06
わたしのクラスで、どころか、学校中で有名だった高月くん。何で有名かというと、ちょっと、いや、だいぶ痛々しいということで。
自称・霊能力者。幽霊を見ることができる右目を持ち、普段は目を休めるため眼帯をしていて、左手には退魔の力を宿している。その退魔の力は無差別で、悪霊だけでなく、守護霊なんかの善良な幽霊も消してしまうため、封印の包帯を巻いている。
という設定だった。
お通夜が終わった帰り道。タクシーに乗り込んだ高月くんの後について行き、わたしもタクシーに乗り、彼の隣に座る。
「――高月くん、設定じゃなかったんだね」
あの子供から家族を守る。そう思ったはいいものの、わたしにそう言う力があるわけではなく、さっそく行き詰ったので、プロの力を借りることにしたのだ。
いや、本当に見えているだなんて思ってなかったけど。でも、わたしが知っている『見える人』って、高月くんしかいなかったから。嘘だと思っていても、ゼロから探すよりはとりあえず、と会いに来たのだ。
「……ふ、ふっ! 我が能力を甘く見るな」
額に指先を添え、目を隠すようなポーズをキメてくれるが、その指先は震えている。なんなら、ちょっと声も裏返っていた。
「ビビってる?」
「この程度で怖気づくわけなかろう。甘く見るなよ――ぴゃっ!」
つん、と彼の頬をつつこうとして、高月くんが普段の声とは思えないほど、高い声で悲鳴を上げた。高月くんの頬は触れず、やはりわたしの指はすり抜けたけれど。
「……お客さん、何かありましたか?」
「あっ、あっ、何でもないです」
高月くんがぺこぺこと頭を下げる。あの悪役貴族のような話し方は本当に設定だったらしい。まあ、あれが素だったら、救いようがないほどにヤバイけども。
ちなみに結構ペラペラと話をしているけれど、どうやら運転手は高月くんが電話で会話をしていると思っているのか、あまり不審そうな顔はしていない。まあ、運転しているから前を向いているし、夜も暗いし。
一人でヤバイ独り言をぶつぶつと垂れ流していると勘違いされていないようで何よりではある。そんな心配をするくらいなら話しかけるな、というのは正論だけど、逃げられても困るし……。
「いやー、でも高月くんが見える人で助かったなー。……眼帯してても見えるの?」
「……愚問だな。我が両まなこは全てを見通すことのできる目だ」
「つまり、それっぽくて格好良く見えるから眼帯しているだけで、実際は両方とも見えている、と……」
じとり、と睨まれた。無言の肯定の圧。でも別に怖くない。死んじゃってるし。
「じゃあじゃあ、その左手も本物なの?」
左手に触ろうと手を伸ばすと、高月くんはバッと左手を上げ、わたしの手から遠ざけようとする。
高月くんの表情は必死そのもの。
流石のわたしでも、このタイミングでからかうべきではなかったかな、と少し気まずくなる。
ちょっと重苦しい雰囲気になってしまうが、高月くんが「……して、何用だ」とこちらを軽く睨みながら、そして左手を隠しながら言う。
「あ、えと」
この流れで頼みごとをしていいものか、と迷い、言い淀んでしまうが、今のところ、頼れるのが高月くんしかいないので、どうしようもない。
「……わたしの家にいる、幽霊退治に協力してほしくて」
わたしがそう言うと、高月くんの顔が引きつった。




