07
わたしの言葉に、高月くんは怪訝そうな顔をしながらも、即座に断るようなことはしない。話を続けろということかな、といいように解釈して、わたしは説明をする。
「なんか……子供の幽霊がいて。あ、うち、事故物件だったみたいなんだけどね。その霊が原因で死んじゃったようなものだから。ママとパパも同じようになったら嫌だし」
「……事故物件?」
「うん、そう。正確にそうだって情報を突き止めたわけじゃないんだけど、状況証拠的に」
確定情報ではないものの、明らかにわたしの住むマンションの映像を背景に虐待での死亡事故がニュースになっていて、そのニュースでの被害者と同じ年齢と性別の子供の幽霊が出るのなら、ほぼ確定みたいなものだろう。
「ホラー映画だと、ここから一家が全滅するとか鉄板じゃん。それは駄目なの」
現実が映画のような展開になるかというとはなはだ疑問だけれど、既に片足突っ込んでいるような状態になっているのだから、同じようになるかも、と考えてしまうのはわたしだけではないはず。
そうじゃなくても、今日からも母たちはあの家に住むのだ。人ならざる、化け物のような幽霊の子供がいる、あの家に。
「だから高月くんなんとかしてくれないかなーって。お願い!」
わたしは顔の前で両手を合わせる。
正直、生き方はそれぞれとはいえ、高校生にもなってごっこあぞびなんて、と思っていたのは事実。それなのに、こうして頼れる人が好悪月くんしかいなくなった途端、こうやって頼るのは都合がいいとしか言えないわけだけど……。
でも、霊能力者と弁護士が知り合いにいるのは量産系動画の中だけなのである。
「わ、我が左腕にはそんな……、い、いや! この左腕の力は封印されている。そうやすやすと力を使えるわけではない。悪いが他を当たるがいい」
「お客さーん、電話中すみませんが、そろそろつきますよ」
「あっ、あっ、すみません、ありがとうございます」
わたしと話をしていた高月くんが途端に運転手さんにペコペコしたかと思うと、ポケットから茶封筒を取り出す。ちょっと覗いてみれば、中にはお札が何枚も入っていた。……財布じゃないあたり、預かったお金なのかな? まあ、高校生が自腹でタクシーはそうそうないか。
車がコンビニの駐車場に止まり、高月くんが料金の精算を済ませる。タクシーから降りた高月くんの隣に、わたしも降りる。
「……君も降りるのか?」
走り去るタクシーを背景に、高月くんがわたしを見ながら言う。
「そりゃあ、あのタクシー、この後どこに行くか知らないし」
「そ、それもそうか……」
少し納得いかなそうな顔をしながらも、高月くんは茶封筒片手にコンビニへと入る。
わたしもその後をつけて行った。




