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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第一章 2人の王女は現代に適応する
2/14

突然の出会い

 場に沈黙が落ちた。


 俺は状況が飲み込めず、ただ呆然としているしかなかった。

 目の前の二人も同じらしい。取っ組み合ったまま、ぴたりと固まっている。


 さっきまで光に包まれていたはずの俺の部屋。

 なのに今は、知らない女の子が二人、目の前で睨み合っている。


 意味が分からない。


「えーと……初めまして?」


 とりあえず、口から出た言葉をそのまま言った。


 二人が同時にこちらを見る。


「……あんたは誰?」


 先に口を開いたのは、二十代前半くらいに見える女性だった。


 透き通るような白い肌。

 エメラルドグリーンの瞳が印象的で、流れるような金髪が肩にかかっている。整いすぎていて、思わず息をのむ。


 仕立ての良さそうな刺繍入りの黒いフード付きローブを、白いワンピースの上に羽織っている。どこか気品がある。


 そして何より目を引くのが、すらりと長い耳だった。


「……エルフ?」


 ファンタジー好きなら誰でも思い浮かべるであろう言葉を、俺はそのまま口にしていた。


「そうよ。見れば分かるでしょう?」


 彼女は顎を少し上げる。


「私はエルデリア聖王国の第一王女、フィオナ・エルデリア。由緒正しいエルフなの。あんたみたいなただの人間が、気軽に喋れる相手じゃないの。分かる?」


 少し威圧するような口調で、自己紹介する。

頭が追いつかないでいると、取っ組み合ったままのもう一人が、ぼそりと呟いた。


「……王位継承権のない、ただの王家の娘ってだけなんだぞ」


 その一言で、空気がぴりつく。

フィオナの目がつり上がった。


「王位継承権が無くなろうが、王族は王族よ!」


 さっきまで本気で喧嘩していたのだろう。二人の間に火花が散りそうな勢いだ。


 このまま放っておくと、また取っ組み合いが再開しそうだ。


「待って、喧嘩しないで」


 俺は慌てて口を挟む。


「正直、状況が全然分からないんだ。ひとまず落ち着いて、今どうなってるのか話し合わない?」


 二人は一瞬だけ睨み合い、やがてふっと力を抜いた。


 取っ組み合いをやめ、三人で向かい合う形になる。


「とりあえず、お茶入れるからさ。椅子に座って待ってて」


 自分でも何をしているのか分からないが、いつもの癖でそう言っていた。


 三人分のお茶を用意してテーブルに置く。俺も椅子に座り、ひと口飲んで気持ちを落ち着ける。


 向かいの二人を見る。


「えーと……そちらのエルフの方が、フィオナさんだったかな?」


「ええ、フィオナ・エルデリアよ」


 お茶を口にして、彼女は少し目を見開いた。


「あら、意外と美味しいわね」


 その仕草がいちいち絵になる。危うく見とれそうになるが、慌てて視線をもう一人に移す。


「先に名乗りますね。俺は一ノ瀬凪、いちのせなぎって言います。見ての通り人間です」


 自分で言っていて、なんだか妙な自己紹介だと思う。


 すると少女がこくりと頷いた。


「ルッカ・グランツ。よろしくなんだぞ」


 短い挨拶。


 身長は百三十センチくらいだろうか。幼く見えるが、体つきはがっしりしている。

 服はところどころ汚れ、繊維も傷んでいて、作業着のような印象を受けた。


 青みがかった髪を後ろでまとめ、少し気だるそうに目を細めている。


 ルッカもお茶を飲み、ぱっと表情を明るくした。


「ほんとだ。美味しい」


 さっきまで喧嘩していたとは思えない無邪気な笑顔だった。


 エルフの王女と、どこか職人気質そうな少女。

 そして普通の人間の俺の、初めての出会いだった。


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