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君は君

掲載日:2026/04/13

短編です

 それ、前にもやったよね?

 仕事中、突然そう言われた。

 え、そうだったかな、そんなことないはず。そう答えようとして相手の顔を見て、怒っているのが解ったから、表情筋を駆使して笑って見せた。

「そうでしたっけ、すみません」

 謝らなくていいから、ちゃんとやってよね。と言って、その人は去って行った。一難が去った。

 私はどうやら、人と違うらしい。どう違うか、という議論に関しては、何も答えようがない。自分自身、みんなと何が違って、何がダメなのかよくわかっていないのだ。

 ただ、みんなは私に、「何度も同じ説明をしただろう」「どうしてこんなこともできないんだ」と言うから、きっとみんなは、一度の説明ですべてを理解して、何でもすぐできるようになる、プロフェッショナルな人間ばかりなんだな、と私は理解した。

 私にわかるのは、自分の事だけだ。だから、他人から、「あの人って仕事できないよね」と言われてもわからないし、「あの子って男性陣に色目使ってるよね」みたいな話をされても、理解できない。色目って何?それは何色なの?

 そんな風に声をかけてくれていた、職場の人たちは、私の返答が気に食わなかったみたいで、だんだん私を避けるようになった。それで私は理解した、周囲の人間と私は、何か少し違うようだと。

 でも違ったとしても、私には何のデメリットもない。だって違うことは元から知っているから。

 私の顔とあなたの顔、同じところと言えば、パーツの数くらいだろう。配置も、色も、形も少しずつ違う。それなのに、「あなた変わってる」なんて言われても、元からそうですが?としか返しようがない。

 私は物覚えが早い方ではないけれど、何度も根気よく教えてもらえたことは、絶対に忘れない。でもそれを応用するのがとても苦手だ。みんなは、応用が得意なようで、私の知っているやり方は効率が悪いと何度も上司に怒られた。でも私にはその効率の良いやり方を教えてくれる人はいなかった。ただ、“効率が悪い”、“早く仕事をこなせ”と言われるだけでは私には理解が出来ない。

 でも仕方がない、私はそう言う仕様なのだ。知った時に覚えていけば良いじゃないか。だってそれまでは知らない私だったのだから。知った私はできるように努力していけばよい。それだけの事なのに、なぜみんなは、そんなに早くできるようになるのだろうか。

 もしかすると、私に秘密で、特訓をしているのかも。勤勉だなぁ。

 私は自分の時間を何より大切にしている。もちろん仕事の時間も大切だけど、それはお金が無くては生活ができないから、つまり必要に迫られているからで、お金が無くても自由にしてよいと言われたら、私はこの仕事を選ばないだろう。

 仕事なんて堅苦しい呼び名はやめて、趣味とか、楽しい時間として過ごし、その過程が生活に必要な物を引き寄せてくれたらよいのに、とはずっと考えていた。

 でも仕方がない、仕事をしてお金を貰わないと、この世界では生きていけないから。

 友は言う、「あんたはすごいね」「どうしてそうマイペースでいられるの」って。わからない。私はただ、必要に迫られて仕事をしているだけだし、やるべきことはちゃんとやっているし、生活のためにやっているだけだ。

 不思議だなぁ、私はもっと早く仕事をこなせと怒られるのに、一方で私の様な人間を羨む人もいる。私は怒られるのは嫌だけど、怒られたってどうしようもない、ってだけなんだ。私の人間としてのシステムが、そうできてしまっているから。

 みんなは自分のシステムや搭載されている機能以上のパワーを出したいみたい。大変なんだねぇ。

 私にできることは、私のできる範囲でしかできないから、今日も私は、私としての一日を過ごすのみ。



——私は私——

十人十色

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