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天花寺弓弦は推理を物語る  作者: 巴 雪夜


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第4話:天花寺弓弦との出逢いの事件③—目撃者からの情報—

 少し離れたショーケースの間まで移動してから話を再開させる。



「二人が見た限りでは彼が毒物を自分で飲んだ形跡はないということで間違いということだろうか?」


「おれは見てないです」


「オレも同じく」


「そうですか。では、彼に自殺するような理由はあったというのは?」



 尊の問いに二人は首を左右に振る。どちらもそんな話は聞いておらず、「凄く元気だったし、就職も決まったって言ってたから」と一郎が答えた。


 佐々木直也は大学四年生で早期に就職が決まった組みだったようだ。生活で問題があったなどの愚痴は言っていなかったと将司が話している。



「ちなみにだが、君たちの職業など教えてくれるだろうか?」


「お、おれはその、フリーターで……。コンビニバイトしてます」


「田中さんは?」


「……オレは大学三年生です」


「バイトなどは?」


「バーで働いてますけど……」



 一郎は口ごもりながら、将司は少し間をおいて答えた。尊は二人の様子を観察しながら、メモを取っていく。


 一郎は少々、早口になったり、口ごもりがちになる。将司は淡々と話しているのだが、何処か不安げだ。


 二人とも捜査の様子が気になるようで、ちらちらとショーケースの隙間から覗き見るように視線を向けている。



「コンビニバイトということだが、一般的なもので認識はあっているだろうか?」


「はい。別に特別、何かあるコンビニではないです」


「バーというのは……」


「他と変わりませんよ」


「え? マジックバーって珍しくねぇの?」



 将司の返答に一郎が問い返す。どうやら、マジックバーというところに将司は勤務しているようだ。


 どういったところだろうかと尊が質問すれば、彼は「手品を気軽に見られるバーです」と答えた。


 お客の見たいジャンルの手品を専属のマジシャンが披露し、それを見ながら酒が飲めるといった趣向のバーとのことだった。



「マジックができるのかい?」


「え? まぁ、修行中ですけど……少し……」


「そうか。では、二人の職業などは彼は知っていたのだろうか?」


「あぁ、知ってるよ」


「話をしていたから」



 親しいというほどには知り合ってから長いようだ。そこで尊は「亡くなった彼はどういった人物だっただろうか」と二人に問う。


 すると、彼らはなんと言ったらといったふうにしてみせた。



「たけやん、ちょっと性格が悪かったんだよな……」


「と、いうと?」


「あいつ、口が悪くて態度も大きかったんですよ」



 佐々木直也は口が悪くて思ったことをそのまま言ってしまうタイプの人間だった。


 態度も大きく、乱暴なことはしないけれど少々、自分勝手な部分があったのだと二人は証言する。


 一郎は「あいつ、自分が負けた時とか、相手のテーマのパワーのせいにしてたし」と、自分も言われただろう棘のある言葉を教えくれた。


 やれ、俺が負けたのはこのテーマのパワーが強いからだ、環境デッキなんて使えば勝つのは当然、中堅テーマだってそうだ云々。


 自分が負ければ自分のプレイミスなど棚に上げて全部、他人のせいにする。勝てば、そんなテーマ使っているから、お前が下手すぎるなどと小馬鹿にしてくる。


 カードゲームの時だけならいいのだが、仕事の愚痴や大学でのことなどを話すと、「お前がどんくさいせいだろ」と笑われたりしていたのだと一郎は言い辛そうに話す。



「おれら以外の対戦相手にやらかしてたしな、たけやん」


「やってたな……」


「なるほど。君たちは彼に付き合いきれている友人の一人ということだろうか?」


「まー。性格に難はあるけど、カードゲームに詳しいのは事実だし」



 性格に難はあるけれど、カードゲームに詳しくて話が合う。使いたいテーマの相談もできるし、口は悪くてもちゃんと的確に教えてくれる。


 だから、慣れてしまえばあまり気にならないらしい。一郎は「まぁ、人によっては相性最悪かも」と苦く笑う。



「おれのいつまでも就職しないところとか小馬鹿にされたし、シュウもこの前だったかに妹さんのこと言われたしな」


「怒ったりはしないのかい?」


「おれはまぁ、就職してないのは本当の事だし……」


「君は?」


「腹が立った時は流石に言うけど……殺すってほどでもないですよ」


「だよなぁ」



 それぐらいで殺さないよなぁと将司の言葉に一郎が同意する。尊は話を聞きながら二人を観察した。


 一郎は早口なのは変わらないが少しは落ち着いてきたようだ。将司は淡々と話してはいるが、まだ落ち着きがないように視線が泳ぐ。


 一郎がいろいろと話してくれるのだが、あまりにも正直に話し過ぎている気がしなくもない。将司も淡々としている割に口数は少なかった。


 友人が目の前で死亡したのだから、そういった反応になるのも仕方ないことなのかもしれない。


 尊も何人も相手にしたことがあるのでこういった態度は見たことがあった。おかしいというほどではないけれど、気にかけてもいいだろうと尊は二人の様子を手帳に記す。



「君たちの話を聞くに、彼の態度などで恨まれたりする可能性はあるかもしれないと」


「あるかもなとは思います」


「おれもそう思う。おれらは慣れているけど、短気な人とかだったら……」



 やりかねないよなと二人は頷き合った。二人の意見が一致しているということは、他人から見ても佐々木直也の言動というのは悪いのだろう。


 それで恨みを持つということがあるかもしれない。最近ではそんな些細な動機で殺人を犯す人間というのが多くなっていた。



「テーブルには君たちしかいなかったということで間違いないね?」


「はい」


「他に誰か来たとかは?」


「スタッフさんが見に来たぐらいで他の参加者はいなかったかな……」



 スタッフが様子を見に来たけれど、話はしたが何もされていないと二人は答える。参加者で話をした人は何人かいたが、あの時の対戦中には自分たちしかいなかったと。


(これはスタッフにも話を聞くべきか)


 スタッフが彼らの様子を見ていたということは何か見ている可能性もある。尊が二人を他の刑事に任せようと振り向いた時だ。


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