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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第24話 全員集えば天下無敵の最強パーティ!!

「いや、その何だ……」


 自ら正体を明かしたバカなオークの王を前にして、気まずさのようなものを俺は感じていた。

 自称オークの王の方も緑色の顔を赤面させて、下を向いている。

 信者達はなぜか正体を見ても驚いている様子はない。

 もしかして、こいつら正体を知って信仰してたのか?

 どちらにせよ、信者達も気まずそうに黙っている。

 

「我が名はルシファー! 天界より追放されし悪魔だ!」


 気まずさに耐えかねたのか、オークの王が名乗った。


「って、お前、ルシファーなのか!!」


 俺は戦慄が走る。

 ルシファーと言えば、悪魔最強としても名高い堕天使ではないか……! 

 そんなすごい奴に喧嘩を売ったなんて、もうお終いだ!

 俺は絶望で頭から血の気が引く感じがした。




 その時だった。

 エリが突然、思い出したように言った。


「いや、お前、ルーカスだろ」

「は?」


 周囲の信者も含め、エリの意味不明な言動にポカンとしている。


「ルーカスだよな! そうだよな!」


 エリがもう何のかよく分からない魔物に向かって言う。


「いや、違う。我はるし「いや、お前、泣き虫ルーカスだろ!」


 必死に否定しようとするルーカスにエリが畳み掛ける。


「ぷっ! 何がルシファーだよ! 笑わせんなよ! あはははっははは!」

「どういうことだ?」


 状況を読めない周囲の人間を代表して俺がエリにたずねた。


「どういうことも何も! こいつは魔王城で魔王に叱られまくって、いつも泣いてたルーカスなんだよ! それがルシファーとか! 傑作だわ!」


 どうやら、エリは魔王城でルーカスのことを知っているようだ。

 ルーカスはというと、顔を真っ赤にして下を向いている。

 まるで新しい学校で知り合いが居ないからと噓ぶいていたところ、前の学校の生徒にその姿見られた学生のようだった。


「……やめてやれよ。可哀想だろ……」


 流石に魔物と言えど同情した。


「いや、ハヤト! こいつはクズ野郎だ!」

「というと?」

「いつも、私をいじめて、泣かせるから魔王にキレられてた!」


 自信満々に言うエリだった。

 というか、お前も泣き虫じゃねえか……。


「ちょっと待って」


 ルナが話に入ってきた。


「エリが魔王城とか、何の話してるのか分かんないだけど……」

「私も!」


 アリサも同調する。

 そう言えば、エリの素性について教えてなかったな。

 どう説明すっか……。


 俺が悩んでいるとエリが言った。


「私はかつて魔王城でスパイをしてたんだ……。ごめんな。二人は巻き込みたくなかったんだ」


 エリが影のある感じで言う。

 嘘つけ! お前! そんな格好良い理由じゃねえだろ!


「そうだったんだね。エリ! 話してくれて、ありがとう!」

「僕達はもとより狂った因果の上にあるんだ! それくらいの闇を共に背負う覚悟はとうに出来ている!」


 どうやら、二人は納得したらしい。

 エリはうんうんと頷いている。

 これで良かったのか?

 まあ、当人が満足しているならいいか……。


「じゃあ、いじめられてた復讐にルーカスの恥かしい過去を暴露しまーーーす!!」


 エリが周囲にいる全員に大きな声で宣言する。

 こいつ、周囲に味方がいるからって……。


「こいつはあ! 魔王にキレられてビビッて……」

「お前、まさか、あれを言う気じゃないだろうなあ!! やめろぉ! それだけはやめてくれーーー!」


 憐れなるルーカスはエリの口を急いでふさごうとしたが、一足遅かった。


「小便ちびって、魔王城を追放されたんだよーーーーーーー!!」


 場が一瞬で静まり返った。

 何という公開処刑だろう……。


 ルーカスは緑色の顔を真っ青にしている。


 その時だった。

 周りにいた信者達が怒り始めたのだ。


「おい! 話が違うじゃねえか!」

「ルーカスってなんだよ!」

「何が魔王城の堕天使ルシファーだよ!」

「わざわざ俺達は巣を出て来たんだぞ!」

「皆、帰ろうぜ!」


 すると、信者達の肌がみるみる緑色になっていく。


「え?」


 俺達が状況を理解出来ずにいると、エリが呟く。


「あー。そういうことか」

「どういうことだ?」


 俺がエリにたずねると、エリはやれやれという感じで説明してくれた。


「こいつらはオークだよ。ルーカスの含めて変身魔法を使って人間に変身してたんだろう。だから、アリサが魔物の臭いに気付かなかったんだろうな……。そして、多分こいつらはリリーが使っていた巨大なオークの巣の本当の持ち主だ」

 リリー。エリに角をへし折られた魔物か……。


「でも、なんでそんなこと分るんだよ?」

「いや、リリー、一人であんなにでかい巣を作れるはずがないからな……。大方、どっかのオークの使ってない巣を利用したんだろうなとは思っていたんだ。多分、同じ森だし、あの巣から出て来たんだろ」


 確かに、ここはあの緊急クエストの森と同じだが……。

 世界って狭いなあ。


 そんな会話をしている間にも、オーク達は祠から出ていく。


「ま、待ってくれ! 俺の計画が……」


 ルーカスが止めようとするが、オーク達は無視してどんどん歩ている。


「残念だったな。これでチェックメイトだ」


 エリがルーカスにニヤリと笑って言う。

 ルーカスはガクッとひざまずいた。

 格好つけてるが、昔いじめられた腹いせに恥かしい過去を暴露しただけだ……。


 オーク達が全て出て行った後、アリサが困っていた。


「え……。どういうこと? 私、あのオーク達、倒しに行った方がいいの?」

「いや、いいよ。それよりもこっちだ」


 エリがうなだれているルーカスを指さす。


「お前、結局何がしたかったんだ?」


 エリがルーカスに呆れたようにたずねる。


「お前のせいで全て台無しだ……。ここまで、大変だったんだぞ。オーク達をだまして仲間にした後、宗教の形にするのは本当に大変だったんだよ……。特に宗教の名前を考えるのは凄い頑張ったんだ……」


 頑張った結果がドリドドドドン教かよ! 頑張ってもそんなんじゃ、全然意味ねえよ!


「俺は作りたかったんだ! 裏で人間の情報を集め、人を喰らう闇の宗教団体的な何かを! なのに、勧誘しても人は来ねえし、来たら来たで恥かしい過去を暴露されるし……てめら全員ぶっ殺してやる!!」





 その時、俺の場所からルーカスの手から光線が出るのが見えた。


「危ねえ!」


 光線の方向には、それに気づいてないアリサがいた。


 俺はアリサを突き飛ばし、光線をもろに喰らった。


「ぐはっ!!」


 あっ……。やべっ。

 俺はふっとばされながら、事態を確認する。

 俺の腹から血が出て、それがアリサにかかるのが見える。


「あはっはははーーはああははあはは!!」


 アリサが狂戦士モードに入る。

 そのまま、ルーカスの方に突撃して行った。


 とりあえず、俺のデバフ魔法の必要はなさそうだな……。

 そう安心した所で地面に体が触れるのを感じる。


「うげっ!」


 俺は地面に体を打ちつけられて、倒れこむ。


 ルーカスとアリサの方を見ると、ルーカスはアリサの攻撃を悠々とかわしている。


「……何だ? あの、スピードは」


 そう思っているとルーカスはルナの方に光線を撃ち始めた。


「ふはっははは! 遅いぞ! 雑魚どもが!」


 バカではあるが、仮にも魔王城に居ただけのことはある。


「ふあーーー! やめて! 来ないで!」


 ルナが情けない声を出して逃げ回る。

 エリがこちらにやって来る。


「おい! 大丈夫か! 今、回復してやる!」

「……何で……こっちには攻撃してこない?」


 俺の疑問にエリが答える。


「おそらく、あいつは私達ではあのスピードに対応出来ないことが分かってるんだろうな。だから、比較的戦闘力の高い二人を狙ってるんだろう」

「どうして、あいつがそんなこと分かるんだ?」

「見れば、分かるだろ。あいつらはルーカスの攻撃をよけてる。私の身体能力は魔王城でばれてるし、お前もアリサをかばったものの、もろに攻撃を喰らってたからな……なめられてるんだよ」


 戦っているのを見ると、アリサはもちろんルナもなんだかんだ光線をよけ続けている。


「いや、ちょっと待て。何で光線でしか攻撃しない?」


 アリサを上回る速さを持つ身体能力があるなら、近くにいるアリサには普通に殴ったり蹴ったりした方が早いはずだ。


「あいつは身体能力が高いわけじゃねえ。むしろ人と同じくらいだ。おそらく私達に警戒される前に瞬時に素早さだけ魔法でドーピングしたんだろう。あいつは魔力だけは魔王城でも指折りに入る奴だったからな」

「……そうか」



 魔王城で指折りと言う言葉を聞いて、俺は思う。


 どうして、いつもいつもこう厄介ごとに巻き込まれるのだろう。

 毎回、毎回三人が問題を起こしては俺が尻拭いをさせられる。

 理不尽だ。なぜ俺ばかりこんな目に合うのだろう?


 トラックに轢かれる前は、もっと楽だった。

 誰かの心配をする必要もなかったし、頑張る必要もなかった。

 自分のことだけで良かったのだ。

 本当に楽だった。


 ルーカスに狂ったように攻撃を仕掛けるも全く当たらないアリサ、俺を回復しているエリ、さっきから光線から逃げ回っているルナを眺める。


 アリサはバーサーカーなのに血は苦手だし、どうしようもないくらい空気の読めないバカだ。

 エリは自分勝手でいつもやばい問題ばっかり起こす癖に全然反省しない。

 ルナはいつまでたっても中二病が治らない上に、肝心なところで全然役に立たない。

 本当にどうしようもない奴らだ。





 だけど、いなくなったら、ほんの少しだけ寂しいかな……。

 

 相変わらず、俺は異世界でも無様に這いつくばってる。

 金も力もない。

 だけど、そのどうしようもない愚かさを分かち合う仲間はいる。

 足を引っ張ったり、引っ張られたりして文句も言い合ったりしたけど、ここまで四人で乗り越えてきた。

 


 ……しょうがねえな。


 やるか。

 ここまで来たら最後まで付き合ってやる!



 俺はエリに向かって小さな声で言う。


「そのまま回復してる素振りのまま、俺を高速移動魔法でルーカスのところまで瞬間移動させてくれ」

「は?」


 エリが理解出来ないようだ。

 高速移動魔法は対象を任意のモンスターまで瞬間移動させてくれる魔法だ。

 ルーカスが油断して、俺らに注意を向けていない今なら、不意をつける。


「バカか! お前は! そんなことしたら本当に死ぬぞ!」」


 エリが言う。

 傷はふさがったとは言え、回復の途中だ。

 確かに下手したら、死ぬだろう。


「バカはお互いさまだろ……。俺を信じろ。策は練ってる。誰も死なせねためにはこれしかねえ!」

「……で、でも」


 エリが不安そうな顔をする。

 ったく。普段あんな強気なくせに、なんでこんな時だけ弱気なんだ。


「時間がねえ……。アリサの狂戦士モードはそろそろ解ける。そしたら、アリサもルナもすぐに死ぬぞ。いいのか?」

「い、嫌だ! それだけは嫌だ!」


 エリが目に涙を浮かべ言う。


「だったら、頼む! ルーカスに俺達、シロクロ魔術士コンビを舐めたこと後悔させてやろうぜ!」

「……分かった。やろう。だけど、絶対生きて帰って来いよ! じゃないと、私がお前のこと殺すからな!」

「ああ。分かってるよ!」


 どうやら、エリも覚悟を決めてくれたらしい。


「じゃあ、行くぞ! ハイスピード・ムーブメント!」


 エリの詠唱と同時に俺はルーカスの目の前に移動した。


「え?」


 状況の理解出来ていないルーカスに俺は掴みかかる。


 力は互角のようだ。

 俺とルーカスは取っ組み合いになった。


 そこにアリサの拳が飛んできた。


「ぼえっ!」


 アリサの拳をルーカスはもろに喰らい、つかみ合った俺と壁までふっとんでいく。


 ドンッ!!

 俺とルーカスは壁に直撃した衝撃で二人とも倒れこむ。

 が、アリサの拳を喰らってない分、俺の方が速く起き上がれた。

 そのまま、ルーカスに覆いかぶさり、全身で押さえ込む。


 と、同時に拳を放ったアリサは狂戦士モードの時間が切れたのか、ばたっと倒れこんだ。


 ナイスタイミング! これでルーカスにデバフ魔法を使える!

 今日は既に二発使っているので、使えるのは後一回だけだった。


「汝の……」

「ちょっと待て、そんなことしたらお前死ぬぞ」


 俺がデバフ魔法を放とうとした瞬間、ルーカスが口を挟んできた。


「ふふっ。俺が魔法に対して何の対策もしてないと思ったか? 防御魔法を使う余裕はなかったが、俺に近距離から魔法を放てば、お前くらいは一緒に死ぬくらいの爆発魔法が自動で発動する魔方陣を体に書き込んである」

「な……そんなことしたらお前も死ぬぞ」

「どうせ死ぬなら、お前も巻き添えにしてやる。だから、俺を解放しろ。そうすれば、お前だけは助けてやる」


 ルーカスが追い込まれた悪役のテンプレのようなセリフを吐く。

 

 そして、俺は答える。


「うるせえ! 死ね!」


 俺はこっちの様子を遠くで恐る恐るうかがっているルナに言う。


「ルナ! 俺もろともで良い、こっちに最大威力の攻撃魔法ぶっ放せ!」

「バカか! そんなことしたら、お前も死ぬぞ! 魔物の直接的な攻撃しか、蘇生は出来ないんだぞ!」


 ルーカスがルナにも聞こえるように叫ぶ。


 ルナがルーカスの言葉で迷う。


「は、はやと! 私、どうしたら……」


 俺は叫ぶ。


「俺のことを信じろ! 大丈夫だ! 必ず生きて帰る! それとも、お前は俺よりもこのインチキ教組を信じるってのか!」


 ルナが俺の目を見る。

 俺は頷いた。


「わ、分かった! ハヤトのこと信じる!」


「バカか!? やめろぉ! 離せえええ!」

 ルーカスが暴れるが俺は力を振り絞って離さない。


「そうだよ。俺達はバカしかいねえ。でも、全員集えば天下無敵の最強パーティなんだ。そんな俺達に喧嘩を売ったお前も相当なバカだぜ」


「我に集いし混沌よ! 汝に破滅をもたらせ!」


 ルナの呪文が聞こえる。

 無数の黒の光線がこちらに向かってくる。


 そんじゃあ、ひとまず死ぬか……。

 正直、一か八かだが……まあ、なんとかなんだろ。


「このクソ野郎どもがあああああああああ!!」


 ルーカスのそんな断末魔と共に俺は死んだのだった。


  

第1章は次回で完結です!

次回は第1章のエピローグ的な感じを予定してます。

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