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友達の性格

-そして現在 10月上旬


8月の夏期講習から塾に通わされ、9月に入ってからはずっと週3で塾に通っている。

あたしは部活を終えた後、家から徒歩15分のところにある塾に行っている。だが、部活終わりの授業はかなり眠い。最初は睡魔に耐えられなくて塾に行くたび寝たり宿題の場所をやってこなかったりなど相当不真面目であった。

だが、家に帰れば母さんが今日の塾はどうだったなど恐ろしい笑顔で聞いてくるので、夏が終わり日差しが弱くなった秋口だというのに汗が滝のように流れでていた・・・・・とにかくあたしは必死に睡魔と戦っていた。

しかし慣れとは怖いもので、塾に通い続けて1ヶ月ともなると生活のリズムができ、1学期のような睡眠学習もほとんどなくなった。塾での宿題も忘れることはなくなった。


「那美、最近は授業中に寝なくなったね」


「なんとか慣れたわ・・・一時はどうなる事かと思ったけど」


唯と一緒に移動教室で理科室に向かっている途中に他愛ない会話をしながら大きなあくびをした。あたしのそんな様子を見ながら唯はクスクス笑っている。

唯と仲良くなったのは2年生にあがったときだった。最初、唯はおとなしくてクラスでは結構空気のような感じだったからあたしは1年の時同じクラスだった人と一緒にいたのだけれど、あまりにも話が合わなくて退屈していた。授業中や休み時間は朝練の疲れでほとんど寝ていたので、唯のことをしっかり認識したのは遠足のときだった。

遠足といっても小学生のような山登りとかそういうのではなく、一日、野外実習フィールドワークで自分たちが調べたい土地に赴いて調べて発表するというものだった。たまたま同じ班になり、話してみたところの第一印象は思った通り少し天然でおとなしい子だった。けど時折見せる不思議な雰囲気はなんだか見た目に反してギャップがあるとも感じた。まぁ結局は遠足の時の彼女が一番面白かったのが今でも一緒にいる理由なのだと思う。


理科室が見えてこみあげてきたあくびを噛み殺しながら教室に入り席に着く。先生はまだ来ていないようだった。そう思うと安心してまたあくびがこみ上げてくる。今日塾はないが、明日までの宿題が家で待っていると思うと、少々憂鬱になる。唯に聞こえないようにそっと溜息をつきながらいつもの席に向かう。


「慣れたけど授業はやっぱり眠いなー」


「それは皆が思っている事だよ。でも今日の体育バレーじゃなかった?」


席に着くなり、顔を机に突っ伏して眠いと訴えれば唯が思い出したように言った。その言葉にがばっと起き上るあたし。現金なほどさっきまでの眠気や憂鬱など全部吹き飛んだ。


「ほんと!?」


「たしか志摩先生が今日出張でいないから、三波先生が代わりに来てくれるんだって」


「へー今日志摩いないんだ。しかも三波ちゃんなら思う存分暴れられるわ!」


「元気になって何より」


小さくガッツポーズをとりながら授業が早く終わらないかなーっと思ってそわそわしているとそんなあたしの様子に唯がこっちを見て、口の端を少し上げて微笑んでいた。

こういうときの唯はなんだかあたしよりも大人びて見える。あたしが運動部で体育会系のノリが強いからか、よく唯の保護者みたいに言われる。天然で少しおっとりしているような唯とは反対に落ち着きなく動き回っているのがあたし。タイプが正反対でよく一緒にいるねと部活の友達にもよく言われた。確かに今までの友達にはいなかったタイプだし、最初は母さんみたいで(天然なところが)ちょっと引いてたときもあった。だから一緒にいるときの主導権は一見行動的なあたしにあるようにも見える。けど実際は違う。唯はおっとりはしてるけどマイペースなだけで、たまに天然だけど鈍感ではないのだ。それは近くにいて初めて分かる。まぁこのマイペースも本性かどうか怪しいものだが。


「私の顔に何か付いてる?」


まじまじと唯の顔を見ていたらあたしの視線に気づいて訝しげな顔をして聞いてくる。言葉は当たり障りないはずなのに顔はそう言っていない。こういう反応も周りの子たちが見たら目を丸くするだろう。男女問わず唯を見る目は同じで清楚でおしとやかな秀才という感じなのだとか。それを部活の友達から聞いた時はそんな唯を思い描いて大声で笑ってしまった。


「どっかの令嬢じゃあるまいし・・・」


「はぁ?」


思い出し笑いでくくくっと笑ってつい漏れ出てしまった言葉に反応した唯がさらにわけ分からないというような顔をする。だが、自分のことであたしが笑っているということに気付いているようで視線が若干ジト目だ。本当におとなしい性格だけならばそんな疑うような眼にはならない気がする。


「・・・なんでもないよ。ただの思い出し笑い」


「人の顔見ながらなんの思い出し笑いなんだか、全く・・・」


あたしがにやにや笑ってそういえば、唯はしょうがないって顔をして問いただすのをあきらめる。きっと何を言ってもかわされると分かっているからだろう。あたしの緩んだ頬がようやくもとに戻ろうというとき、先生が理科室のに入ってきて授業の鐘が鳴った。



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