止まりだした世界04
「どういうことだ…一体何が起きて……」
状況が全く理解出来ないながらも、圧倒的な恐怖を感じることだけは出来た俺は、回れ右をし自分の部屋へと逃げ帰ろうとした。
「あれ……? 何で……」
おかしい…おかしすぎる…。
ドアノブに手を掛け振り向いた視線の先には、今まで俺がダラダラと寝そべっていたはずの家が無くなっている。
そこにはただ一面の荒野が広がっていた。
そして俺の目の前には、唯一開けっぱなしの扉だけが立っていた。
その扉も朽ち果て、自重に耐えきれずにガラガラと崩れ落ちる。
俺の恐怖心は加速する。
誰でもいい…他に誰か人はいないのか…!
無我夢中で辺りを見渡す。
しかし目に映るものと言えば、荒れ果てた町並みのみ…。
人が一人もいないことと、現状がまるで理解出来ない事に、俺は頭の中が真っ白になってく…。
「…そうだ! 公園に行けば!」
俺は家の中から見た公園の光景を思い出す。
隕石の調査を行っていた人、それを興味本位で見学するギャラリー達…。
少なく見ても3、40人は人がいたはず。
ここからだと走って4、5分の距離。
俺は人肌恋しさにすぐに公園へと向かい走り出す。
「だれか…だれか…! 誰でもいいから居てくれ…頼む!」
俺は神頼みをしながら走った。
それほど俺は今の理解出来ない状況に追い込まれていたのだろう…。
しかし現実は悲愴なものであった…。
いきなりの現実離れした世界に、多少の覚悟はしていたのだが…。
そこにはあるはずの公園が無かった。
そしてやはり一人として人の姿が無い…。
「どういうことなんだよ…もお訳が分からねぇよ!」
俺は大声を上げながらその場にへたり込む。
理解出来ない現実にもう訳が分からなくなった…。
「なんで…俺が何をしたって言うんだ…どうして俺ばっかりがこんな目に…う…くそ…くそっ! くそ!!」
俺は泣きながら地面を殴り付ける。
そして、考えても考えても現状の回答が出ない俺は、もうどうにでも良くなってその場で眠り込む…。
………
カサカサっと言う不快な音が耳元に響く…。
「うん…何だ…?」
目を開いた俺は、耳元へと視線を向ける。
どうやら紙屑が俺の耳元で擦れていたらしい…。
そして再度周りを見渡す。
しかしそこにあるのはやはり荒れ果てた世界だった。
「はぁ…どこなんだここは…」
俺は起き上がると、胡坐を組み大きく溜息をついた。
「そういえば、食べ物を買いに外に出てこうなったんだよな…お腹も空いて……あれ…変だな…」
一人事を言いながら手をお腹に当てた時、俺は違和感に気づく。
空腹だったはずの腹の虫が今は何も感じなくなっている…。
そういえばここに来る時も、4分程走り続けたにも関わらず、あの時の俺は息一つ切らしていなかった…。
俺は視線を空に上げる…。
そしてもう一つのありえない事実に気づく…。
俺がこの世界に迷い込んだ時は、日が沈みかけて、薄暗い状態であった。
それから俺はここで何時間か眠ったはず…。
普通に考えれば今の時間体は真っ暗になっていなければならない。
しかし…目の前の光景はというと…。
日は沈みかけており、辺りは薄暗い…。
そう…俺がここに来た時の光景から何一つ変化していない。
「ありえない…これじゃまるで…」
俺は空を見上げたまま呟く。
「世界が止まっているみたいじゃないか…」
この時に俺は理解する…。
原因は分からないが、どうやら自分が違う世界に来てしまったことを…。
この世界には自分以外の人間がいないかもしれないことを…。
明確に…元の世界に帰る方法が分からないということも…。
「はは…はははは…あははははははは!」
俺は気が狂いそうになった。
空を見上げたまま俺は一人で笑いながら泣き続けた。
そんな空には4つの地球に似た青い星が輝いていた…。