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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第二章 異郷の地に行く……!
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第1話 新たなる旅立ち!

第2章の始まりです!

「フェアリーローザには、あとどんくらいで着くんだ?」


 俺は今、パーティメンバーと共に馬車に揺られている。

 

 馬車はガタゴトと音をたて、さっきからずっと進んでいるのだが、一向に着く気配がない。

 街の影すら見えてこない。

 俺にとって異世界生活初めての街、アルワークを出発してすでに二日が経過している。

 アルワークはとうに見えなくなり、同じような草原の光景が続いている。

 ここまでの遠出は初めてかもしれない。


「まだ、当分着かないと思うぞ」


 俺の問いにエリが答えてくれた。


「当分ってどのくらいだ?」

「あと三日くらいかな」

「えっ! まだそんなにかかるの!」


 俺より先にアリサが驚きの声をあげた。


「私、飽きたよ! 馬車乗るの!」


 アリサが体をジタバタさせて喚く。

 頼むから子供みたいなわがまま言わないで欲しい。

 あと三日もこの調子でいられたら、俺の気が滅入る。


「そんなに飽きたんなら、馬車から降りて逆立ちして歩いたらどうだ?」


 エリがニヤニヤしながら言う。

 多分、冗談のつもりなのだろう。


 だが、アリサは馬車から飛び降りた。


「お、おい!」


 俺とエリが窓から顔を出す。


「大丈夫だよ! 疲れたら、また乗るから!」


 アリサはそれはそれは綺麗な逆立ちをして、馬車の隣を歩いていた。

 マジで頭がおかしいらしい。

 

「ほっほっほ! 元気のよろしいことで!」


 御者のおじさんが屈託なく笑う。


「……す、すみません」


 俺は顔から火が出そうだった。


「いえ、私にも五歳になる娘がいましてね。恋しさが紛れていいですよ」


 なるほど! アリサの知能は五歳の子と大差なかったのか!

 

「うへっ。……酔った」


 俺が感心していると、ルナが顔を真っ青にして馬車にもたれかかりながら言う。


「大丈夫か? 吐くなよ」


 俺が牽制する。

 あと三日もこの馬車に乗るのにここで吐かれたら、たまったもんじゃない。


「ほれ! ドラッグモーション!」


 エリがルナに向かって魔法を使った。


「何したんだ?」

「酔い止め魔法だよ」


 エリの答えを受けて、ルナの方を見ると、さっきよりは顔色が良くなっている。

 というか、酔い止めの魔法なんてあるんだな……。


 それはさておき、


「……エリ」


 俺は感動した。

 エリにもまだ仲間を思いやる心が残っていたようだ。


「エリ。あ、ありがとう」


 ルナがエリに言う。


「いや、礼はいいんだ。そんなことより、これ頼むぞ」


 エリがルナに何やら紙を渡す。


 ……おい。まさか。

 俺はルナからその紙をひったくる。


 案の定だった。

 紙には請求書と書かれ、酔い止め一回500ルンと書かれてある。

 ルンはこの世界共通のお金の単位だ。

 つまり、エリは親切ではなく、金儲けのために酔い止め魔法を使ったようだ。


「おい。お前。まさか、仲間から金取るつもりじゃないだろうな」

「いや、取るよ。今はクエスト中じゃないんだ。それくらい当たり前だ」


 エリは当然のように言う。

 こいつ、やはりクズか……。


「はい。エリ」


 ルナが自分の財布袋を取り出し、エリに金を差し出す。


「バカ! お前、そんなことで金払うんじゃねえ」


 ルナの手を引っ込めさせる。


「おい! ハヤト! 私の商売の邪魔すんじゃねえ!」


 エリが突っかかってくる。


「……そうだなあ。今はクエスト中じゃあないし、もしモンスターと遭遇してもエリに金払ってもらわねえとなあ……。でも、金を取る義務もねえし、ほっとくか!」

「ごめんなさい。私が間違ってました」


 エリが即謝罪した。

 どうやら、モンスターと遭遇して、助けてもらえないのはさすがにまずいと思ったようだ。

 エリは基本一人じゃ戦えないからな。まあ、俺もだが……。


「賑やかで良いですなあ」


 御者のおじさんがまた笑った。


「騒がしくして、すみません」

「良いんですよ! 自分も楽しいですから」


 何ていい人なのだろう……。

 こんな頭のおかしい客を乗せて、このセリフは中々出てこないだろう。

 俺は優しい御者のおじさんの懐の広さに感服した。


「……日が暮れてきたな」


 俺は窓の外を見て、呟いた。

 外は日が沈み始め、空が茜色に染まっていくのが見える。

 どうやら、この旅の三日目が終わるようだ。


 どうして、俺達がこんな旅をしているのかというと、ギルドで呼び出しを受けた時まで遡る。


_______________________________



「ハヤトさんのパーティに王都から勅令の呼出しがかかってます」

「は?」


 受付のお姉さんの言葉に俺は動揺した。

 つ、遂に国家レベルの問題を起こしたか……。

 俺は奥のテーブルで待っている三人を見る。

 あー。何かやらかした気がする。


「……さ、晒し首ですか?」

「え? 何を言ってるんですか?」


 お姉さんが怪訝な顔をする。

 違うのか? じゃあ、何だろう?


「次世代魔王討伐軍育成会の呼出しです」

「ま、まおう?」


 理解できない俺にお姉さんは説明を続ける。


「各ギルドから一パーティずつ次世代のホープを集め、育成して、魔王討伐を現実にしようという国家の試みです」

「ほ、ほーぷ? いや、何で俺達が……」

「何をおっしゃるんですか? あなた方以外のいらっしゃらないと思いますが……これまでの活躍を忘れたんですか?」


 ああ、そういうことね……。

 ギルドでの評判はこれまでの虚偽の活躍で高いんだった。

 いや、それでもおかしい。


「アルトさんのパーティはどうしたんですか?」


 俺達は活躍した(ことになっている)とは言っても、最近だけだ。

 ずっと、ギルドに貢献しているアルト達のパーティの方が適任ではないだろうか。


「彼らは教官側で徴集されました」

「……なるほど」


 アルト達は現ホープというわけだ。

 次世代の育成にはうってつけの教官だろう。


 納得したところで、


「あの……今回は辞退させてもらいます」


 と言い、断った。

 行っても、恥を晒すだけな気がする。

 本当に活躍したわけではないわけだし、他のギルドのホープと同じ土俵に立てるはずがないのだ。


「無理ですよ。何言ってるんですか?」


 お姉さんは即答した。


「王都からの勅令です。断ったりしたら……最悪死刑ですよ」

「……えっ」


 真っ青になる俺にお姉さんは当然のように言う。


「当たり前じゃないですか。国王の勅令なんです。拒否権はありませんよ」


 ああ、そっか。忘れてたけど、ここ異世界なんだ。

 基本的王からの命令を断る権利とかないんだ……。

 選挙権? なにそれ? おいしいの? な世界なんだった。


 俺が現実の非情さに打ちひしがれていると、お姉さんが言う。


「では、説明に移らせてもらってもよろしいでしょうか?」

「……はい」


 俺は諦めることにした。

 恥をかくのは嫌だが、処刑されては元も子もない。


 そこからのお姉さんの説明によると、期間は三ヶ月。

 場所はアルワークからは遠いエンジェルローザ。周囲を山に囲まれた都市らしい。

 衣食住は準備されているので安心していいとのことだ。

 給与もきちんとあるらしい。

 そして、無事訓練を終えたあかつきには、国家直属の冒険者になれるらしい。


 思ったよりも、悪くないかもしれない。

 今のテント暮らしよりは多少はマシだろう。


 俺達は闇金に家を回収されてから、テント暮らしをしている。

 最初は戸惑うことも多かったが、もう慣れてしまった。

 ……慣れたくはなかった。


 まともに飯も食べていない。

 一刻も早く家を手に入れなければならない。

 なので、クエストに行っても、ほとんどが貯金行きだ。

 

 そう考えると、衣食住の保障されたこの訓練は結構良いものかもしれない。


 そこまで考えて、俺は行くことを決意した。


「説明ありがとうございます。じゃあ、明日にでも出発したいと思います」

「いってらっしゃい! 頑張ってください! ハヤトさん達はこのギルドの期待の星ですから!」


 お姉さんは笑顔で手を振ってくれた。


 戻って三人に話すと、喜んでいた。

 どうやら、ギルドから期待の新人として扱われていることが嬉しかったようだ。

 俺は今から不安しかないというのに、お気楽な連中である。


 次の日、早朝に馬車に乗り込み、エンジェルローザを後にした。

 馬車の代金は前もって支給されたいたので、ちゃんとした馬車に乗ることができた。


 こうして、俺達は翌日から新たな旅に出たのだった。


 

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