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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第一章 2人の王女は現代に適応する
17/19

男が先か女が先か

二人が部屋を整えている間に、俺は風呂場を掃除する。

普段より少しだけ丁寧に、床も壁も念入りに洗った。入るのは自分だけではないのだ。そう思うと、いつもより手が抜けない。


最後に浴槽を流し終えると、給湯ボタンを押してお湯はりをする。機械的な音声が淡々と流れ出す。


風呂場から出ると、二人はダイニングに戻っていた。


「終わった?」


そう声をかけると、フィオナが優雅に頷く。


「布団を敷いて、物を置くだけですもの」


「速攻なんだぞ!」


ルッカも胸を張る。行動力だけは本当に頼もしい。


俺は今後のことを考え、普段使っている財布とは別の財布を取り出した。そこに数万円ほど入れて、フィオナへ差し出す。


「これ。お金を入れておいたから、食材とか買いに行くときは使ってほしい。買い物はもう問題なさそうだし、頼んでもいいかな」


フィオナは一瞬驚いた顔をしたあと、ふわりと微笑む。


「任せてちょうだい」


その声は、どこか誇らしげだった。


「それと、少し多めに入れてあるから、他に必要なものがあったら買ってほしい。二人の身の回りのもので、俺が気付かない物もあると思うし。足りなくなったら、また渡すからさ」


そこまで言うと、フィオナは少し視線を落とした。


「ありがたいのだけれど……私たちが来てから、沢山お金を使わせているわよね。大丈夫、なのかしら……」


不安と遠慮が混ざった声音だった。


「お金がピンチなのか!?」


横でルッカが慌てている。汗までかいている。早い。


「いやいや、そこまでじゃない。こつこつ貯めてた貯金があるから、すぐどうこうってことはないよ。ただ、これから先を考えると、収入面はちゃんと考えないといけないかもしれないけど」


それを聞いて、フィオナはほっと胸を撫で下ろす。

ルッカも「よかったんだぞ……」と額の汗を拭った。


「とりあえず、今は目の前のことからだな。足りないものを買い足して、この生活に慣れること。少し落ち着いたら、そこから収入をどう増やすか考えよう」


自分の収入が上がれば一番早いのだが……資格取得や転職、キャリアアップ。考えただけで気が重い。


出来ることなら、二人にも何かしら収入を得る手段を見つけてあげたい。

いつまでも俺の金だけで暮らすのは、精神的にも負担になるだろう。フィオナは申し訳なさそうにしているし、ルッカだって自分の金があれば好きなことに使いたいはずだ。そこまで考えたその時。


『お風呂が沸きました』


電子音が部屋に響いた。


そこで俺は、次の問題に気付いてしまう。


「……風呂の順番、どうしよう」


先に入っても気まずい。

後に回っても気まずい。

どっちに転んでも落ち着かない未来しか見えないのは、経験のなさのせいだろうか。


「フィオナ、ルッカ。風呂が沸いたから順番に入ろう。誰から入る?」


答えが全く出ないので、二人に丸投げする。


「私はどの順番でも構わないけれど……」


「先に入るぞー!」


フィオナの言葉を食い気味に遮って、ルッカが宣言する。そのまま部屋へ走っていき、スウェットと下着を抱えて戻ってきた。早い。決断も行動も早い。


「ちょっと待った」


俺は慌てて止め、二人を風呂場へ案内する。

シャンプーやリンスの使い方、シャワーの温度調整、追い焚きボタンの位置まで一通り説明する。ネットを使いこなしている二人なら知っているかもしれないが、念のためだ。


説明が終わると、ルッカは脱衣所へ消えた。

俺とフィオナはダイニングへ戻る。


しばらくすると、風呂場の方から聞こえる声が。


「極楽なんだぞー!」


風呂場の方から、心の底からの叫び声が響いた。


フィオナがくすっと笑う。


「随分と気に入ったみたいね」


どうやら、現代日本の風呂文化はドワーフにも通用するらしい。

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