ブサイク団の陰謀、そして妻のお見舞い
一方、ある広い下水道にて怪しげな集会が開かれていた。そう。ブサイク団である。
整形までして醜面となった彼らはまだストッキングを被っていなかったが、紫と緑とピンクのストライプの悪趣味なユニフォームは着ていた。その中のある男が、皆に呼びかけていた。皆は彼に答えて叫んでいた。
「我々のリーダー毒島がイケメンにされた!そう、あのにっくきイケメンのせいだ!」
「そうだ!そうだ!」
「ブサイクを生きがいとする我々にとって、ブサイクを誇りとする我々にとって、イケメンにするということほどの侮辱はない!」
「そうだ!」
「復讐だ!ブサイクの者どもよ、我ら醜悪神にかけて、歌を歌え!」
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とんでもない音痴と、並外れて悪趣味な歌詞の歌を歌いながら、ブサイク団はいっせいにストッキングを被った。最後に、「 !!!!」と大合唱で叫んだとたんにそのストッキングを上にぐいと引っ張った。顔が吊上がった。
*
さて、面会室に君子は来た。巨大なディスプレイだけの部屋。君子が着くとディスプレイが点灯した。ディスプレイには等身大の物田がカメラ越しに映っていた。君子は息を呑んだ。物田のイケメンの輝きは今や眩しいほどになり、部屋や体が真っ白に照らされていた。その顔は物田の面影は微かにあったが、イケメン以外の何者でもなかった。
「あなた…」
「君子、君子、私の君子よ…久しぶりに会えるとは、オイレシアンの奇跡に勝る」
君子は唖然とした。口調がまるで違う。
「あなた…ずいぶん…進んだのね。」
「まあ、そうだ。僕のイケメンは最高潮に達しようとしている。最高潮に達した時…僕は美しく花のように散る。」
かつてはあれほど死を恐れていた物田なのに、今やイケメン過ぎて恐怖といった感情すら薄れつつある。君子は怯えて言った。
「…あなた、どうなっちゃったの?」
「この通りさ。僕はどんどん、体はもちろん、心まで、イケメンになってしまった。」
その時、君子は物田の表情が一瞬イケメンの微笑の裏に歪むのを見逃さなかった。彼は抑圧された声でいった。
「これは虚飾なのだ…僕は理想のイケメンというものに…体と…心の表層が支配されている…おそらく…イケメンが僕の深層意識を支配したとたんに…体がイケメンに耐え切れなくなって…死ぬのだろう…」
そういって、顔をゆがめて苦しもうとしたが、イケメンの微笑で固まってゆがめられない。
君子はこうなったら打ち明けなくてはならないと思い、切り出した。
「あなた、実は、一つだけ助かる道があるの。」
「それは!?このイケメンを食い止めるのか?」
「いえ、食い止められないわ。あなたのイケメンは。大河内博士という博士が知り合いなんだけど、その人がすごい発明をしたの。」
「なんだ?」
「イケメンになっても体が耐えられるようになるカプセルよ。」
「!!?」
「あなたが言ったみたいに、イケメンが完全に浸透すると体が耐え切れずに死ぬ。だけど、大河内先生によれば、イケメンフラッシュを当て続けたミニ細胞を体に打てば体に免疫がついて、死なないらしいの。まだ学会では認められてないけど・・・」
「それはぜひ!!!」
その時ずがーんど爆弾が爆発する音が聞こえた。そして何かが腐ったような異常な臭気が臭ってきた。
職員は察知した。
「この臭気は!!!」
「ブサイク団!!!」
そして歌が聞こえてきた。
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