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わたしが黙っていると、高月くんは「諦めたらどうだ」言った。ちょっとおどけたような雰囲気を出してはぐらかしたところで、わたしが思い当たらなかった可能性に行きついて、今更怖くなってしまったことに気が付かれてしまったんだろう。
彼が言いたいことも分かる。すでに死んでいるわたしがもう一度死ぬような目に合ったらどうなるか分からない。彼の左手の力は封印中のことだけど、その力でもどうしようもない相手だったら、高月くん自身も危ない。
でも――、でも。
「……それでも、嫌だよ。パパもママも、あの幽霊に殺されていいような人じゃないもん。わたしにできることがあるなら、って思っちゃうじゃない」
もし、あの家に幽霊がいるのだと、知らなかったら、全てがわたしの勘違いだとしたのなら、諦めもついたかもしれない。
でも、『あの子』を見てしまったから。知ってしまったから。人ならざる存在が、わたしの家にいると認知してしまったから。
怖くなったからやっぱりやめる、とは言えないのだ。
「お願い。お願いします。もし、もし駄目なら、どうしたらいいか、方法を教えて。わたし、一人で全部やるから」
「――……」
わたしは思い切り頭を下げる。九十度のお辞儀。こうすれば高月くんの良心に響かないか、と思う以上に、ただ、わたしが高月くんの顔を見られなかっただけだ。
彼に断られたら、わたしにはあてがない。世界は広いから、彼以外にも、自称ではなく本当に幽霊が見える人や幽霊を退治できる人はいるとは思うけれど、両親が生きている間に、その人に会えるとは限らない。
長い沈黙。
わたしにとっては、何時間にも感じられたけど、実際には、ほんの数分のことなのだろう。
大きく、高月くんがため息を吐いた。
「――……承知はできん。我は、……、我にもできる範囲と言うものがある。我が手に余るようならば協力はできんが……、取りあえず、倒すべき敵を確認するくらいなら」
「――……!」
高月くんの言葉に、わたしは勢いよく頭を上げる。
「我にも手が負えないような相手なら、今度こそきっちり断らせてもらう」
彼は嫌そうな表情をしていたが、どことなく、同情しているようにも見えた。
可哀想な奴、と思われたとしても、結果、彼の協力が得られるのなら、どんどんそう思ってもらって構わない。
死んでしまったわたしに、取れる選択肢はないのだから。
「ううん、それでも全然嬉しい! ありが――、おわっ!」
高月くんの手を取ろうとして、わたしの手がすり抜ける。そうだ、幽霊なの忘れてた。




