定番は異世界人にも通用します
暇そうにしていたルッカのためにテレビをつけると、ちょうど始まった番組に食いついた。某アイドルグループが開拓や料理に挑戦する番組らしい。職人に教わりながら船を作る様子を、目を輝かせて見ている。
「そろそろ出来るわよ」
キッチンからフィオナの声が飛んできた。
「運ぶの手伝うよ」
そう返して立ち上がる。ルッカは微動だにしない。
よそわれた料理をテーブルに運び、お茶を三人分用意する。俺とフィオナが席に着いたところで、ようやくルッカが立ち上がった。
「テレビつけてていいか?」
「いいよ」
嬉しそうに笑いながら椅子に座る。
「今日のメニューは……カレーよ!」
皿の上には、色とりどりの野菜がごろごろと入り、申し訳程度に鶏肉も顔を出している。どう見ても野菜メインだ。
「肉が少ないぞ!」
ぶーっと文句を言うルッカに、フィオナは涼しい顔で言い放つ。
「文句があるなら食べなくていいわよ」
ぐぬぬ、といった顔でスプーンを動かし始めたルッカは、ひと口食べた瞬間、ぱぁっと表情を明るくした。
「美味いぞ! 少しピリッとして、野菜は甘くて、すごく米に合うぞ!」
「当然よ!」
胸を張るフィオナ。
俺も口に運ぶ。確かに美味しい。市販のルーのはずなのに、味に奥行きがある。何か隠し味を入れたに違いない。
「フィオナ、すごいよ。ほんとに美味しい。ありがとう」
そう言うと、彼女は少し頬を赤くして目を逸らした。
「これくらい当然よ」
料理なんてほとんどしない俺にとって、誰かの手料理は久しぶりだった。田舎にいた頃は、祖父がよく作ってくれていた。
両親を亡くしてからは、出来合いのもので済ませる日々が続いた。祖父の味も、もうはっきりとは思い出せない。
でも今、ここでフィオナのカレーを食べているこの暖かさだけは、忘れたくない。そう強く思った。
食後、皿をシンクに運び、そのまま洗い始める。
「置いておけば洗うわよ」
「料理を作ってもらったんだし、これくらいはさせてよ」
頼りきりになるのは性に合わない。出来ることは自分でやる。
ルッカはすでにテレビの前に戻り、楽しそうに笑っている。
洗い物を終え、買ってきた荷物を広げる。
「布団だけど、空いてる部屋が二つあるから、それぞれ好きな部屋を使っていいよ。決まったら自分で敷いてね」
布団を一組ずつ渡す。
「あと服。とりあえずサイズが合いそうなのを買ってきた。風呂上がりに着てくれると助かる。それと……」
少し言い淀んでから、問題の下着セットを差し出す。
「ないと困るかなと思って。無理に使わなくてもいいけど、必要なら」
「ありがたいぞ!」
ルッカは迷いなく受け取った。
一方、フィオナは顔を赤くしている。
「……気を利かせてくれてありがとう。使わせてもらうわ」
小さな声だったが、ちゃんと受け取ってくれた。
ルッカは布団を抱えて部屋を見比べ、
「こっちの方が広いぞ!」
と宣言し、さっさと敷き始める。
「しょうがないわね……」
フィオナは苦笑しながら、もう一つの部屋へ向かった。




