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全員集えば天下無敵の最強パーティ!!  作者: 引きこもりんりん
第一章 ポンコツパーティはじめました!
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第9話 ワガママ白魔術士


「もう! 先輩ったら、なんでそんなにばんばん無駄に回復魔法使うんですか!?」


 賢者さんはエリさんにお怒りである。

 無理もない。

 エリさんは俺達が少しケガをするたびに、それがかすり傷でも、最上級の全回復魔法を使うのだから。


 ヒーラーというのは基本、回復魔法をタイミングをはかって使うのである。

 自分の使える回復魔法、MPの残量、仲間の残り体力を常に頭の中で計算し、ここぞというときに回復魔法を使う。

 その技量はヒーラーを評価する上で重要な基準となる。

 エリさんみたいにばんばん使っていたら、すぐにMPが切れてしまうはずだ。

 今から思うと、賢者さんのタイミングは神がかっていたし、しかも精神的フォローもしてくれて、まさしく理想のヒーラーだった。

 どうして、先輩はこんなにどうしようもない人なのだろう?


「はっはっは! お前、自分が雑魚だからって、私に当たるなよ! 私のMPの総量は常人の100倍だぞ! お前にとやかく言われる筋合いはねーよ!」


 相変わらず、後輩には口の悪いエリさん。

 不可抗力とはいえ、二回もエリさんを辱しめた俺は敬語なのに、どうしてこんなに出来た後輩にはひどい態度なのだろう?


 そんな疑問を思い、賢者さんを見ると、すごく悔しそうな顔をして黙っている。


「もしかして、本当にそんなにMPがあるんですか?」


 エリさんが俺の質問に答えるより先に賢者さんが答えた。


「ええ、そうよ。この人は本当にそれくらいある。ちゃんとしてくれれば、もっと上に行けるのに……」


 賢者さんが本当に残念そうな顔をしている。

 

 ここで、俺はエリさんといると、普段、笑顔しか見せてくれない賢者さんが色々な表情を見せてくれることが分かった。

 賢者さんとそこまでの関係にあるエリさんが若干羨ましい。

 というか、俺も怒られたい!


 俺がそんなことを考えている間にも、エリさんは賢者さんに毒を吐き続ける。


「お前と私を同じ土俵で測るなよ。私はもっと上のレベルで物事、考えてるんだから。後、私はお前のことはパーティとして認めてないから! ぜっっっっったいに回復してやらないから!」

「結構です! 私は自分で自分のことくらい回復できますから!」

「あっそう! 後で助けを乞うてもぜっっっっったいに助けてやらないから! 私は前の方で一生懸命働いて、私が回復するたびに、一生懸命お礼してくれるアリサと楽しくおしゃべりしてくるから! お前はせいぜいそこのエロ魔術師とくっちゃべってろよ!」


 エリさんはそういうと、鼻がきくので俺達の前へ出て巣の罠を破壊してくれているアリサの方へ走って行った。

あいつ、とんでもない爆弾残していきやがった。


「えろ?」


 まずい。

 賢者さんが可愛い顔でキョトンとしている。何か弁明を考えなくては……!


「えろって何?」

 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。


「えっーと……」


 言い訳が思いつかない。


「あの私、えろって言葉、初めて聞いたんだけど……。どういう意味か教えてもらえない?」

「え?」


 そんなこと、あるのか。

 もしかして、この世界にはエロという概念が存在しないのか?

 いや、違う。

 だったら、エリさんも知らないはずだ。

 もしかして、本当に知らないで育ったのか!

 いや、有り得る!

 賢者さんならそれくらいの奇跡、普通に起こしそうだ。

 ならば、それを壊してはいけない。


 俺は使命感にかられながら、賢者さんに答えた。


「あの、エロっていうのはですね。俺の地元では、エロスっていう神様がいて、それの略称なんです。エロスは愛を司る神様なんです。つまり、エロ魔術士っていうのは仲間想いの魔術士って意味なんです」


 我ながら、中々苦しい言い訳である。

 そして、エロス様ごめんなさい。

 こんな下らないことで引き合いに出して!

 

 だが、俺のどうしようもない嘘に賢者さんは納得したような顔をしている。

 

 しめた!


「そのエロ魔術士っていうの中々素敵ね! ハヤト君は確かに仲間想いだし! みんなに教えてあげてもいい?」

「それだけは勘弁してください。お願いします!」

「えっ、何で? いい呼び名だと思うよ!」

「いや、そのそんな頻繁に仲間想いとか言われると、安っぽくなっちゃうかなーって」

「確かにそうだね。私、軽率だったよ。ごめんね! 賢者なのに私ってバカだね、エヘヘ」


 ああ可愛い!

 何だよ! エヘヘって! 反則だろ!

 そして胸が痛い! 罪悪感で押しつぶされそうだ。

 こんなに優しくて、可愛くて、いい人を騙して謝らせて、俺は明日からどんな顔して生きていけばいいんだろ……。

 そんな複雑な心境の俺に賢者さんは優しく微笑む。


「この、クエストね。本当はギルドは私達のパーティに頼む予定だったみたいなの。だけど、私達のパーティは私しかいないし、他の強いパーティも偶然いなくて、それでこんな形になったみたいなの。でも、私、良かったなって思うの」

「というと?」

「こうして、この4人でクエストに行けたことがすごく嬉しいの! アリサちゃんとも仲良くなりたかったし、ハヤト君ともこうしておしゃべりしたかったしね。先輩とも久しぶりに一緒に戦えるしね」

「あんなに悪態をつかれてもですか?」

「うん! 先輩は今はあんなだけど、本当はやれば出来るし、優しい人だって私は知ってるから! だからね、ハヤト君、あんな先輩だけどパーティに入れてあげてくれないかな? だって、先輩、今、とっても楽しそうだし! 先輩があんなに人と喋ってるのってすっごく珍しいことなんだよ!」


 賢者さんは嬉しそうに語る。

 この人は天使にジョブチャンジした方がいいんじゃないだろうか。

 今度、死んで天使様に会うことがあったら、推薦しておこう。

 俺は心に固く誓った。


_______________________________



 急に前を歩いていたアリサとエリさんが止まった。


「いる! この奥に! オークの集団が! 魔物の匂いがすごく濃い!」


 アリサが興奮した様子で言う。

 俺達はオークの巣を他のギルドの奴らとは反対から進入したのだが、オークには一切遭遇しなかった。代わりに、全てくらっても致命傷になりそうもない罠が大量に張られていた。

 はっきり言って、回復は不要なレベルである。

 なので、俺達は効率よく進むためにアリサに罠を感知してもらい、大したことないものは全て処理しておいてもらった。

 もちろんやばそうだったら、全員で処理するつもりだったのだが。


「警備が、薄すぎないか?」

「確かにそうね……」


 俺の疑問に賢者さんが応じる。


「私達が少人数だから、オーク達が気づかず、ギルドのみんなの方へ向かったのだとしても、こんな巣の奥まで来るのにまともな罠すらないなんて……」

「大丈夫でしょ」


 エリさんが言う。


「所詮、オークは頭が良いなんていわれてるけど、結局は下級の魔物でしかない。そこまで知恵がまわらなかったんでしょ」

「でも、エリさん……」

「エリでいい」


俺の反論に対し、エリさんが突然被せてきた。


「エリさんって、よそよそしすぎだろ。もう、私達ここまできた仲だろ。お互い敬語はやめないか? 私もあんた相手に敬語キャラ作るの疲れちゃったし」


 キャラ作ってたのかよ!

 まあ、賢者さんと話しているのを見てうすうす感づいてはいたが……。


「まあ、戦いの時は連携の時は文字数少ない方が良いし。ハヤト、そうしなよ」


 と、アリサが言う。目の前の戦いが控えているとあってか、顔が戦士の顔になっている。


「分かったよ。じゃあ、改めてよろしくな。エリ」

「よろしく。ハヤト」


 正直、そこまで親しくなったのかどうかは分からなかったが、エリがそういうのならそうすることにした。


「良かったですね! 先輩! 私もここまで来た仲だし敬語はやめていいですか?」

「いや、お前はダメ。勝手について来ただけだから。というか、お前にだけはタメ口で話しかけられたくない」

「うぅ……」


賢者さんがしょぼくれている。眼福だなぁ。




 気を取り直すように賢者さんが


「冗談はさておき、確かに、先輩の言う通りかもしれない。私も警備の薄いオークの巣は何回か経験したことがあるし。一応、警戒だけはしながら行きましょう」


 と、言ったので、俺達は奥へ続く階段を降りることにした。

 

 俺達はここでもう少し警備の薄さに危機感を覚えるべきだったのだ。

 完全に油断していた。

 階段降りたそこには地獄が待っているのだった。


_______________________________


 

 階段を降りるとそこには、ギルドの面々が血だらけで倒れていた。

 しかし1人だけ立っている人がいる。


「なんだこれは?」


 状況が読み込めない。

 すると、立っていた人物がこちらを向いた。

 そして口をこちらに向けて開いた。

 不気味な声でこちらに向かって何かをつぶやいている。

 まずい呪文か?



 その瞬間、突然、賢者さんの体から血が噴き出した。



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