止まりだした世界02
半年前…高校一年の時の俺は、陸上部で汗を流すスポーツマンであった。
しかし、高校二年への進学の日…進学祝いにその日は家族皆でレストランへ食事に行く予定だった。
高校二年といえば、反抗期の延長線上で親子間はギクシャクしているものである。
例にもれず家もそんな感じであった。
だからといって俺は父さんと母さんの事が嫌いな訳では決してない。
むしろ尊敬すらしていた。
ただ中学生の時の反抗期の態度が今になって恥ずかしくなり、それを謝れずに引きずっていたから今に至っている。
俗に言う「黒歴史」と言うやつだ…。
しかし今日は特別な日…レストランで食事を済ませた後に、俺は父さんと母さんに進学祝いのお礼と、中学の時の悪態を謝罪するつもりだった。
だが運命というものは時にとても残酷に廻り出す…。
…レストランへ向かう車の中…。
反対車線から来たトラックと、俺の乗っていた車は正面衝突を起こした。
俺はその時気を失ったらしい…。
目を覚ました時には俺はベッドの上であった。
ベッドの上で俺は、何が起きたのか訳が分からない状態であった。
しかし事故にあったと言う事実を思い出し、俺は飛び起きて自分の身体を確かめる様に見渡した。
……よかった…どこも怪我してないみたいだ…。
自分の五体満足に俺は胸を撫で下ろす。
コンコン…。
扉をノックする音の後に、病院の先生が俺の病室に入って来た。
意識を取り戻した俺の様子に、先生は驚愕と喜びの表情を見せる。
どうやら俺は一週間ほど眠っていたらしい。
俺もその時は一命を救ってくれた先生に感謝をした。
しかしそれと同時に脳裏に1つの疑問が過り、俺は先生に尋ねる。
そう…父さんと母さんの事だ。
今俺のいる病室には俺以外には誰も患者がいなかった。
俺の質問に、先生は突如として表情を変える。
…嫌な予感しかしなかった…。
…真実を聞くのが怖くて耳を塞ぎたかった…。
「…キミのお父さんとお母さんは亡くなられたよ…」
先生は俺に一言だけ告げた。
その単純な一言…だが俺にはその言葉が理解できなかった。
え…? 俺は進学祝いでレストランに…あれ?
真実を受け入れない俺と、真実を理解しだした俺の脳が反発をする。
食事が終わったら…俺は二人にお礼を…あれ…?
おかしいな……そういえば何で病院なんかにいるんだろ……なんで俺…泣いているんだろ…。
脳が完全に真実を理解した頃、先生は俺に告げた。
「あれだけの事故があってキミの身体にはなぜキズ1つ無いか分かるかい? 事故にあう寸前、隣に座っていたキミの母親は勿論…運転していた父親までもがキミの事を守ろうとキミの盾になったらしい…」
俺は涙を流しながら目を見開く。
先生は更に告げる。
「キミはそれだけ家族から愛されていたんだ。その託された命、変な気は起こさずに大事に生きるんだ…」
その時、俺は先生の前で声を上げて泣いた。
…それが今から半年前の出来事だ。