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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第13話 君と僕の黒歴史


「ハヤト、ハヤトじゃないか! どうしてここに! こんなところで、会えるなんて! ふふっ、やはり僕達は運命共同体だね!」


 その不自然な一人称とナチュラルに出て来た運命共同体というワードから、俺は確信した。

 こいつが本城ルナであること。

 そして何も変わっていないということ。


「もしかしてハヤトの知り合いかい? そうか、なら話は早っ「こんなやつ知りません!!」


 アルトの言葉を遮る。


「アルトさん。折角紹介してもらったんですけど、今回はすみません! 自分達には、勇者はまだ早いんで出直してきます!」

「えっ……」


 アルトは状況を理解出来ずにいるようだ。

 無理もない。

 俺も理解できていないのだから。


「エリ、帰るぞ!」

「えっ」


 状況を理解できていないエリの腕を掴み、俺は走り出した。

 ギルドから出て、俺はそのままがむしゃらに何も考えず逃げる。


「や、やめろ! 痛い! 私の腕が千切れちゃうから! とまれ! とまろう! とまってくだひゃい!」


 エリが悲痛な叫びをあげる。

 俺は無視して走り続ける。

 まずい。このままじゃ追いつかれる。


 という、俺の恐怖はやはり的中し、ルナが後ろから俺に追いついた。


「ひぃっ……」


 彼女は猛ダッシュしたのだろう。

 ひどく息切れしながらこう言った。


「……ハアハア。ひ、ひどいなあ。僕をお化けみたいに扱うなんて……。まあ、化け物扱い慣れっこだけどね……。ははっ」


 やめろ! 息をするように中二発言をするな!

 ”ははっ!”ってなんだよ!

 こっちが恥ずかしくなる……。

 心の中で激しく羞恥の感情が震える。


 彼女のことを一言で表すと、歩く黒歴史辞典とでも言ったところか。

 彼女を見ると大抵の人間は自身の黒歴史を思い出し、悶え死にそうになるという……。


 現に今の俺がそうである。かつての自分を思い出し、羞恥で死にそうだ。


 彼女は多才で美少女だ。

 おそらく、それで勇者に選ばれたのだろう。

 しかし、それら全てがマイナスになるレベルの人格的問題を抱えている。




 彼女との出会いは中学時代に遡る。


 ルナと出会った時の俺は中二だった。

 これは学年的な意味でもそうだし、精神的な意味でもそうだった。

 意味もなく屋上へ行ってみたり、放課後、教室に残り窓から夕日を眺めていた。


 ここまでは、まだ可愛いものであった。

 思うに中二の俺、いや全ての中二病は出会い、それも何か特別な出会いというものを求めてさまよっている。


 さまようのは悪いことではない。

 むしろそれで中二病が浄化され、真っ当な人生が歩めるのなら素晴らしいことだ。

 要は出会わなければいいのだ。


 しかし、俺は違った。

 ルナと出会ってしまったからだ。


 それは放課後の屋上だった。

 そこでルナは1人寂しくチョークでせっせと魔方陣を書いていた。

 俺の愚かなる中二センサーがビビッときてしまったのだ。



 こいつしかいない。

 俺はそう思ってしまった。

 彼女もそう思ったのだろう。

 放課後に1人寂しく、自作の魔導書を持って屋上に現れた俺を見て……。


「僕と契約しないかい?」

「ああ」


 そうして、俺達は詐欺師もビックリの中身のない契約を交わしたのだった。

 今でも何の契約だったのかは謎だ。


 その日から、俺達の愚かなる中二デイズが始まったのだった。


 色々なことをした。

 夜中に学校に潜入し全教室の黒板に魔方陣を書いてみたり、窓ガラスに全面にトイレットペーパーをはりつけてみたり、2人で自称呪いの曲を作り放課後に大音量で流してみたり、校内の生徒会のアンケート箱に『破滅上等!!』と書いて入れてみたりもした。


 何をしても楽しかった。

 2人なら何をしても怖くなかった。

 中二病、2人で動けば怖くない。


 今、思い返しても、罪悪感と羞恥で死にたくなる。


 だが、楽しい時間にも終わりはくる。


 放課後、屋上で2人で仲良く魔法陣を書いていたところを教師に見つかったのだ。


 それ自体はそこまで問題なかったのだが、今までの悪事が芋づる式にバレたのだ。

 どうやら、教師達は既にある程度、筆跡などから、俺達に目星をつけていたらしい。


 俺達は停学になった。

 ルナは普段の大きな態度からは考えられないことに教師に怒られて泣いていた。

 泣いてるときは一人称も僕から私になっていた。



 停学のはずだった。

 なぜか停学開け、彼女は退学になっていた。

 中学だが、俺達の学校は私立だったため、退学もあったのだ。

 理由を聞こうにも、問題行動のせいで、周囲の大人に聞けなかった。


 そうして、俺は彼女のいない学校に退屈して……いや、ただ友達がいなかったのが寂しくて1人登校拒否の引きこもりになったのだった。ちゃんちゃん。



 そして今に至るというわけだ。


「お前、どうしてここに?」


 俺の問いに対して、ロングの黒髪をかき上げる。

 いいから、早く答えろ。


「ふっ、聞きたいか? ……いや、しかしそう簡単には、教えられないなぁ。ここはひとつ僕と契約を……」

「あっ、なら結構です。行こうか、エリ」


 俺が振り返り、自宅に向かおうとするとルナが肩を掴んだ。


「まっで、まっでよぉー。わだじのはなじぎいでよぉー。ひっぐ、ひっぐ。わだじ、じんだどおもっだらごごにいでぇ。でなんがもんずだーがいっばいいでぇ。じらないひどじがいなぐでぇー。ごわがぐでぇ。でも、はやどがいだがらうれじがっだのぉー」


 ルナが泣き出してしまった。

 こいつのどこが勇者なの?

 すごい豆腐メンタルなんですけど…。


 しかし、さすがにこのまま放置するのは可哀想だと思ったので、とりあえず俺達の家に連れて行くことにした。


_______________________________



「もう、泣き止んだか?」


 エリが自室から出てきてたずねた。

 家でルナをあやすこと30分。この世界のことを説明して理解してもらうのに2時間(もちろん、異世界転生のことをエリに言っても伝わらないので積もる話があると言って自室で待機してもらっていた)。

 俺は疲れ果てていた。


「ふっ。ありがとう。お嬢さん。でも、心配には及ばないよ。僕は闇属性の人間だからね、日に一度ああして自らの内側にある綺麗さを放出しなければならないんだ」


 なんだ、その意味のわからない設定。

 綺麗と言うが、思いっきり鼻水とか出てて、汚かったんだが……。


 「あっそ。私はエリ。ハヤトの冒険仲間だ。お嬢さんって言ったけど、多分私の方が年上だ」

 「ご、ごめんなさい。どうしよう……。ハヤト……。私、初対面の人にすごい失礼なこといっちゃった……。うぅ……」


 ルナがまた泣きそうになる。



 どんだけ精神弱いんだよ!

 さっきまでの威勢はどこ行ったんだよ!

 そして、俺が異世界転生のこと説明しても全然理解してくれなかったくせに、なんでエリが自分より年上ってことは簡単に信じるんだよ!

 もうやだ。

 俺、疲れた。


 なんて俺が考えているとエリが一応年上としての優しさを見せ始めた。


「いいよ。別に。間違えないほうがおかしいし。ハヤトなんてもっと失礼だったしな……」

「そ、そうだよ! 気にすんな!」


 俺は便乗する。


「……ほ、本当に?」

「「本当だよ」」


 俺とエリが口を揃えて言う。


「ふふっ。見苦しいところを見せてしまったね」


 立ち直り早っ! そして今のほうが見苦しいよ!


「ハヤトと知り合いみたいだけど……。どういう関係だったんだ?」


 エリがたずねる。


「昔、契約した仕事仲間さ。ま、腐れ縁ってとこかな。なぁ、ハヤト!」

「……もう、そういうことでいいよ」


 腐れ縁どころか、黒歴史でドロドロの切っても切れない鎖で繋がっている。




「ひとつ、聞きたいことがあるんだ」


 俺はどうしてもこのことだけはずっと気になっていたのだ。


「なんだい? 僕に答えられることなら、なんでも答えるよ」


 ルナの答えを聞き、俺はエリに顔を向ける。


「エリ、すまない。先に言っとくが、これは俺達の故郷の話だから、お前にはわからないかもしれない」

「いいよ。別に。そこまで興味ないし。お前らの過去、どうせロクなもんじゃないんだろ」

「ふふっ。僕達の血塗られた歴史は確かにロクなものじゃないね!」


 こら! 嬉しそうにするな!

 血じゃなくて、真っ黒な歴史だろ。

 まあ、いい。気にしたら負けだ。

 話を続けよう。これで長年のなぞが解けるのだから。


「どうして、お前は停学の期間中に退学になったんだ?」

「知りたいかい? 後悔しても知ら「うん、じゃあいいや」


 いい加減、イラッときた。


「分かった! 分かった! ちゃんと言うから! 私の話きいてよぉ!」

「なんだ。言ってみろ」


 俺の答えを聞いた、ルナはそのままおどおどした様子で答えた。



「あ、あのね。ハヤトさ、停学になってすごい傷ついてたでしょ。だから、私ハヤトにね。元気になってもらいたかったの……。それでね。私考えたの。そしたら、ハヤトっていつもさ、階段登るとき、女子のパンツ見えそうな距離保ってたでしょ……。だからね。女子のパンツあげたら喜ぶかなって……。あのとき夏だったでしょ。だからプールの授業があったじゃん……。私、停学で暇だったからさ。こっそり更衣室に忍び込んでクラスの女子全員のパンツ盗んでね。ハヤトの家のポストに全部入れたの……。そしたら、バレちゃって……ね?」

「は?」


 俺は開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったショックで気絶した。

 どうりで、停学明けから女子に人間のゴミを見るような目で見られてたのか……。



 一つ分かったことは、ルナは俺と出会わなくても、黒歴史量産機だったのだろうということだ。

 彼女が勇者というのは本当なのだろう。

 ただ、犯罪者と紙一重の危険な勇者だ。



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