表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

最終決戦!そして人類の運命は!

扉を明けると、不細工団長腹中海老男(はらなか・えびお)が整形済みの醜悪な顔で大河原博士に銃を向けながら防護ゴーグルごしにらんでいた。これまでの怪物たちに比べれば彼は大したことがない。博士は頭に黒い袋を被せられていた。物田達は言った。

「どきなさい。もう貴方は、一人です。」

「そうよ、そうよ。」

すると腹中はゆっくりと物田達をにらんで言った。

「多分こんな事があるだろうと予期して、俺は、ここの配置を自ら希望した。ははっ見たまえ!」

腹中は上半身のTシャツをびりっと破いた。その腹には海老の腹の小さな足がならんで沢山生えていた。

「きゃあ!」

とやたらアニメ声で君子は気を失いかけ、それを支えながら物田は言った。

「…こ…これは…」

「改造したのだ。俺は愚かなギガンテスよりも強いって事さ!」

そして腹中はぐきぐきと変身し出した。体は青白くなり、手は伸びて鋏になり、腹の小さな足が長く伸び、やがて3mの巨大海老になった。といっても、殻があるわけでもなく、全身を覆うのは皮膚なので、さながら殻を剥いた海老のような姿で、海老嫌いが見たら失神するような壮観であった。

巨大海老はキシャーと吠えた。もはや不細工とかそう言う次元じゃない姿を見て君子は

「どうするの?」

と物田にすがったが、彼は言った。

「二人で戦うしかない。」


そして海老は突進して来たので、二人は避けた。避けながら君子は

「どうやって戦うの?」

と尋ねると、物田は

「君が戦えなくても君の中のイケメンは戦ってくれるさ。」

と答えた。

その時海老の両鋏が彼らに襲撃してきた。二人ともそれを巧みに避け、鋏にアタックし、君子は海老の頬に飛び蹴りしながら歓喜の声を上げた。

「分かったわ!私の中のイケメンに身を任せればいいのね!」

そして戦いは続く。二人とも善戦だったため、引き際と考えたのか海老は急激に後退りした。どうしたのだろうと思った次のとたん、海老の口から無数のフナムシが溢れ出た。なんと不細工な攻撃。黒い大群はぞぞぞ、ぞぞぞと二人に向かって走ってきた。

「すごい大群だわ…」

「こうなったらあれしかない。」

「そうね。」

「イケメンフラッシュ!」

二人の顔が輝いたため、フナムシは次々とイケメンになって(?)地面に転がった。やがて全てのフナムシがイケメンになったので海老は「キシャー!」と叫び、二人の方に再び突進した。

「防護ゴーグルを外せ!」「えっ?」

迷う前に君子は勝手に動いていた。高跳びをし、海老の頭にたどり着くとゴーグルを掴んで引き剥がした。

たちまち海老の顔面は、二人のイケメン光線を浴びた。海老はうめき叫びながらぐきぐきと体が変形したが、なにしろ、海老の姿のままイケメンになろうと言う事に無理が生じ、かっこよくなるどころか、もっと奇っ怪な姿になった。海老は「やめろ…やめろお」とうめきながら外に逃げ出した。

そして二人は大河原博士に近づいて、頭に被せられた黒い袋を取った。その下には輝くイケメンが死にかけていた。

「大河原博士ぇ!」

「不細工団のしわざじゃ…わしはイケメンにされた…薬…わしのポケットにある。早く打て…。上手く行ったら、わしの友人大草原オオクサハラに…上手くいったと…報…告……く…くああああ」

博士の顔が輝きだし、苦しみ始めた。博士がみるみるイケメンになるのを二人はしかと目撃した。そして完璧なイケメンとなった時、輝きはふっと消え、そのまま博士は美しい死顔をがくりと下げた。

「…」

「…」

「…とりあえず薬打ちましょう。」

「…そうだな。」

そして二人はしばらく黙っていた。長い間黙っていた。思い出を語ろうとしたが、記憶が塗り替えられてる気がして、できなかった。何やってもカッコいい事しかやらなかった気がするからだ。


そして…突然。

「う…くあっ!」

「あなた!」

物田は顔を押さえて苦しみ出した。久々にイケメンの暴走が来たのだ。とうとう来たか…薬の効果を試す機会だなと思いながら苦しんだ。やがて苦痛が強まり、それが頂点に達した時、物田は目の前が真っ白になった。自分はやはり死んだかと思った。だが、だんだん周りの世界が見えてくるにつれ、物田の意識はがらりと変わった。以前の物田はたしかに死に、あらたに完全なイケメンとしての物田が蘇った。

「あなた、大丈夫?」

妻の問いに物田はイイ声と快活な笑顔で言う。

「大丈夫さ。」





かくして、薬の効果が広まって以来、急激にイケメン病の感染が広まった。いままでブサイクばかりだったTVが極端にイケメンだらけになった。そしてとうとう、老若男女問わず、日本中、いや、世界中の人間がイケメンになった。見た目だけでなく、仕種や考え方や行動まで。


世界はこのまま、右肩上がりに上手く行き続けるしかなかった。




(完)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ