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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第1話 【異世界】月曜日のない世界【転生してみた】


「落ち着きましたか?」

「……はい」


あの後、俺はひたすらのたうち回った。

当然だ。想像してほしい。

 学校へも行かず、パンツを被って、前方不注意でトラックに轢かれた奴が居たとしたら……ああ!


 思い出しただけでも、恥ずかしすぎておかしくなりそうである。


「せめて、家族にだけでも、弁明させてもらえませんか?」


 俺のささやかな願いを聞いた天使様は残念そうな顔をした。


「……ごめんなさい。無理なんです」

「ですよね……」


 もう天国にも行きたくねえな! こりゃ!

 天国で死因聞かれて、何て答える?

 はっはっはっは! 答えられねえよ!


 俺が自暴自棄になっているのを、見兼ねた天使様が恐る恐る口を開いた。


「一つだけ、一つだけあります」


 天使様は俺を見つめて言う。


「―――死因を書き換える方法が!」



「ま、マジですか!?」


 俺は天使様に思わず食いついてしまった。


「はい。魔王を倒すと一つだけ願いを叶えることができるんです! ですから、それを利用して……」

「まおう?」


 天使様の話の突拍子のなさに俺はついていけていない。

 俺の疑問を汲んだのか天使様が頷きながら答える。


「そうです! 魔王です! 地球の存在する宇宙とは、切り離された遠い異世界! その世界では魔王という巨悪がはびこっているのです! 私達、天界においてはその魔王の存在が問題になっております! ですから、その魔王を倒してくれた方には特典として願いが一つ―――どんなことでも叶える権利が与えられます!」


 天使様のハイテンションの説明の中、俺はある言葉が気になっていた。

 魔王とか、異世界とかではない。

 それよりも、もっと大事な言葉があった。





「あ、あの……『どんなことでも』っていうのは?」


 天使様が首をかしげる。


「『何でも』って意味ですけど?」

「……な……なんでも!?」

「はい! 何でもです!」


 ぶっちゃけ、死因の改変なんて今となっては、割とどうでもいい気がしてきた。

 そんなことより、何でも願いが叶えられるという事実が俺を興奮させた。

 しかも、ただの『何でも』ではない。天使様の言う『何でも』なのだ。

 これは期待と希望しかない……!!

 こういう時のために、色々な願いを考えてきたのだ。

 人には言えないような願いだけどな!


「やらせてください! 魔王討伐やらせてください!」

「えっ! やってくれるんですか?」

「はい! ぶっちゃけ、死因の改変なんてどうでもいいんで! 異世界を救わせてください!」


 俺は適当なことをノリだけで口走っていた。

 が、その時、天使様の頬に涙が流れた。


「私、感動しました! 自らの命を犠牲にして、人を助けるだけでなく、知りもしない世界をも救いたいだなんて! ああ! なんて、心の清い方なのでしょう!」

「……」


 どうやら、天使様は俺のことを勘違いしているようだ。

 俺が異世界を救いたいのは、自分の欲求を満たしたいだけなのだが……。

 清さ0パーセントの、煩悩100パーセントである。

 凄い罪悪感が俺を襲った。


「分かりました! 本当は私が厳選した優れた才能を持つ方々に転生してもらっていたのですが、ハヤトさんにも、転生していただきます!」

「……俺って、そんな能力不足ですか?」


 天使様の言い方では、俺が無能みたいである。


「はい! 全然、能力足りてません!」


 その時の天使様の顔はそれそれは無邪気で屈託のない笑みだった。

 さすが、天使様! 嘘はつかないんだな!

 俺の心は大分、傷つけられたが……何も言うまい。

 天使様、騙してるんだし……。


「こちらとしても、全力でサポートさせて頂きたいと思います!」

「……は、はい」


 もう、いいか……。このまま、天使様のご厚意に甘えてしまおう。

 そっちの方が楽な気がする。

 能力不足らしいし……。


「とりあえず、祝福を授けたいと思います! まあ、簡単にいうと、ハヤトさんにこれから転生していただく世界で使える特別な魔法、武器のことです!」

「……魔法?」


 そう言えば、魔王とかそういうワードが出てきたのだが、スルーしてしまっていた。

 もしかして、そういう感じの世界―――魔法とか、魔王とか、どっかで聞いたようなRPG的世界なのか!?


「はい! その世界では、魔法が科学の代わりに発達しているのです! って、いきなり、そんなこと言われても分かりませんよね……」

「いえ、大体、分かりました! ようはRPGみたいな世界ってことですよね!」

「……まあ、確かにそれが認識としては、一番近いかもですね。一言でそうは言いきれませんが……」


 本当にゲームみたいな世界なのか! マジかよ! おい!

 これは勝ったな、俺、大勝利じゃん!

 日夜、時間を惜しまずゲームに捧げている俺だ。

 おそらく、案外、簡単に魔王とやらも討伐できちゃったりして!

 その流れで美少女とお付き合いしちゃったりして!

 おいおい! マジか! おい!


「……あの、説明続けさせてもらってもよろしいでしょうか?」

「はい! よろしくお願いします!」

「では、黒山ハヤトさん、この中からお好きな能力をお選びください!」


 そう言うと、天使様は俺に一冊の厚い本を渡してきた。

 パラパラとページをめくると、様々な魔法やら武器やらが載っている。

 中には聞いたことのある名前の魔剣などもあった。


 そこで、俺は一つ気になる魔法を見つけた。


「あの、これに『任意のステータスを一つだけ一定時間0にできるデバフ魔法』っていうのがあるんですけど……ステータスっていうのは?」


 俺はその魔法の載っているページを開き、天使様に見せた。

 別に俺はステータスの言葉の意味が分からないわけではない。

 ただ、これがよくあるゲームで聞くあれなのかということだ。

 そう考えると、「デバフ」もそうだ。よく聞くゲーム用語である。

 敵を弱体化させるスキルのことだ。


 天使様はそのページを覗き込み、答えてくれた。


「ステータスっていうのは、その世界のおける強さの指標のようなものです。その世界では魔法によって個人の能力をある程度の分野に分けて数値化できるようになってるんです!」


 本当にゲームのステータスではないか!?

 これから俺の転生する世界はどうやら本当にリアルゲーム世界ようだ。


 そして……偶然見つけた魔法だが、このデバフ魔法、結構強くないか?

 応用も利きそうだし、汎用性も高い気がする。

 どんなに俺が能力を不足であろうと、これならどんな相手にも勝てそうだ。


「俺、この魔法にしようと思います!」


 そのページを天使様に見せた魔法を指差して、言った。


「ほ、本当ですか? この魔法、実は私が考案したものなのですが、誰も選んでくれなくて……本当にこれにするんですか!?」

「はい!」


 俺は元気良く返事をする。


「俺がこの魔法で魔王を倒して、世界一の魔法だって、証明してみせます!」


 天使様のご厚意に甘えることを決意した俺は、限界まで天使様の評価を高くすることを決意していた。

 こうなったら、とことんゴマをするZE☆


「もう、ハヤトさん、大好き! 天使、大サービスしちゃいます!」


 そう言うと、天使様は俺にパンパンに膨らんだ皮の袋を渡してきた。


「これは?」

「お金です! あちらの世界の通貨です! とりあえず、家買ったりする分には苦労しないと思います!」

「ありがとうございます!」


 俺はこの時点で気づいた。

 この天使様、超ちょろい。ちょっと、褒めただけでこの始末!

 もう少し、揺さぶりをかけよう!

 まだ、ドロップするかもしれない。


「しかし、天使様の考えたこの魔法、マジ汎用性高そうですね! マジ凄いです!」


 およそ、小学生が考えそうなくらい低レベルの褒め言葉だったが、天使様は涙した。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


 この天使様、きっと褒められたことないんだろうな……。

 悪いことをしている気にはならなかった。

 俺は天使様から恩恵をいただけて、天使様は褒められて嬉しい。

 二人とも幸せな気分になれるのだから、これは良い行いである。


 そして、案の定、天使様はその後も色々くれた。

 装備やら、異世界での住処の権利書、異世界の地図にエトセトラ。

 正直、俺の魔王討伐は簡単に達成されそうだ……。

 俺のゲーム能力と、このゆとり式スタートが組み合わさった今、無敵とは俺のためにある言葉ではないかと思えるくらいである。


_______________________________



「じゃあ、行ってきます!」


 俺は天使様からもらったものを装備し、準備万端になった。


「大丈夫ですか? 忘れ物はないですか?」


 天使様が俺を心配する。

 短時間の間によくここまで仲良くなれたものだ。


「はい。ていうか、さっきも散々確認したじゃないですか」

「いえ、ハヤトさんには期待しているのです! だから、忘れ物とかしょうもない理由で失敗して欲しくないのです」


 天使様が顔を真っ赤にして興奮して言う。

 この天使様、簡単に詐欺とか引っかかりそうである。


 俺はポケットやら、天使様からもらった鞄を確認する。


「大丈夫です! 忘れ物はありません」

「じゃあ、異世界に着いたら、すべきことを順番に言ってください」


 どんだけ、心配症なのだ。

 俺は天使様に言われたことを思い出す。


「まず、天使様からいただいた家を確認する」

「はい。正解です! 住居の確保は重要ですからね! 次は?」

「ギルドへ行って、冒険者として登録する」


 ギルドとは―――冒険者ギルドのことである。

 異世界では、モンスターを討伐したり、魔王軍と戦う人々の仕事を総称して冒険者というらしい。

 そして、その冒険者達に仕事を斡旋しているのが、冒険者ギルドである。

 近隣の住民などからの依頼を紹介し、紹介料として報酬の一部をもらうことで成り立っている組織。

 ゲームでもお馴染みの存在だが、異世界にもあるようだ。

 まあ、仕事を回す上で、ギルドは合理的な仕組みであるし、誰かが考えても別におかしくはない。


「はい! 正解です! 職員の方にはきちんと挨拶してくださいね! 次は……」

「あの、そろそろ、出発したいんですけど……」


 天使様には悪いが、このやり取りは5回くらい繰り返している。


 天使様は少し残念そうな顔をして言う。


「……そうですよね。くどいですよね……分かりました! 可愛い子には旅をさせよって言いますしね!」


 いつから、天使様は俺の親になったのだろう?

 まあ、いいか。やっと、出発させてもらえるみたいだし……。


「では、いってらっしゃい。黒山ハヤトさん! あなたに神のご加護があらんことを!」


 天使様がそう言うと、俺の足元が光り始めた。

 魔法陣のようなものが見える。

 どうやら、本当に出発のようだ。


「天使様、俺、いってきます!」


 俺の言葉を聞いた天使様は笑顔で手を振ってくれた―――俺は次の瞬間、意識が飛んだ。



 





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