答え合わせをしよう
それは全部夢で、嘘で、現で、本当で……。
8月14日で書き終えられた、まだ真新しい日記には、僕の心が刻み込まれていた。
――そして過去へ
僕はまた、あの子に抱きしめられていた。
全ての物語はこの場面から生まれてきた。
何度も繰り返される痛み、温かさ、息遣い。
糸が解かれた結末のとき、僕は腐敗したオレンジのような空が闇に掻き消されるのを、黙って見つめるのだった。
瞳に映る事実は、
僕は愛されないということ。
そして、
あの子が大切な誰かを失う選択ができたこと、このふたつ。
僕がそれから望むようになったのは、僕という存在があの子の足枷にならないような未来。
あの子が「選ぶ」ということを知り、その痛みを乗り越えられたらなら、その向こうには愛しい人との幸せな日々がある。
「愛したかった」
ではなく、
「愛してくれようとしていた」
その言葉だけで僕は、ひとりでどこまでも
歩んでいける。
やはりあの子はあの子であったから――
弱虫で淋しがり屋な子どもの面が露になった。
でもそれがあの子なりの優しさで、人間らしさだということを知っている。
そんな僕にはまだ、あの子を支えることが赦されていた。
愛することが、傷つけることと同義と知りながら、精一杯傷つけてみせた。
必死に千切れた糸を結わんとする手が止まるまで、
何度も、何度も。
気づけば僕らは笑わなくなっていた。
「離さないで――」
……その目には見えない涙に、僕は見えていない振りをし続けた。
「私を見て」
「自己完結しないで」
僕があの子の傍にいるためにはどうしなくてはいけないのか、わからないはずはなかった。
それでも目指す地点は変わらない。
いつか、誰も傷つかない世界へ――
……あの子はもうボロボロだった。
緩み始めた手を見下ろして、僕は
「ありがとう」
と笑う。
――そして、僕はある夢を見た。
まるでガラス製のような質感をした黒猫が、僕の足元にすり寄ってきて、抱き上げて欲しいと鳴き声を上げる。
それに触れると途端に体にひびが入り、僕の胸に当たった衝撃で、赤い液体と一緒に砕けて流れた。
目を覚ました僕は、これで最後にしようと、夢を現にすることを心に決めた。
ありもしない生き物を、あたかも僕が殺したように。
その生き物たちを救うことが、あの子の夢であるのだから。
きっと僕は
あの子の大切なもののために
この糸を解かれる
エンドロールは残酷だった。
あの子が二度と僕に手を伸ばさないように、
嘘を重ねた。
離れていく背中には精一杯の言葉を紡いだ。
ほんの少しだけ、その葉の裏を僕の涙で濡らしながら。
もしあの子の夢が、
僕と再び繋がることになるのなら、
この悲しみに塗れた心を
全て君に捧げよう。
僕がまだ、君と出会った頃のままであるのなら。
君がまだ、僕と出会った頃を思い出せるのなら。
透明なふたりは出会うのだろう。




