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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第25話 CONTINUEよりもNEW GEMEを!


「お久しぶりです。黒山ハヤトさん」


 目が覚めると神殿のような場所にいた。

 どうやら天界に戻ってきたようだ。

 俺の前には、天使様が笑顔で立っている。


「お、俺、下界に戻れますよねっ!?」


 俺は食い気味で天使様にたずねる。





「大丈夫ですよ。戻れます」


 天使様は笑顔を崩さず答えた。


「よ、良かったーーーー!」


 俺は安堵のあまり大の字で仰向けに寝転んだ。


「しかし、いつからあれを思いついたんですか?」

「えっと……HPデバフによる攻撃無効化のことですか?」

「はい」


 俺は思い出す。

 クレイジーボアと対峙した際に木に向かってHP0のデバフ魔法を使った時のことを。


「前に木に向かってデバフ魔法を放ったんです。そしたら、モンスターがつまずいて、折れたはずなのに後で見たら、俺がデバフ魔法をかける前と同じようにその木が立っていたんです。それを見て、いつか機会があったら、使ってみようかなって思ってたんです」


 俺のデバフ魔法は一定時間経つと自然に解除される仕組みなのだが、HPすなわち生命力を一旦0にして一定時間経つとデバフ魔法を受ける前の状態に戻るのだ。


 すなわち、HP0のデバフ魔法を使うと、一定時間、一切の攻撃を無効化できるのだ。


 俺はルナの黒色の光線がくる直前で自分自身にHP0のデバフ魔法を放ったのだ。


「しかし、無茶なことをしますね。ちょっと間違えたら、普通に死んでましたよ……」


 天使様が少し心配そうな顔をした。


「……はい。ごもっともです。すみません……」


 今回は自分でも大分無茶をしたと思う。

 マジでそんくらいヤバい相手だったのだ。ルーカスは。

 アホだったが……。


「いえ、責めているわけではないんです。正直、オークの王、ルーカスはそれくらいしないと勝てるような相手ではないですから……」


 俺は天使様の言葉でずっと気になっていたことを思い出した。


「あのルーカス自身も言っていたオークの王って言うのは何なんですか?」




「彼は元魔王城の幹部で多くのオークを統べるオークの王だったのです」

「マジですか……」


 オークの王というのは自称ではなかったらしい。


「彼は魔王城を追放され、配下失ったため、あのようにオークの巣の群れをだまして、再び力を取り戻そうとしたのでしょう。上級のモンスターにとっては、力を示すために配下は重要な存在ですから」

「あの……ルーカスって、オークの王って言う割には、全然オークっぽくなかったんですけど……」


 他のオークはでっぷりと太っていたのに対して、ルーカスは肌の色は緑色だったものの針金のように痩せていた。


「彼の生い立ちは少々複雑で……純正なオークではないのです。だから、他のオーク達からの信頼も薄く簡単に裏切られてしまったのでしょう」

「純正って何ですか?」

「彼は元はエルフだったのです」

「は?」


 驚いたが、そう考えると、納得いく点がある。

 あいつの異常な魔力だ。

 オークは基本、バランスよく能力が高い。

 身体能力も魔法もそこそこ使える。

 だが、あいつは身体能力は俺とほとんど差がない代わりに、魔力は異常だった。


「力を求めすぎたあまり、自ら魔物となる道を選んだのです。エルフとしてもオークとしても中途半端な彼は孤独でした。だから、エルフとハーフであるエリさんを目の敵にしていたんでしょうね」

「はあ……」


 どうやら、ルーカスにも生い立ちで色々あったようだ。

 あんな奴だが、単純な悪というわけではないのかもしれない。


 俺が考えていることを天使様は汲んだのか、忠告してきた。


「あまり、魔物の過去に深い入りしないほうがいいですよ。いざというときにとどめを刺せなくなります。というか、今回の事件の原因はあなた達にあるんで、倒して良かったと思いますけどね……」

「え?」


 天使様の突然の宣告に俺は動揺した。


「あそこまで、強大な魔物が冒険者ギルドの付近でのさばれていたのは、あなた達のパーティが既にオークの王を倒したことになっているからです」

「あっ……」


 俺は思い出した。

 エリとの初めての緊急クエストで倒したのはオークの王ということになっている。

 俺が気を失っている間にも、エリがそうギルドに報告したのだ。


「あのバカ! 絶対、いじめられてたから、自分が勝ったことにしたかっただけだろ! 帰ったら、説教してやる!」


 俺が意気込むと天使様が笑った。


「ふふっ。楽しそうで何よりですね」

「楽しくなんかないですよ! 今もあいつらが何かしでかしてないか、凄く不安なんですから!」

「ハヤトさんはツンデレですね。……あっ! そろそろ、お別れの時間ですね」

「え?」


 ツンデレを否定しようとした俺の足元が光り始めた。


「では、ハヤトさん。次に会うのは魔王を倒したときであるといいですね。いってらっしゃい」


 天使様が笑顔で手を振っていた。


 俺は再び意識を失った。


_______________________________



 目が覚めると、全身をなぜか小枝やら枯葉やらに覆われていた。

 俺が疑問に思っていると男の声が聞こえた。


「お嬢ちゃん達。悲しいの分かるが、離れるんだ……。蘇生魔法でもダメだったんだろ。だったら、みんなで送り出してやろうじゃないか。それとも、彼が天国に行けなくなってもいいのかい?」

 

 何だか、凄くうるさい泣き声やら叫び声が聞こえた後、急に体の周りが熱くなりはじめた。

 いや、これは……もしかして……やばい!

 早く起き上がらなくては! 火葬されてしまう!



「うわああああああああ!! 死人が立ったああああああああ!」


 俺が立ち上がるとそんな叫び声が聞こえた。

 俺の周囲には沢山の冒険者達がいた。

 皆、俺を見て驚いた顔をしている。


 足元を見ると、案の定、俺を覆っていて小枝やら葉が燃えていた。


「って! 熱ううううううううう!」


 俺は飛び出した。



「「「は、は、はやどーーーーーー!!!」」」


 すると、俺のところにアリサ、エリ、ルナの三人が飛び込んできた。

 三人とも声にならない叫び声を出し、発狂したように泣きながら俺に抱きついてくる。


「お、おい! 一旦、離れろ! 皆、見てんだろ!」


 周りの冒険者達はポカンとした顔でこちらを見ていたのも束の間、皆、発狂したように歓声をあげた。


「奇跡だあああああ! 奇跡が起きたぞおおおお!」

「良かった……。本当に良かったあああ!」

「英雄の復活だああああ!」

「我が輩の同胞に神の祝福だあああああ!」

「おい! マジかよ! 今夜は宴だああああ!」


 どうやら、俺の復活を皆、喜んでくれているようだ。

 なんだか妙に照れくさい……。


 俺は未だに泣き止まない自分のパーティメンバーを見る。


「はやとーーーーー! はやとーーーー! はやとーーーーーー!」


 アリサは俺の名前をひたすら連呼している。


「ばかっ! ばか! お前! 本当にばかっ!」


 エリはアホみたいな罵倒をしてくる。


「うああああああああん! あああああああ!!」」


 ルナに至っては言葉にすらならず泣き続けている。


 全く騒がしい奴らだ。





「……ありがとう」


 俺は誰にも聞こえないような小さな声でボソッと呟いた。


_______________________________



 宴が終わった後、知ったのだが、多くの冒険者達が集まっていたのはどうやら祠から多くのオークが突如現れたことにより、冒険者達が駆り出されたためらしい。


 冒険者達は祠の近くでオークを掃討した後、何やら大きな音のする祠に来たらしい。


 そこで死んでいる俺と三人が発見されたらしい。

 そして、あの状況に至るというわけだ。


 結局、俺達は以前倒したことになっているオークの巣の残党によって、作られた宗教団体の新たなオークの王を討伐したことになっているらしい(エリがまた噓の報告をしたのだろう)。


 ドリドドドドン教は怪しい宗教団体として、前から問題になっていたらしく、俺達はギルドから称賛された。


 そして、今。



「今日はどうすっか」


 俺達はギルドのクエストが張り出された提示板の前にいた。


 俺達はドリドドドドン教を壊滅させた報酬として、謹慎を解除されたのだ。

 そもそも、俺達が海でやったことは、ギルドから追放されてもおかしくなかったのだ。

 だが、今までの噓の活躍によって、ギルドの運営から温情を受けあの程度の罰で済んだらしい(全財産失ったが……)。

 つまり、海での出来事を除けば、比較的俺達のパーティの評価は高かったのだ。

 よって、今回のドリドドドドン教の壊滅は謹慎解除の決めの一手となったようだ。


 とはいえ、金はない。

 俺達は高額の報酬を求め、日々、危険なクエストに臨まなければならなかった。


「これなんていいんじゃない?」


 アリサが示したクエストはレッドゴブリン20体の討伐だった。


「却下」

「えー! 何で?」


 こいつ、自分の初めてのクエストのことを忘れてしまったのだろうか。

 本当にアリサの頭が心配だ……。


「じゃあ! これなんてどうだい?」


 ルナが示したクエストは人喰いアリの討伐だった。


「おっ! 結構、高額じゃねえか! これにしようぜ!」


 ルナにしてはまともな提案だと思ったのだが、エリが叫び始めた。


「む、虫! 嫌だ! 絶対に嫌だ!」

「えっ! エリ、虫苦手だったの……。そうとも知らず私……」


 ルナが泣きそうになる。

 うわぁ……。めんどくせぇ。


「やっぱり、今日は帰らないか?」

「却下」


 エリの提案に俺は即答した。


 やっぱり、どいつもこいつもどうしようもねえ……。


「黒山ハヤトさんの一行はカウンターまでお越しください!!」


 俺達が提示板の前で揉めていると、突然、呼び出しを受けた。


 また、何かやらかしたのだろうか?


 俺は三人に疑いの目線を向ける。

 三人とも首を必死に横に振る。

 必死なのが逆に怪しい。


「はあ……」


 俺はため息をつき、カウンターに向かった。


 もうどうとでもなれ。


 どうやら、俺のカッコ悪い異世界生活はまだまだ続くようだ……。




第一章完結です。

ここまで、読んでくださった皆さん、ありがとうございます!

第二章も話の構想は考えてあるので、今までと同じペースで投稿していきたいと思います。

これからもよろしくお願いします!

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