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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第一章 2人の王女は現代に適応する
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欲しいものと掃除

凪が仕事へ出かけ、玄関の扉がガチャンと閉まる。玄関まで見送りに出ていたフィオナは、静かになった家の空気を一度だけ見渡してからダイニングへ戻り、椅子に腰かけて今日の予定を考え始めた。ちなみにルッカは見送りには出ず、ソファーの上で足をばたばたさせながら「いってらっしゃいだぞ!」と大きな声だけを掛けていた。


「とりあえず昨日のカレーがまだ余っていますから食材は問題ありませんわね、いくつか欲しいものはありますけれど……」


凪が気を回して揃えてくれた生活用品はひと通りあるものの、細かいところで足りない物はどうしても出てくる。そして何より、昨夜タブレットで調べものをしている時に見つけてしまった、どうしても欲しいものがある。


「ブラですわ!」


思わず声に出してしまい、誰もいないのを確認してから小さく咳払いをする。フィオナはそれなりに胸がある。ローブやゆったりとしたスウェットを着ていると目立たないが、本来の体型は隠しきれない。元いた世界には当然ブラジャーなど存在せず、身につけていたのはコルセットに近いものだった。硬い素材で肌あたりも良くなく、ドレスを着る際にはぎゅうぎゅうに締め上げられ、呼吸すら浅くなるほど苦しかったのを思い出すと、あの快適そうな布の存在はどうしても気になってしまう。


フィオナは買い物リストを書き足しながらルッカに視線を向ける。


「ルッカは何か買っておきたい物はありませんの?」


ソファーに寝転んだままのルッカは、のんびりとした声で答える。


「んー、特には思いつかないんだぞ。強いていえば歩いてた時に目立ってたから、この世界の服が欲しいぞ」


それはフィオナも感じていたことだったので、「そうですわね」と素直に頷き、ブラと一緒に服も見て回ることに決めてリストに書き加える。


そのとき、ルッカがおもむろに立ち上がり、棚に置かれたお菓子へと手を伸ばして再びソファーへ戻ると、袋を開けてぽりぽりと食べ始めた。その様子を横目に、フィオナは少し呆れた声を出す。


「さっき朝ごはんを食べたばかりでしょう?」


「まだ食べられるんだぞ。あまりにも美味しそうで我慢できなかったんだぞ。それよりめちゃくちゃ美味いぞ、フィオナも食べてみるか?」


差し出されたのはチョコレートがコーティングされた棒状のお菓子で、フィオナは一瞬迷ったものの、結局受け取ってしまう。一本だけ、と自分に言い聞かせて口に運べば、チョコの甘い香りがふわりと広がり、軽い食感と合わさって思わず目を見開いた。気づけば手に持っていたはずのお菓子はすっかりなくなっており、夢中で食べてしまった自分に少し頬を赤らめると、ルッカが「もうあげないんだぞ!」とお菓子を体で隠すようにして言う。


「……別に取りませんわよ」


小さく言い返してから、フィオナは気を取り直すように立ち上がる。


「私は掃除機をかけますから、ルッカは雑巾で磨いていってちょうだい」


押し入れから掃除機を取り出して告げると、ルッカは「了解なんだぞ!」と元気よく返事をし、雑巾を持って脱衣所へ向かう。シンクでしっかりと水を含ませ、ぎゅっと絞ってからフィオナの後ろをついて回り、掃除機をかけ終えた床を丁寧に磨いていく。昨日凪に教わった通りに、力を入れすぎないように、しかし隅々までしっかりと。


やがて部屋中がすっきりと整い、床がわずかに光を反射するのを見てフィオナは満足そうに息をつき、ルッカも腰を伸ばして同じように満足げな顔をしている。


「私は必要なものを買いに行きますけれど、ルッカもついてきます?」


問いかけにルッカは大きく頷く。


「暇だし行くんだぞ。それに服は自分で選びたいんだぞ」


「それもそうですわね」


フィオナは身支度を整え、財布を持って玄関へ向かう。少し待つとルッカも準備を終えたらしく、二人で家を出て、凪から預かった合鍵でしっかりと鍵を閉めた。


外の空気は少しだけひんやりとしていて、これからの買い物に胸が高鳴るのを、フィオナはそっと自覚していた。

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