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7/13

居残り@塾

どこかで切ろうかと思ったんですけど・・・なんかそれもおかしいなーと

そのため今回は今までの倍はありますね

では本編へどうぞー



次の日の夕方。

いつものように部活終わりに塾に歩いて行く道を走り抜けていく・・・・・・・。なぜなら昨日は体育の授業&部活のコンボで暴れずぎてしまい、家に帰ったら寝るのに忙しくて塾の宿題などやる暇もなかったのだから。家からなら15分で着くのだが、学校からとなると距離が少し遠く歩いても30分はかかる。いつもそれで塾に着くのは授業が始まるぎりぎり前、そのため少しでも早めに塾に行って授業が始まる前までに終わらせなければいけない。


「ぜぇっはぁっっ・・・休み時間、唯に、やってもらえば、よかったー・・」


息を切らしながら他力本願なことをぶつぶつと唱える。言ってみたところで唯がやってくれるかは分からないが。きっとにこって笑いながら拒否してくるに違いない。あのおとなしそうな外見と裏腹に腹ん中は絶対腹黒いに決まってる。天然でドSとかありえない。そこまで悶々と考えはっと我に帰る。今はそんなこと考えている場合ではない、とにかく早く塾に!そう思いながら塾へと走るのだった。



-塾の教室


あたしが教室に入ったのは授業開始15分前だった。教室に入るなり、いつもの座っている端っこの列の先頭に座った。なぜここかというと、塾の講師せんせいからしたらこの席はあまり視界に入らず、後ろの方が視界に入りやすいからだ。だが、その分黒板は見えづらい。席に座って急いで教科書を取り出し、宿題のページを開きやり始める。宿題は授業の最初に提出しなければならない。後10分足らずで終わるのかどうか考えるよりも解かなければ終わらない。だが、不運は重なるもので宿題のページは前回習いたてのとこだった。


(しかも今回の範囲はあたしの苦手な理科・・・うぅ全然わかんない)


もともと勉強が苦手なあたしのもっとも苦手なのがこの理科である。教室に人が増えはじめ隣の席に人が座っても気がつかないくらい必死でやったが、結局15分という時間はあっという間に過ぎ去り授業が始まってしまった。そして宿題を出せなかったあたしは塾が終わったら居残りで宿題をやっていく羽目になった。

今日の授業はも理科で、オームの法則がうんたらかんたら、電圧とか電流とか呪文のようなものを唱える先生を見ながら、必死に黒板の板書を取るが今自分が何を書いているかなどノートを後で見直しても分かるはずがない。

先生が書くのをやめ解説を始めた時ふと隣を見れば、そこにはいつも座っている友達ではなく知らない男の子が座っていた。塾の席は決まっているわけではないので誰がどの席に座っても不思議ではないが、普通は友達と座ったりするはず。そう思って頭を反転させて教室を見渡せば、友達の姿は見当たらない。


(今日はサボりかあんにゃろ・・・)


もしかしたら風邪かもしれないが、こっちは必死に宿題をやっていたというのに、と八つ当たり気味に思う。仲がよいといっても学校が違うので塾以外であまり話すことはない。ぶーっと頬を膨らませて頭を前に戻して黒板を見る。先生が解説もそこそこにまた黒板に意味不明な記号を書きはじめたのでシャーペンを持ち板書を再開する。


(それにしても、こんな人今まで教室にいたっけかなー・・・?)


隣の人の横顔を黒板を見るふりしてちらりと見る。相手のきれいにとってあるノートを見ればノートの約半分くらいのとこまで使ってあるので昨日今日塾に来たわけではないだろう。メガネのせいでよく見えないけれど、別にこれといってイケメンというわけでもない。まぁ顔はそこそこ整っているようにも見えなくもないが。運動部特有の坊主頭ではないし髪の毛もさほど長くないが手入れはきちんとされているようでぼさぼさではない。メガネ男子というのもポイントではあるが、


(地味。悪いけど・・・・隣のクラスのイケメン君、毎日・・見てるからあたしの基準高いんだよねー・・・性格はおいといて)


隣のクラスのイケメンの顔を思い出して少ししかめつらをしていたら、男の子が視線に気付いてこっちを向いた。が、それに気付いてすぐにさりげなく黒板の方に目を向けると、男の子も特に気にした様子もなく視線を先生の方に戻した。そのことにほっとしつつ、そして先生の書いた黒板の板書をとりながらふと、


(どうしてこの人ここに座ったんだ?)


という疑問が浮かんだ。




授業が終わり居残りで宿題をやっている那美。教室には那美以外自習で残っている子が数名いる。


(全然わかんない・・・あーもう8時過ぎてるよー)


こんなことなら先生に聞きながらやればよかった、と半泣きになりながら宿題をやっていると教室のドアが勢いよく開いた。教科書から顔をあげてみるとそこにはさっきまで隣に座っていたメガネ君・・・・が立っていた。授業のときのようにメガネをかけてはいなかったが横顔は確かにそうだった。忘れ物でもしたのかと思って見ていると那美と同じく宿題の居残りをしていた男の子が、


「彰ーーー!!よく来てくれた、友よ!悪い教えてくれー!!」


と叫びながら突っ込んでいった。

彰と呼ばれたメガネ君はいきなり抱きついてきた友人を嫌そうに引き離しながら、しょうがないなと溜息をついていた。そこでようやく正面からメガネ君=彰の顔を見た那美はその顔に多少見覚えがあった。


(確か・・・すっごく頭いいんだよね。この間の模試1位だったし・・・・さっきの授業で、メガネかけてたからわかんなかったのか)


彰自身普段メガネをかけていないのに加えて那美があまり後ろの席に座ることがなく、メガネ姿を見ることがなかったので気がつかなかったのだ。まぁ那美がそこまで気にとめていなかったといこともあるが。あまりにまじまじと見てしまい、こちらの視線に気付いた彰と目があってしまった。


(やばっ・・・)


しまったと思っても後の祭り。ばっちりと目を合わせてしまったため、先ほどの授業のように黒板を見ていますー的なそらし方ができず、那美は引きつった笑顔を返すしかなかった。しかし、今更視線を外すこともできず内心大慌てになりながら、椅子から立ち上がり取り繕うように、


「あっあたしにも教えてもらえないかな!!?」


と若干声が裏返りながら言ってしまった。二人男子からのきょとんとした視線を受けながら引きつった笑顔のまま固まる那美であった。



「・・・・動脈が心臓から送り出される血液が流れる血管で、静脈が心臓にもどる血液が流れる血管のことをいうんだ。これが基本の流れとなるからきちんと覚えること。次に体循環について。全身へ流れる順番としてはまず心臓(左心室)から大動脈へいき全身を流れ、大静脈に行きまた心臓(右心房)に戻る。ここまではいいね?」


彰が教科書を広げながら人体の構造について詳しく説明していく。それをふむふむとうなづきながら聞く男子。彰の説明に耳を傾けながら、必死に教科書にメモを取る那美。血液の流れる向きを矢印(←)で書きこみ大動脈と大静脈の場所を書いていく。那美のメモに合わせるように彰はさっきよりゆっくり説明を再開した。


「次に肺循環について。心臓(右心室)に帰ってきた血液は肺動脈を通り肺に血液を運ぶ。ここが間違えやすいけど、大静脈から帰ってきた血液は肺静脈にいくのではなくて、肺動脈を通って肺に血液を運ぶことになる。つまり大循環と同じ動きをするから肺循環をするときは大静脈→心臓(右心室)→肺動脈という順番になる」


ちなみに彰に教えを請うていた男の子=塚本は途中から目が点になっていた。ふと彰が塚本の方をみやると、どうやら考えることを放棄したらしくぼんやり教科書を眺めている。そんな友人の姿に溜息をついて説明を続ける。


「そして、肺から肺静脈を通り心臓(左心室)へと血液を運ぶ。これが体循環と肺循環の大まかな流れ。それじゃ質問。酸素が多く含まれている血液をなんというでしょう?」


「えっ!!?・・・えーと・・・」


急に当てられびくっと体を震わせて必死に考える那美。目をノートに向け前々回のページを探すとそれらしい答えが書いてあった。自分の筆跡でかいてあるのに苦手な理科だとどうしても答えに自信が持てない。


「ど・・動・・脈血??」


弱弱しい声でいってからおびえた目で彰を見上げる。彰はというと、とうとう完全に遊び始めた塚本に冷ややかな視線を送っていたが、那美の声で視線を戻し笑顔で答えた。


「そう正解。動脈血は酸素を多く含み、静脈血は二酸化炭素を多く含む血液。ここまでくればなんとなくわかると思うけど、『酸素が多く含まれている血管』というのは動脈血が多く含まれている血管ということになる。口から吸い込んだ酸素は肺に行く。つまり肺には酸素がたくさん入っているから・・・」


「・・・・肺を通った血液には酸素が多く含まれている・・・ってこと?」


ピンきたのか恐る恐る口にだした那美の答えに彰は満足げにうなづいてその先を促す。


「そうだね。となるとこの問題の答えは?」


「えっと・・・肺から肺静脈と通って心臓に行くから・・・答えは肺静脈!!」


「つまり、②ってことだな!!!」


那美の答えに正解といおうとした彰をさえぎって遊んでいた塚本が戻ってきた。彰は胡乱気に塚本の顔を見ながら、


「お前・・・ほんとーに分かったのか?というか、聞いてたか人の話・・・」


「やったー終わったー!!!」


彰のぼやきは結局那美の歓喜の声に消されてしまい、塚本の耳には届かなかった。それどころか那美と塚本は宿題が終わったと手を取りあって喜んでいた。そんな二人を見ながら、本日何度目かの溜息をついていた彰に、宿題が終わり浮かれていた那美が我に返り慌ててお礼を言った。


「あっ突然教えてなんて頼んでごめんね。えっと・・ありがとう、御門君」


「大丈夫だよ、愛川さん。最初に頼んできたのはこいつだし。・・・なのにろくに話聞いてなかったみたいだけどね」


「終わりゃなんだっていいんだよ!!」


宿題が終わりほっとしたのもつかの間、時間は9時を回っていた。那美と塚本は急いで宿題を提出しに行き、3人は帰る準備を始めた。といっても塚本は宿題を提出するや否や、


「じゃ、彰ほんとさんきゅーな!愛川さんもお疲れ!んじゃまた明日ー」


と言って猛スピードで走って帰って行ってしまった。まだ何か彰に向けて言っていたようだったが、もう聞こえないほど離れていた。那美があっけにとられていると隣で彰がやれやれと頭を抱えていた。


「遅くなったし、送るよ愛川さん」


教室にはもう誰も残っていなかったので電気を消して彰と一緒に出てきた。2階の教室から階段で1階までありて塾の正面ドアまできて笑顔で彰がそう言いだした。


「え!?そんな悪いよ!勉強教えてもらった上に送ってもらうなんて・・・」


下に降りてくるまで会話は無いに等しかったので、さっさと別れてダッシュで家まで帰ろうとしていた那美にいきなりの『送ってく』発言が彰の口から飛び出てびっくりしてしまった。第一、宿題を忘れてきた自分が悪いのだから遅くなるのも当然。いや、こんなに早く終わる方が奇跡に近い。それにつきあわせてしまったのだから送るのはむしろこちらだ、と動揺のせいで唯がやるような天然な思考回路にいたり悶々としていた那美だった。その那美の様子に彰が声に出さずに笑っていたのは言うまでもない。


「宿題は涼のもあったし、そんなに気にしないでよ。愛川さん家どっち?」


那美が『いや私が送っていきます』と言おうとしたら先に彰から家の方向を聞かれ思わず指さしで答えてしまったがために、結局方向が一緒だということでなしくずしに送ってもらうことになった。

部活帰りに大人数で帰ることはあっても、男の子と二人っきりで帰るということがほとんどないので何を話したらいいのか・・・などと少々どぎまぎしていた那美だったが、彰の方はというと特に緊張している様子はなかった。


(こっちはちょっと緊張してるのに。さっきの『送ってく』発言もそうだけど、女の子の扱い慣れてるよね)


彰の様子にむっとなり、さっきまでの感謝などすっかり忘れて自分ばかりが緊張しているというのが気に入らないので少し突っかかってしまった。


「御門君ってさ、女の子の扱い慣れてるよねーけっこうモテるんじゃない?」


「そんなことないよ。愛川さんの方がモテるんじゃないかな?」


「・・・それは女子にって意味でカナ?」


自分の嫌味をさらっと嫌味で返されたのかと思った那美は少々ドスのきいた声で聞いてみた。だが彰は那美の返答がおかしかったのか声に出して笑いながら、異性にね、と付け足して破顔した。


「・・・・・っ!」


その綺麗な、楽しそうな笑顔を見てドクンと胸がひとつ鳴った。

その後のことはよく覚えていない。

世間話をポツリポツリ話していたらあっという間に家に着いてしまったから。せっかく送ってもらったのにすぐには家に入ることもできず、そのまましばらく歩いていく彰の背中を見続けた。暗い夜では見えなかっただろう。だが、手を自分の頬にもっていけば、夏でもないのに熱を帯びているのが否が応にもわかってしまった。でもそれを認めたくなくて必死に心の中で否定していた。


そう。

あの笑顔に不覚にも見とれてしまったのが。

あたしこと、愛川那美の苦しい片思いの始まりだったのだ。



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