そして、起こった・・・・ブサイクとイケメンの戦い
外で次々と臭気爆弾が投げられる中、君子は病棟職員から防護マスクのようなものを被せられる。
「これから無数のイケメンを見るだろうから、そのために。」
ずがーん!付近で大爆発が起きる。壁ががらがらと崩れ、君子は始めて生でイケメン物田を見た。
「あなた!」
「君子!」
そして二人で走りながら会話した。
「これから大河内博士に会いに行きましょう。」
「どこにいるのだ?」
「13号棟の3階よ。」
「何?近くにいるのか?それはありがたい。」
一方は普通に、もう一方はやたら姿勢良く彼らは13号棟へと向かった…だが…
「がああああ!」
不細工団戦士の一人、出歯の徹が現れた。彼の歯はサーベルのように長く、あごの裏まで達していた。被っているストッキングには偏光加工しているため、イケメンフラッシュは受けない。徹と物田で戦いが起きた。物田はやたらスタイリッシュな攻撃ばかりかますが、徹は噛みついたりと醜い攻撃を返した。
だが、物田は組伏せられた。徹は醜い狂気の笑いを浮かべ、謎の液体の入った瓶を取り出しながらキンキン声で言った。
「これは硫酸だ!これでお前のイケメンを汚してやる!」
そして物田の顔に注いだ。
ところが、硫酸が当たった途端にイケメンフラッシュで蒸発し、蒸気となって空中に漂った。それは徹の右腕を直撃し、彼は「やあああああ!!!」と叫びながらのたうち回った。その隙に二人は逃げた。
「13号棟は…」
「この左よ!」
「あ、ここだ!入ろう!」
「わあっ。よし、階段を昇る!どけ、どいてくれ!どけ!」
「あ、博士…」
「そんな…」
大河内博士の前にはストッキングを着けた不細工団が固まっていた。すでに情報が漏れ、捉えられたのだ。
「はっはっはっ、博士に会いに来たのか?」
向こうから不細工団戦士、ゴールドマンが現れた。名の由来は、彼は黄金比の顔の比率の持ち主だからである。こう聞くとかなりイケメンだと思うかもしれないが、ここでいう黄金比は、ファッションでいう黄金比ではなくて数学でいう黄金比である。つまり異常な面長だったのだ。
ゴールドマンは言った。
「それはさせない。イケメンは助けるべきでないからだ。」
「会わせろ!」
「いいだろう…だが、私の用心棒が許さないよ。」
ゴールドマンの後ろから、4mほどの髭もじゃの巨人が現れて、牙を剥いて唸っていた。それは最強の不細工団戦士、ギガンテスだ。
「…こいつは実はイケメン病に感染している。だが、ほぼ姿が変わらない。我々の中で、最強の不細工だ。ギガンテス、やれ!」
ギガンテスはがあっと叫びながら猛烈な速さで走ってきた。だが物田は立ち続けていた。そしてギガンテスが間近に迫った時、物田の顔は突然激しく輝きだした。イケメンフラッシュだ。ゴールドマン達不細工団たちは逃げ出したが、ギガンテスが「ぐがおおおお」と叫んで顔を覆ったが、物田はニヤリと笑いながらさらにイケメンの輝きを増した。
その光景を防護マスク越しで見つめていた君子はふと、異変を感じた。ピキピキと音が鳴る。次の瞬間、防護マスクの窓が割れてしまった。あまりのイケメンで割れてしまった。イケメンフラッシュは容赦なく君子を照らし出した。君子は異変と苦痛を感じながら悲鳴を上げようとしたが、なぜか声が出なかった。今や無言で訴えるしかなかった。
(お願い…気づいて…お願い…)
もはやギガンテスは顔を押さえても無駄で、顔体がぐきぐきとイケメンに変形していった。苦しむ顔も勇ましい。最初は「ぐがおおがごおお」と獣の咆哮だが、やがて「Nahhhhh!Ahhhhhh!」と雄叫びを上げ始める様はまるで狼男が人間に戻る様である。ギガンテスはそのまま究極のイケメン巨人になって、美しいフォームで仰向けに倒れ、力尽きた。
その時、物田の背後から、「く、く、くるしいよ…」
と呻く声が聞こえてきた。それが妙に美声である事に不信感を抱いた物田はささっと美しく振り返った。
「ああ!」
そこには美しく変わり果てた妻の姿があった。
「そんな!」
「・・・早く、行くのよ・・じゃないと、あたし・・・可愛くなりすぎちゃう・・」
そこで、物田は妻の君子を立たせて、大河内博士の部屋に向かった。