『ヴァンパイア』
ヴァンパイアもダンピールも、資料を元に作った独自の設定ですので、ご了承ください。
ヴァンパイア。
吸血鬼とも呼ばれ、人間の生き血や精力を貪る、フィクションにも登場する者たち。
この魔法学院にも、ヴァンパイアの末裔が通っている。
「…うぅ…っ血が足りない…」
「あのさ、血が欲しいならちゃんと言えって言ったよね?」
真っ青な顔で倒れているヴァンパイアを、呆れたように見つめる少女。
「ナイトはどうせあたしの血しか吸えないでしょ」
「うぅ…ラティ…恥ずかしいからこんなところで言わないでくれ…」
「何を今更…」
ヴァンパイアの言い伝え。
『恋をしたヴァンパイアは、その相手の血しか吸えなくなる』
そのヴァンパイアであるナイトもその例外に漏れず、ラティに恋をした瞬間、他の者の血を吸うことが出来なくなった。
「それに、吸うなら…ベッ」
「こんの色ボケヴァンパイアがっ!」
「うぐっ!」
何を考えたか即座に察知したラティのアッパーがナイトの顎に決まる。
「いいから行くよ」
顎をおさえて蹲ったナイトを引きずっていくラティ。
ラティが入ったのは使われていない空き教室。
「ほら」
ラティが腕を差し出すと、ナイトはしぶしぶ口を開けて噛みついた。
しばらく、水音が響く。
「…っはぁ…甘い…ラティの血は、甘いな…」
「そりゃ、どうも」
シュゥウ…と音を立てて治癒していくラティの腕の傷。
「……【魔血】は…便利だな」
臓器型の魔力体【魔血】はラティの能力だが、ラティにはナイトにも言っていないことがある。
それは、彼女がハーフヴァンパイア―ダンピールだということ。
通常、ヴァンパイアと人間の間に生まれた子は、生まれてすぐに死んでしまうことが多い。
しかし、まれにきちんと成長する子供もいて、ラティはそんなダンピールの一人だ。
ヴァンパイアの血がそうさせるのか、必ずダンピールは【魔血】を持ち、高い治癒能力と、個々の能力を一つ以上持つ。
ラティの持った能力は、血を魔力によって自在に操る能力。
魔力の込め方によっては、血の鉄分を利用して剣に変化させることすらできる。
「さ、血も補給したし、さっさと戻りましょうか」
「もう少し、二人きりでいたい」
「甘えてもダメ。講義に遅れちゃうし。ほら、立ちなさい」
「……」
「はぁ。なら、夜にね」
「ああ」
彼女が許可を出すと、頷いたナイトは鼻歌を歌いながらラティの手を引いていく。
現代におけるヴァンパイアの青年は、普通の青年となんら変わりがないのである。