第22話 ご飯をたかってもいいよねっ!?
「それでそのドリなんとか教ってのは何なんだ?」
「ドリドドドドン教だよ!」
俺の言葉にルナが怒って返事をする。
「そのドリドドドン教「ドが一個足りない!」
うわあ、めんどくせぇ。
俺が面倒くさがっているのが伝わったのか
「もう、いいよ……。みんなにも紹介してあげようと思ったけど、やっぱりやめる」
と言って、ルナがそっぽを向いてしまった。
「そんなことよりこれからどうすんだ!? 私が言うのもなんだけど、住むところも食うものもねえぞ!」
エリが悲痛な叫びを上げた。
「そんなことじゃないよ! ドリドドドドン教は僕を救ってくれたんだよ!」
「お前の何を救ってくれたんだ?」
話が進まないので、ルナの言いたいことを聞いてやることにした。
「ふふっ。やっぱり、みんな興味があるんだね。嬉しいよ!」
ルナが調子に乗りだした。
うわあ、凄くうぜえ……。
俺とエリの考えていることもつゆ知らず、ルナが語りだす。
「馴れ初めは今日だ!」
今日なのかよ! 滅茶苦茶にわか信者じゃねえか!
と、突っ込みたいのを我慢して話しを聞き続けることにした。
「僕は少しでもみんなの役に立ちたいと思って、仕事を探していたんだが、なかなか見つからなくてね。どうやら社会と僕は上手く歯車が噛み合わないものだと悩み、孤独の道をさまよっていたんだ」
格好つけてるが、要はただの社会不適合者である。
「そんなとき、一人の可愛い少女に声をかけられてね」
「それで勧誘されたのか?」
「いや、道を聞かれただけだ」
関係ねえのかよ!
心の中で突っ込む俺達を置き去りにして、ルナは続ける。
「僕とその少女は上手く波長が合わなくってね、困っていたんだ」
ただ小さな女の子と上手く話せなかっただけだろ!
格好つけんな!
「それで僕が困っていたら、知らないおばさんが助けてくれたんだ」
情けない。情けないよ。うちの勇者。
「それでその知らないおばさんに勧誘されたのか?」
「違うよ。おばさんにうまくお礼が言えなくて、また悩んでいたら、声をかけられたんだ」
何なんだ!? 子供とおばさんの下りは必要だったのか!
こいつ、恥ずかしくないのか?
「ドリドドドドン教に入ったら、人と上手く話せるようになるって言われたんだ。でも、僕は人と相容れない化け物だからって断ったんだ」
いや、ただのコミュ障だろ……。
「そしたら、ドリドドドドン教は、はぐれ者の集いだって教えてもらってね。行ってみたら、みんな優しい人で、僕の話しを一生懸命聞いてくれたんだ。その上、ご飯もご馳走になっちゃった」
「「……ご飯」」
俺とエリは顔を見合わせた。
ルナの話を聞く限り、明らかに怪しい宗教だが、行ってみる価値はあるかもしれない。
「ルナ! 今度はいつ来いとか言われたか?」
エリが身を乗り出して聞く。
どうやら、考えることは一緒らしい。
「えっ! ドリドドドドン教に入りたいの!? ラルルルール様もお喜びになるよ!」
ルナが嬉しそうに言う。
「そのさっきから出てくる人は何なんだ?」
「人じゃないよ! 神様だよ!」
そうか、神様か……。
もう何も言うまい。
「いや、お前がそこまでいうドリドドドドン教がどんなものかと思ってな。もしかしたら、入るかもしれねえ。とりあえず、今日にでも仮入信ってことで見学とかできねえか?」
エリが上手いこと今晩の夕飯ありつこうとする。
俺もうんうんと頷く。
「多分、大丈夫だよ! まさか、二人がそこまで興味を持ってくれるとはね! 僕も嬉しいよ! じゃあ、行こうか!」
俺とエリは来た道を引き返し始めたルナについていく。
すると、俺に背負われているアリサが目を覚ました。
「……ん。あれ、ここどこ? どこに向かってんの?」
俺は笑顔で答える。
「飯だよ」
「そっかー! 何食べるの?」
アリサが笑顔で聞き返してくる。
まさか、明らかに胡散臭い宗教にご馳走になろうとしているともつゆ知らず……。
「行ってからのお楽しみだ」
そう言うと、俺は再びルナの向かう方向を見た。
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街の外れの森の奧で俺達は巨大な祠を目にした。
「誰かいませんかーーー? 今日の昼にお世話になったルナでーーーす!」
ルナが祠に向かって叫ぶ。
すると、中から一人の老人が現れた。
「おかえり、ルナちゃん。おや、その人達はお友達かい?」
「はい! ドリドドドドン教に興味があるみたいなんです!」
ルナが老人に向かって元気良く返事をする。
「ドリドドドドン教の教えに興味があるのですか?」
老人が俺達の方に向かってたずねた。
俺とエリが頷こうとした瞬間だった。
「違うよ! ご飯を食べに来たんだよ!」
アリサが空気を読まず、否定した。
頼むから、空気くらい読んでくれ……。
この時、老人の顔が引きつっていたのは言うまでもない。




