言葉の違い
入店した俺たち三人は、店員に席へ案内された。
座るとすぐメニューを取り、二人に見せる。
「色々あるよ。どれでも好きなの食べていいから」
ルッカとフィオナはメニューの写真を見て、感嘆の声をあげた。
「すごいわね。綺麗な絵がいっぱい載っているわ。高名な画家を雇っているのかしら」
「どれも美味しそうだぞ!」
それぞれの感想に、思わず笑みがこぼれる。
「決まりそう?」
そう聞くと、二人は困った顔でメニューから顔を上げた。
「大変よ、凪」
フィオナの真面目な声に、思わず身構える。
「ど、どうしたの?」
「このメニュー……字が読めないわ!」
「読めないぞ!」
字が読めない?
「そういえば、最初から普通に会話は出来てたよね。でも文字は読めないの?」
頭の中に疑問符が浮かぶ。
そもそも異世界から来た二人と、なぜ最初から会話が成立しているのか。
異世界の公用語が日本語なはずもない。
「言葉に関しては、どの種族とも話ができるようになっているのよ。そういう魔道具があるの。知性ある種族同士の争いを防ぐため、成人した各種族が所持を義務づけられているわ」
フィオナは首に掛けた、小さな宝石付きのネックレスを見せてくれた。
「ルッカもあるぞ!」
袖をまくると、同じような宝石の腕輪が嵌っている。
「そうなんだ……便利だね、魔道具って」
素直に言うと、
「そうね」
「そうだぞ!」
二人が頷く。
「細かい話は省くけれど、この魔道具の魔法が完成するまでは戦争の歴史だったそうよ。完成させた当時の賢者に感謝ね」
目を閉じて語るフィオナに、わずかな哀愁が漂う。
激動の時代があったのだろう。
「人間なのにすげーやつだったらしいぞ!」
「賢者は人間だったんだな。世の中には想像もつかない人がいるもんだ」
いつの世にも偉人はいる。そう思って、はっと我に返る。
「それより料理決めないと。絵だけで選べそう?」
二人は少し考え、それぞれ指で料理を示した。
「じゃあ注文するね」
店員を呼び、二人の料理と三人でつまめる品、それにコーヒーを頼む。
料理が来るまで、ルッカとフィオナは興味津々でメニューを隅々まで眺めていた。
楽しそうな様子を見ていると、唯一の肉親だったじいちゃんを失って冷えていた心が、少しだけ温かくなるのを感じた。




