
ラッパーかよ。
そんな俺の思いを察したのか、エリがむすっとした顔でにらんできた。
「おい、ハヤト。何だその目は? 舐めてんの? 最近、お前、私のこと、凄く舐め腐ってるよな。分かるんだぞ! そういうの!」
「いや、分かってないだろ。俺、エリのことは大分前から舐め腐ってるよ」
「お前、殺す!」
エリが掴みかかってきた。
俺も抵抗する。もつれあいになった。
「ちょっと、二人ともみっともないから、やめて!」
ルナがエリの両肩を腕で挟んで、俺から引き離した。
エリは必死に抵抗しているが、体格差というやつだろう。
ルナのアームロックから逃げられる様子はない。
「いや、なんかすまん。こいつ、こういう奴なんだ。自分がパーティで一番年下なのに、最年長だと勘違いしてる、ちょっとかわいそうな子なんだ……仲良くしてやってくれ!」
「お前、ぶっ殺す!」
エリが暴れだした。
せっかく、レオナに紹介してやったのに、感謝してほしいくらいである。
「……は、はあ」
レオナが困ったような顔をしていた。
当然か……。
「……ふっふっふ。いいこと考えた」
ルナに押さえ込まれたエリが笑い出だした。
なんだ、こいつ……。
どうせロクなことではない気がする。
が、話が進まないので、聞いてやることにした。
「何をだ?」
「お前、レオナとか言ったな……今から、お前がこのパーティにふさわしいかテストしてやる!」
一体、何様のつもりなのだろうか?
「こいつの言うことは気にしなくていいよ。さっきも言ったけどちょっと頭のかわいそうな子だから……」
俺はレオナに向かって言った。
「てめえ! ハヤト! いい加減にしろよ! そろそろ、痛い目、見させてやるからな!」
「へいへい」
エリはまだ何かを喚いていたが、俺はレオナの方を見て言った。
「いや、うん。なんか色々ごたごたしちゃったけど指導頼むわ。これから、よろしく」
だが、レオナは俺の方を向かず、エリの方を見て言った。
「……分かりました! そのテスト、受けます!」
「は?」
困惑する俺に対して、エリは満足げな表情をした。
「うん、よく言った。第一関門突破だ! 少しでもためらうようなら、即失格のつもりだったんだが……おめでとう! とりあえず、100ポイントゲットだ!」
こいつ、調子乗りすぎだろ。
ていうか、100ポイントってなんだよ?
「ねえ、エリ。その100ポイントって何なの?」
ルナも疑問に思ったのか、エリにたずねた。
が、質問されたエリは不機嫌そうな顔して言った。
「はい。ルナ、マイナス100ポイント! ……空気読めよ。私への忠誠度ポイントに決まってんだろ!」
「えっ、そんなぁ……」
ルナが残念そうな顔をした。
いや、いらないだろ。そんなゴミポイント。
「ていうか、本気なのか? どうせロクなテストじゃないぞ」
俺はレオナに向かって言った。
レオナは俺の方を見て、ニコッと微笑んだ。
「お気遣いありがとうございます。でも、良いんです! このまま、認めてもらわないまま、指導しても受け入れてもらえないと思うので」
「……そうか」
まあ、本人がいいなら、いいか……。
しかし、何というか、今まで見たことがないタイプだな。
真面目というか、ひたむきというか。
普通こんな申し出、却下すると思うのだが……。
「じゃあ、よし! 試験の内容を決めた! 私達、四人と一人ずつ、勝負しろ。それで一人にでも勝てたら、お前を私達の教官として認めてやる」
「はい!」
「いい返事だ! じゃあ、ついて来い!」
エリが歩き始めた。
ルナがそれに付いて行く。
「って、アリサ、起きろ! いつまで、寝てんだ!」
アリサは寝ていた。立ったまま。
体を揺するが、一向に起きる気配がない。
「ったく。しょうがねえな……」
このまま、置いていくわけにはいかないので、アリサをおぶって行くことにした。
アリサをの体の前に自分の体を持ってきて、アリサを持ち上げた。
「じゃあ、行くか」
レオナに言う。
「はい。しかし、どこに行くんですか?」
「……いや、俺にも分からん」
これから、なにが始まるのだろう?
_______________________________
エリは訓練場を出て、街の方に向かった。
どこに行くのだろう?
俺がそんなことを思っていると、エリが突然立ち止まった。
「よし! 着いた!」
エリが立っている前には、おもちゃ屋があった。
「は?」
いやいや。まさか、おもちゃ屋で対決したりしないだろう。
……しないよな? 路地が広くて人通りが少ないから、おもちゃ屋の前で決闘するんだよな?
が、エリはおもちゃ屋にずかずか入って行った。
「一体、どんなテストが始まるんですか?」
レイナが俺に緊張した面持ちで聞いてきた。
「……さあ。一つだけ、確かなのは酷いテストってことくらいかな……」
「酷いテスト……」
レイナが顔をこわばらせた。
いや、そんな緊張することはない思う。だって、おもちゃ屋だし……。
まあ、とりあえず入るか。
おもちゃ屋の扉を開けた。
「エリお姉ちゃん! 来てくれたの!?」
「ほら、早くこっち座って!」
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! お菓子は! ねえ、お菓子は!」
「エリさん、今日はどうしたの?」
おもちゃ屋に入ると、エリが子供達に囲まれていた。
「はっはっはっは! お前ら、元気にしてたか?」
エリがそう言うと、ポケットから大量のお菓子を―――
「って、お前! その菓子、どうしたんだよ!」
エリが子供達にお菓子を配っているのを見て、疑問に思った。
俺達はパン一つまともに買う金すらないのだ。
どっから、その菓子を買う金が出てきたのだろう?
「……いや、その……」
エリが気まずそうな顔をしている。
「そんなことより、お姉ちゃん! 今日はどうしたの?」
俺の質問を無視してエリは子供達の質問に答えた。
「ああ、よく聞いてくれた! 今日は新しい私の下僕の試験をしに来たんだ!」
果たして、下僕とは誰のことか……。
「ここに来たってことはロイドで試験するのかい?」
ルナがエリにたずねた。
「よく分かってんじゃねーか! そうだ! レオナ、一戦目は私とこれで対決してもらう!」
そう言ったエリの指差した方にはチェス盤くらいのサイズの広さの台があった。
「……」
全く話が読めない。
俺が一切状況を理解できずに困っていると、ルナがちょんちょんと俺の腕をつついてきた。
「今、僕達の話していることが分からないって顔をしてるね。このルナ先生がハヤトに特別指導してあげようか?」
「……うわぁ。うぜえ」
「ひ、ひどい!」
どうやら心の声が漏れたらしい。
とは言え、状況説明は欲しかったので、話を聞くことにした。
「それでどういう状況なんだ?」
「よくぞ、聞いてくれたね! じゃあ、この世界のおもちゃ屋の経営から説明するね!」
相変わらず、切り替えだけは早いんだな……。
よっぽど、俺に解説したかったようだ。
「この世界ではね、おもちゃ屋は僕達の世界のゲームセンターのような働きもしているんだ」
「どういうことだ?」
「玩具を買うにはそれなりにお金がかかるんだよ。意外なことに魔法のおかげでこの世界の玩具は異常な発展を遂げているんだ」
それは知っていた。
前にエリと引きこもってゲームをしていたから、なんとなく分かる。
日本でゲーム三昧の生活を送っていた俺ですら、面白いと思えるほどこの世界のゲームは発展していた。
「だからね。普通の家庭の子は高価過ぎて買えないんだよ。じゃあ、どうすると思う?」
「ゲーセンってことは……もしかして、ゲームを売るだけじゃなくて、安い値段でゲームを店内でプレーできるようにしてるのか?」
「ご名答! 子供達のお小遣いでもプレーできるように安い値段で店内で貸し出しされてるんだ」
そう言われると、確かにゲーセンと変わらない気がする。
というか、この世界のゲームは他の文化に比べて発展しすぎなのだ。
明らかにオーバーテクノロジーだ。
もっと他に発展させるべきものはなかったのか?
一般の子供が買えないのは完全に本末転倒な気がする。
「で、その話から考えると、エリはゲーセンのロイドっていうゲームで試験しようとしているってことか?」
「うん!」
ルナが元気良く答えてくれた。
「舐めてんの? あいつ」
俺が呆れた顔で言うと、ゲームの準備をしていたエリが切れた。
「ロイドは遊びじゃねえんだよ!!」
「ハヤト、エリは本気なんだよ」
「本気?」
こいつら、何なんだろう?
「エリはね、ひたすら暇な時間はここに通い詰めていたんだ。子供達に紛れて、ひたすらロイドの特訓に励んでたんだよ。そのうち、気づくと、ここにいる子供の誰にも負けない強さを手に入れていたんだ!」
つまり、成人した女性が子供相手にゲームで無双していたってことか……。
エリが幼い少女の姿をしていなかったら、軽い事案ものである。
「というか、何でお前がそんなこと知ってんだ?」
「僕はエリがいつも、講義をサボってるのをお菓子で口止めされてたから……あっ」
「おい、バカ!」
エリが叫んだ。
だが、もう遅い。俺は全てを知ってしまった。
「バカはお前だよ。エリ。お前には聞きたいことが沢山あるんだが……」
「うるさいぞ! 今は真剣な試験の中だ! 文句があるなら、後で聞く!」
「いいや、お前のことはそろそろ痛い目を見せないと、思ってたんだ。もう一回、俺のデバフの餌食になるか?」
金がないのにどこからゲームをやる金やら、菓子を買う金が出たのだろう?
「ふふっ」
俺とエリのやり取りを聞いていたレオナが笑った。
「……どうしたんだ?」
講義をサボった奴が目の前にいるのに、罰さなくていいのだろうか?
というか、罰してほしい。徹底的に。
「いえ、すみません。最近はあんまり見ないタイプの冒険者だなって思って……。こんな、ちゃらんぽらんな人達は初めてで……ふふっ」
……楽しんでいただけているようで、何よりです。
果たして、褒められているのか、けなされているのか。
レオナはちょっと変な子なのかもしれない。
「おい、やるぞ! 一戦目はロイドだ! ルールも操作方法も分からないと思うけど、多分、やってたら分かるから! 早速やろう! 勝てないと思うけど、気は落とすな! 私以外に3人いるから!」
「はい。分かりました」
要約すると、自分の凄さを見せるために相手がやったことなさそうなゲームで一方的にボコろうということか。
レオナは見るからに、ゲームなんてしたことなさそうだし……。
この年で教官をやっている時点でおそらく相当のエリートだろうし、そんな暇はないだろう。
「はっはっは! 殺戮ショーの始まりだ!」
エリの掛け声に子供達が歓声を上げた。
「じゃあ、ゲームスタート!」
ルナが高らかに宣言した。
_______________________________
「いや、違うじゃん。別に私、負けたわけじゃない。油断してただけだし……ていうか、私の持ちキャラじゃなかったし……。ていうか、さあ、冒険者なのにゲームで試験するとか、おかしい。うん、おかしい。無効だよ。無効。ノーカンだから、これは……」
ロイドと呼ばれたゲームは格ゲーのような感じだった。
台の上にチェスの駒くらいのサイズの人形を載せて、コントローラーを使って操作する。
人形は冒険者の職業で割り当てられており、持ち技が違うようらしい。
結果はエリの惨敗だった。
コンボを決められた挙句、反撃の隙も与えられないほどの先読みをされていた。
なんか、見ているこっちが可哀想だった。
というか、なんでレオナはこんなに強いのだろう。
俺はレオナの人物像が分からない。
「うわあ、お姉ちゃん、凄い!」
「エリお姉さんに勝っちゃうなんて……天才だあ!」
「オレにもさっきのコンボ教えてよ!」
さっきまで、エリを囲んでいた子供達は皆、レオナの方に群がっている。
菓子で餌付けまでしたみたいなのに……子供って残酷だな。
子供の世界では弱者に人権はないらしい。
「しかし、やったことあったのか? どう見ても、素人の技じゃなかったけど……」
俺の疑問にレオナは頬をポリポリかいて、答えた。
「実を言うと、このゲームを作ったのは私の古い知り合いなんです」
「……ずるじゃん。そんなの」
レオナの言葉を聞いたエリが負けたショックで膝をついたまま、呟いた。
一体、どの口が言うのだろうか?
しかし、なんか惨めというか哀れだ……。
ゲームに負けた挙句、餌付けした子供達の人気も一気に持ってかれている。
「っていうか、試験はこれで終わりだな。レオナが一勝でもしたら勝ちなんだろ」
「えっ! そんなぁ……僕、決め台詞まで用意してたのに!」
ルナが残念そうな顔をした。
決め台詞を考えているような、恥かしい事実を公言しないでいただきたい。
「私は別にいいですよ。皆さんのことも知りたいと思っていたので……エリさんの言う通りノーカンでも良いですし。全員に納得してもらわないと意味ないですから!」
教官なので言うことを聞くように強制しても良いはずなのだが……。
何というか、よりレオナのことが分からなくなってきた。
「はっはっは! レオナは分かってるね! じゃあ、始めよう!」
どうやら、ルナはやる気だけはあるようだ。
「で、何やるんだ?」
「消しピンだよ!」
「意味わかんねえよ!」
エリといい、ルナといい冒険者やめたほうがいいんじゃないか?
そもそもよく考えたら、このパーティに冒険者が向いてる奴がいない……。
「……えっ。ハヤト、分かんない? 消しゴム飛ばしって言ったほうがよかったかな?」
「そういう問題じゃねえよ!」
消しピンとは机もしくは、台の上で消しゴムを順番に指ではじいて、ぶつけ合うことでどちらが先に相手の消しゴムを落とすかを競い合う小学生に大人気のゲームである。
「いや、ハヤト、安心して。僕の考えた消しピンはただの消しピンじゃないから! はじく前に消しゴムを魔法で強化するんだ!」
「魔法を使うだけましか……」
とりあえず、さっきのエリのただゲームをするよりかは冒険者っぽい。
「ふふっ。やつは我がパーティでも最弱! 果たしてこの僕に勝てるかな!」
ポーズを決めて、ルナが叫んだ。
決め台詞とはこれのことだろうか?
明らかに今からやられる奴のセリフなのだが……。
「お前、ぶっ殺す!」
エリがぶち切れたのは言うまでもなかった。




