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天花寺弓弦は推理を物語る  作者: 巴 雪夜


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第6話:天花寺弓弦との出逢いの事件⑤—罠にかかる容疑者—


 テーブルの前に呼ばれた将司と一郎は、どうしてまた此処にと顔を見合わせる。そんな彼らに弓弦は「貴方たちに確かめたいことがあるのです」と伝えた。


 一郎は「おれら知ってることは刑事さんに話したけど」と少しばかり不満げに返す。それは将司もだったようで「なんですか」と苛立った口調になっていた。


 二人の態度に弓弦は怯むことも、気にすることもしない。ゆっくりと息を吐いて、左手の手袋を外しながら一つ指を立てた。



「再度、確認しますが二人は被害者と対戦したのは何回でしょうか?」


「え? おれは一回だよ。シュウが二回したけど」


「二回目の対戦でたけやんが倒れたんだよ」


「対戦は普通に行われましたか?」



 弓弦の質問に一郎が「普通にってなんだよ」と眉を寄せる。将司もなんだと言いたげにしていた。


 二人の機嫌が悪くなってきているのを感じて、尊はこれは彼を注意したほうがいいのではないかと悩む。


 容疑者となりえる二人を刺激するのはよくはない。それが原因で聞き出せるものができなくなってしまうということはあるのだ。


 けれど、弓弦にも何か考えがあってのことなのかもしれない。尊は注意せずに様子を見ることにした、何かあればいつでも動けるようにして。


 弓弦は尊の様子をちらりと窺ってから「二回目の時なのですが」と口を開く。



「サイドデッキを使いましたか?」


「サイドデッキ?」


「このカードゲームにはメインデッキ・エクストラデッキのほかにサイドデッキというのがあります」



 大会などで使われる三回勝負のマッチ戦において、ラウンド間にデッキのカードを入れ替えることができる。


 このカードゲームではサイドデッキは十五枚までと決められており、メインデッキ及びエクストラデッキのカードと、サイドデッキのカードを同じ枚数だけ入れ替えることができるのだと弓弦は説明した。


 そのサイドデッキを使用したかという問いに答えたのは一郎だった。



「シュウがやってたよ」


「交流会なのにですか?」


「え? あー、そういや普段ならしないか」



 大会というのは勝敗が重要になってくる。故に相手のデッキの特性を理解した上で、二ラウンド目の事を考えてデッキのカードを変えるということは多い。


 けれど、交流会というのは勝敗が関係ない。自由な対戦を楽しめるのが売りなので、サイドデッキを使うことはあまりない。


 やっぱりこのカードを入れようという気分の変わりはあるだろう。けれど、サイドデッキから出さなくともいい。


 弓弦は「それはサイドデッキからで間違いないですか?」と将司に問う。彼は「いや、予備に持っていた」と口籠らせる。



「予備ですか?」


「あぁ。入れるか迷っていたやつで……」


「あれ? サイドデッキ使っていいかって、たけやんに聞いてたじゃん」



 将司の返答に一郎が不思議そうに問い返す。


(かかったっ)


 尊は弓弦がすっと目を細めたのを見て、理解する。彼はこの時を待っていたのだと。



「僕が確認したいのは、貴方のサイドデッキです」


「は?」



 今までの質問は違うのかと言いたげに声を零す一郎に、弓弦は「確かめたいことを確認するための質問です」とにこりと笑む。



「田中さん。そのサイドデッキ、調べらさせてもらえないでしょうか?」


「はぁ? な、なんでだよ。関係ないだろっ!」



 将司はなんだよと強い口調で返す。明らかな怒り、動揺に尊が「落ち着いてほしい」と声をかけるが、「理由を説明しろ!」と彼は声を荒げた。



「では、理由を。この事件の結末を語りましょう」



 ひやりと冷たい空気が一瞬、通り抜けた。そう感じるほどに弓弦の視線は冷ややかであり、後悔しても遅いといったふうに将司を見つめる。



「まず、被害者がどのタイミングで毒を摂取したか。それは彼の噛み癖によってです」



 指に付着した毒に気付かずに癖が出て舐めてしまった。では、どうやって指に毒を付着させるのか。弓弦は「カードをシャッフルする時です」と話す。



「相手のカードに触れるタイミングというのはいくつかありますが、カードをシャッフルする時が一番、怪しまれない。このゲームではゲーム開始前に公平性を保つために互いのデッキを交換し、シャッフルするのがルールですから」


「でも、どうやってカードにつけるんだ?」



 首を傾げる一郎に弓弦は「液体のようなものを付着させたカードを触れればいい」と答える。


 あらかじめ用意していたカードのスリーブに毒物を付着させておき、デッキに入れ替える時に指につけて、相手のカードに触れることで自然につけることは可能だ。



「でも、べたついたらバレないか?」


「最近ではべたつかないクリームというのがあるのですよ」


「少ししかついてなくても死ぬのか?」


「毒性が高ければ微量でも致死量に値します」



 そこまで聞いて尊が「タイミングはどうする」と弓弦に聞く。毒を飲むタイミングは付着したカードを引いて指が触れなければならない。


 いくら、相手が被害者の不利になるようにカードを展開したとしても、毒物の付着したカードに触れていなければ意味がないのだ。


 尊の問いに弓弦は「田中さんなら簡単にできますよ」と返した。



「〝トップコントロール〟をすればいいのですから」


「トップコントロール?」


「トランプマジックの一種ですよ」



 トップコントロールとは、トランプマジックの一種であり、基礎でもある。


 狙ったカードを山札の上、トップに持ってくることができる手法で、簡単に言うならば「選んでもらったカードを一番上に持ってくる」というマジックだ。


 トップに持ってきたいカードの上に山札を置く時、自身の手前にカードを突き出すと、弓弦は自分のデッキを手に実演を始めた。


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