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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第2話 一歩目は……!


「ここが異世界か……」


 目を覚ますと、俺は草原の上に立っていた。

 花は咲き誇り、草が生い茂ったそこは、俺の始まりの場所にふさわしい場所だった。

 見渡すと、壁に覆われた街が見えた。

 地図で確認すると、案の定、天使様の言っていた街のようであることが形から分かった。


 異世界転生に成功したようだ。

 ちなみに、転生と言っても、肉体と記憶は引き継ぎである。

 別に俺は産まれたところからやり直しても良かった。

 俺の容姿は全体的に地味である。

 身体は引きこもりの弊害か、やせ細っており身長は平均より若干高い程度だ。

 顔は普通だが、長年の夜ふかし生活のせいか目の下にはクマが出来ている。

 

 というか、どうせなら金髪爽やかイケメンでやり直したかった。

 が、そうは問屋がおろさないらしい。

 天使様によると、記憶の引き継ぎには肉体の引き継ぎが必須。

 よって、しぶしぶ肉体も引き継いだのだった。


「とりあえず、街の方へ行くか……」


 俺はこうして異世界での第一歩を踏み出し―――





 その時、背後に何かが忍び寄る気配を感じた。


「―――誰だ!」


 咄嗟に振り返ると、そこには球体のモンスター?がいた。

 サイズは50センチくらいで、肉団子みたいな体に目と口のみがついている。

 こんな動物は見たことがない。

 おそらく、モンスターなのだろう。


 俺は構える。見た目からして雑魚モンスターっぽい。

 いきなり、戦闘か……。

 俺が戦闘態勢に入ると、モンスターの方を睨みつけてきた。

 どうやら、あちらも戦闘態勢に入ったようだ。

 

 まあ、俺には天使様から授かった最強に近いデバフ魔法がある。

 正直、こんな相手は余裕で倒せるだろう。

 魔王討伐の準備運動にすらならない。


 とりあえず、魔法を使ってみよう―――と思った瞬間だった。

 俺の頭にデバフ魔法の使い方が流れ込んできた。

 呪文を唱えると、紫の光線が手から出る。それを対象に当てることで成功らしい。

 操作するステータスの選択は詠唱する呪文によって変わるようだ。


「―――汝の壁、崩壊せよ!」


 モンスターに右手を向けて、呪文を唱えた。

 すると、手から紫色の光線が発射された。

 その光はモンスターに向かって、真っ直ぐ飛んでいき直撃した。

 これで防御0になったはずだ。


 防御0といういことは、ちょっと攻撃するだけで、相手を倒せるはずだ。

 右足をモンスターのいる方へ踏み込む。

 腕を引き―――思いっきり、右ストレートを放った。


 これでチェックメイトだ!





 ところがどっこい、俺の右ストレートは放ってる俺自身にも分かるほどのろかった。

 まあ、当たり前か! 引きこもりだったもんな!

 当然のようにモンスターは俺の攻撃をよけ、体当たりしてきた。

 攻撃態勢に入っていたためか、受け身を取ることができず、俺はもろに攻撃を喰らった。


「―――ぐはっ」


 倒れこんだ。体全身に激痛が走った。

 あばらが2、3本逝ったかな?

 うん! すげえ、痛い。こりゃ、立てねえわ!

 というか、心臓付近に喰らったせいか、何か心臓とか肺がヤバい気がする。


「ゴホッゴホッ!」


 咳き込む。無意識に手で口を抑え、恐る恐るその手を見ると―――





 血まみれだった。

 ああ、重傷ですねー。


「ぐああああああああああああっっ!!」


 声にならない叫びが草原に響き渡る。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタいいたいいたいいたいっ―――

 思考がぼやけてきた。視界も徐々に闇に染まっていくのが感じられる。


 俺は転げまわって、何とか意識を繋ぎ止めようとしたが、感覚も薄れ始めた。

 トラックに轢かれた時は瞬殺だったおかげで大した痛みは感じなかった。

 が、今は違う。

 死という存在がゆっくりと大きくなっている。

 怖い。マジ怖い。


「……し…にたく……ない」

 

 手を伸ばし、呟く。


「…だ…れか……」

 

 言葉を紡ぐ。


「……たすけ…て」


 次の瞬間、俺は意識を失った。


_______________________________



「―――はっ!」


 俺は再び目を覚ました。

 目の前には青い空が広がっていた。

 死んでいないらしい。


「何だ。夢か……」

「夢じゃないよ!」


 どうせならと二度寝にしゃれ込もうとしたところ、誰かに体を揺さぶられた。


「大丈夫? どこか悪くない?」


 声のする方を向く。

 そこには―――全身に修道服をまとった女性がこちらを覗き込むようにして、膝をついて座っていた。

 年は俺より若干高い19、20くらいだろうか。

美人と言っても差し支えないが、若干幼さを残しているせいか可愛いのほうがしっくりくる顔立ちである。

 体にまとった修道服はいかにもな感じだった。

 頭に被った帽子には十字架が刻まれ、それと同じ十字架が至る所に刺繍されている。

 役職はRPGによくいる僧侶とか、賢者だろうか?

 ということは―――



「もしかして、あなたが回復してくれたんですか?」


 女性はにこりと微笑む。


「そうだよ! たまたま、君が倒れているのを見かけてね!」

「ありがとうございます!」


 俺は頭を下げる。感謝してもしきれない。

 地獄に仏とはこのことだろう。

 まさか、雑魚モンスターに殺されるとは思わなかったが……んっ。ちょっと待て。




「俺のこと襲ったモンスターはどうなったんすか?」


 焦る。まだ、周囲にいるのだとした呑気におしゃべりしている場合ではない。


 俺の焦りと対象に、賢者さんは落ち着いた様子で斜め前を指差した。

 そこには、見るも無残なモンスターの亡骸が転がっていた。

 全身が真っ二つに割れて、血が流れている。


「こ、これは!?」


 誰がやったのだろうか?

 もしかして、この女性が……!?

 だが、その考えは間違いだったようだ。


「君への頭突きの反動でこうなったんだよ! もしかして、君のさっきの魔法のおかげかな?」


 そうか。防御0だもんな。攻撃なんてしたら、反動でこうなるわな。

 ていうか、結構グロイから自分がやったとは思いたくないんだが……。


 俺がそんなことを考えているのをよそに、女性が質問をしてくる。


「さっきの魔法は何? デバフ魔法? だとしても、モンスターが自分の攻撃の反動で倒れるレベルのデバフ魔法なんて初めて見たよ!」


 なんて答えよう? まさか、異世界転生して、天使様から授かった祝福とは言えない。

 そんなこと言ったら、頭のおかしい奴と思われる可能性が高い。


「さっきの魔法は先天的なものなんです。生まれた時から使えるというか……。呪文次第で対象のステータスを任意に0にできるデバフ魔法です……」


 大分苦しい答えだったが、こう答えるのが一番自然な気がしたのだ。


 が、女性は疑うことなく、無邪気な笑顔を浮かべた。


「すごいね! あっ、もしかして、冒険者志望!?」

「……はい。一応」


 即答できなかった。

 雑魚モンスターにやられかけたからな!

 この女性が俺が魔法を使うところから見ていたとしたら、結構な醜態を晒していることになる。


「じゃあ、私がギルドまで連れていってあげる! 私は賢者をやってるんだ! あっちの街にあるんだ!」


 やはり、この女性―――賢者さんはその温かい笑みを崩さなかった。

 そう言って賢者さんは俺の手をとり、歩きだした。

 賢者さんの手は温かかく柔らかく、透き通るような色をしていた。


 ドキッと、俺の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。


_______________________________



 賢者さんに連れられて、街へ入りギルドへ向かう。

 そう言えば、天使様には一番最初に新しい家に向かうように言われていた。

 まあ、いっか。予定はあくまで未定。

 賢者さんがギルドまで連れて行ってくれるのだから、素直に従おう。


 ギルドへ向かう途中、賢者さんと話ながら街の風景を観察した。

 どうやら、中世ヨーロッパに近い文化が形成されているようだ。

 行く人々の服装などはまさにテレビなどでよく見るそれだった。

 が、違う点もいくつかあった(実際に中世ヨーロッパに言ったことはないが……)。


 しばしば、奇妙―――現実ではあまり見ない奇妙な格好をした連中がいたのだ。

 三角帽子に黒のマントの女性。見たことない色をした鎧をまとった男。

 前の世界ではコスプレと呼ばれるような格好をした人々が当たり前のように往来を闊歩していた。

 周囲の一般的な服装の人々もそれに気にとめる様子もない。

 どうやら、本当にここは異世界のようだ。

 非現実が突然現実味を帯びてきた。


「街の様子、珍しい?」


 いつしか、見慣れない街の様子を眺めるのに夢中になっていたようだ。

 賢者さんが立ち止まり、俺の顔を覗き込んだ。


 突然覗き込まて、再び心臓が騒ぎだした。


「……はい。田舎から出てきたもので……」

「ふふっ。そうだ! ギルドへ行った後、色々案内してあげるよ!」


 そう言って、賢者さんはくるりと回った。

 賢者さんはの挙動一つ一つに何故か心臓が暴れる。

 これは何なのだろう……。


 俺がそれが一目惚れだと自覚するより前に、冒険者ギルドに着いたのだった。




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